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世界を旅する異世界転移者  作者: 夏より冬だろ
第5章 都市モリブス

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ーーー


「はぁ、はぁ・・・・・・っぅ」


アルトは薄暗い洞窟の中を1人で、まだ完治していない足を引きずりながら身体が悲鳴を上げているのを無視してただ懸命に走る。

うろ覚えの正規ルートを辿り上層を目指して。


「十階層まで行けばっ・・・くっ、はぁはぁ、早く行かないと、アリサがッ・・・・・・」


自分が弱いと自覚したのは、ベルナールに捕まって奴隷になっていた時だった。

帝国に村が攻められて逃げ出して、村に残っていたじい様が心配していた矢先に気がついたら自分が奴隷になっていた。

ベルナールもその周りの人間も怖くて、他にも捕まっていた人が沢山いて娯楽の為だけに殺された人もいて、誰もベルナールに逆らえなくて、恐怖や疲労、諦めが混ざりあって心細かったのを覚えている。


でもそんな時でもアリサは強かった。

弱音なんて1度も吐かず、涙も見せず、自分や周りの子供なんかも励ましていた。

いつも通り不器用で言葉足らずなところばっかりだったけど、それでも凄く嬉しくて安心して、俺以外にもそのおかげで耐えれた人は多かったはずだ。


でもそこで気付いた。気付かされてしまった。

ゴミのような扱いをされて生きるか死ぬかの極限の中でも自分の意志を持って生きていくアリサとは違い、すぐに心細くなり恐怖に支配される自分は弱いのだと。

アレスに助けられた後、剣を使い始めてからもアリサと同時期に始めたはずなのに、今では大きな差が開いている。


思い返せば、小さい頃から常にアリサの方が強くて、自分もそれに頼ってばかりだった。

そして自分がなにかやらかしても、怒られるのは大抵姉であるアリサ。

奴隷になった時も自分のせいでアリサが殴られていた時があって、冒険者になった後も自分のミスでアリサが死にかけた。


これで嫌われていないはずがない。

じい様やアレスがいるから、仲間や家族を大切にしろと言われているから、仕方なく自分に背中を任せているのだとずっと思っていた。


けれど、それは違った。

アリサは自分のことを大切に思ってくれていたのだ。

命を懸けるほどに。

それにさっきやっと気づいた。


そもそもなんでも正直に言うアリサが自分を否定することなんて無かったから、1度も嫌われたことなんて無かったはずなのに、勝手に自分で決めつけて嫌なことばかり考えてしまっていた。


「っ、誰か・・・・・・」


誰も居ないのか! 今何階層だ? 10階層まで行けばグランフォスがいるはずだ、彼に助けを・・・いや、もうこの際誰でもいい、アリサ・・・姉を助けてくれ!


「はぁ、くっはぁ、はぁ、誰かいる・・・・・・おぉ、い!」


階層を上がった先、上層への入口付近に人が集まっているのが見えて声を張りあげようとしても掠れて上手く出ない。

早く、速く行かないとアリサがッ!


「アルト君!? どうしてここに、ロアクさんや副マスターはど」

「アリサがッ! 一人でフードの奴と戦ってます! すぐに助けに行かないと殺される! 誰かお願いします! 誰でもいいので姉を助けてくださいッッ!!」

「ひ、一人で!? まずは落ち着いて、何があったんだ?」

「男が逃げようとして、ロアクさん達とは離れて、俺とアリサで追って、けどッ俺が死にそうになったからアリサが逃がしてくれてっ今一人でッ」

「そ、それは・・・・・・」


グランフォスは悩む。

この場で1番強いのはグランフォスで、そして自身もフード男の強さを知っている。

ここの冒険者達を連れて行ったところでさらに犠牲が増える可能性が高く、判断に迷ってしまう。


「お願いしますグランフォスさん! 俺じゃあ助けられないんです! っ俺じゃあ、足を引っ張って、だからお願いします!!」


グランフォスは掠れた声で必死に助けを求めて泣き叫ぶアルトの姿を見る。

全身が傷だらけで深い傷もあり血がダラダラと流れ続けている。重症だ。アルトも今すぐ治癒しないと血を流しすぎて死ぬ。

仮に今行って間に合うのか。

もうアリサは殺されているかもしれないし、自分達じゃあ勝てないとグランフォスが頭を抱えた。

その時、風が吹いた。


「アルト!」

「っ!? ぁ、ね」


アルトがバッと顔を上げて声の正体を見る。

聞き覚えのある声、最強の少女の声。


「ネフィラぁああ!!」


声が震えてさらに涙は溢れてくる。

そこには居たのは、別行動をしていた仲間の一人。

紫色の長髪を風で揺らし前髪に入った銀のメッシュに漆黒の大鎌を持った少女の名前を呼ぶ。

圧倒的強者でありアルトの中で最強の存在。

その姿を見ただけで一気に安堵感が押し寄せてくる。


「アリサがっ! 下に! このままじゃあ殺される! ネフィラぁ! アリサを、アリサを助けて!」

「分かったのじゃ。お主は休んでおれ」


ネフィラが背伸びしてをアルトの頭の上にポンっと優しく手を置き慰める。

そしてすぐに意識を切り替えた。


「どこにいるんじゃ?」

「こ、ここから2階層か、3階層くらい下の正規ルート付近にいるはず」


涙を堪えネフィラの質問に分かる限りの情報を伝えるアルト。


「っ、俺が案内する。アルトは治癒魔法を受けた方がいい」


ここでグランフォスが名乗り出る。

グランフォスはネフィラと会うのは初めてだが、アルトがここまで信頼している点と圧倒的強者の雰囲気と自分の勘を信じてまた地獄に戻ると先導に名乗り出たのだ。


「決まりじゃな。行くぞ」

「あ、ああ!」


そして速攻で二人はこの場を後にする。

アルトは安心感から一気に緊張が解れ体から力が抜けて倒れてしまった。


「・・・・・・ちいぃと失礼するぞ。案内を頼む」

「へ? えええ!?」


ネフィラは先を走っていたグランフォスを雑に肩に担ぐと一気に加速する!

グランフォスは訳の分からないスピードで移り変っていく景色を見て吐きそうになるが歯を食い縛って案内に先導するのだった。


ーーー

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