逃がさない
「どこまで逃げる気よっ!」
「ぐっ、おらあ!」
ロアクの聖剣の効果により体力が回復した上に身体能力が上がっているアリサが男の背中を
捉え斬り掛かるが、それをいなしてはまた逃げ出す男。
「ふぅ・・・・・・しつけえなガキが」
男が立ち止まり振り返る。
顔に大粒の汗をかいており息も上がっている。
この男自身も、数日間開拓者との戦闘を繰り広げており、まともな休息を取っていないところにアレス達が到着し連戦続きとなって体力が底を尽きようとしていた。
「ガキじゃないわよ!」
「はっ! どこがだよ! 指揮官の指示もまともに聞けねえ奴がガキじゃないってか!」
男に休息を取らさないために即座に斬り掛かるアリサ、しかしそこで気付く。
聖剣のバフが切れていることに。
「おいおい雑魚じゃねえか、よッ!」
「ぐっ!」
アリサの攻めが全て流されカウンターの蹴りを腹に入れられ呻く。
そして男はここぞとばかりに攻めに転じる!
「どうしたそんなもんかよ! 勘違いしてんじゃねえぞお前だけなら楽勝なんだよ! Sランクが居なけりゃとっくにお前らなんて全滅させてた!」
回復したばかりのアリサの体に新しい傷が増えていく。
男は痛めつけるように、計画が崩れた鬱憤を晴らすかのように急所をわざと狙わない。
「やめろ!」
「はっ、遅かったじゃねえか」
ぶんっと剣を振りながらアリサの後ろから追いついたアルトが間に割って入るが、男はアルトが走ってくる姿を捉えていたため容易く避けられる。
「アリサ! 大丈夫か!?」
「問題っ、ないわ!」
膝に手をつき立ち上がりアルトの横に並ぶアリサ。
ほぼ一方的にやられていた彼女の姿はボロボロだ。
しかし彼女の気迫は未だ衰えていない。それどころかより一層気合いが入っているように見えた。
負けることなんて一切考えていないただ勝利だけを見ている、そんな立ち振る舞い。
その背中を見てアルトは勇気を貰えた。
「アリサ、どうするの・・・・・・?」
二人のロアクの聖剣について詳細を知らないが、それでも彼が詠唱を唱えて自身の身体能力が大幅に上がっていたのには気付いていた。
そしてここまで離れてしまった今、その効果範囲から出てしまっていることにも。
「どうするこうするも、こいつを逃がすわけには行かないわ」
「なんでそこまで・・・・・・」
アリサは上手く言葉に伝えられないが理解している。
ここで男を見失い、この広大なダンジョンに隠れられてしまえば見つけることは困難だと。
「おいおい俺を置いて話すなよ。寂しいじゃねえか」
男が剣を持ち上げ掲げ、スっと二人に剣先を向けて言った。
「俺に構って欲しかったんだろ? やろうじゃねえか」
「時間を稼げばいいんだよな?」
「ええ」
「そら行くぞッ!」
男が踏み込み一気に距離詰める!
両手で柄を持ち自身の胸元付近まで引き突きの体勢をとる!
「しゃああ!!」
「ふっ!」
アリサは心臓を狙った素早い突きに反応し、ギリギリで受け流し男と立ち位置が反対になる。
「おいおいよく反応できるなあ」
普段から格上のアリサやネフィラの戦闘を間近で見ていて、格上のスピード感に慣れていたアリサだからこそ受け流せた。
男は一撃でアリサを殺すつもりだったため正直な感想が出てしまった。
「今よ!」
「おらああ!」
「うおっ!? っ!」
男がゆっくり振り返ると、既に目の前にはアリサとアルトが剣振り被ろうとしており、ほぼ同時の放たれた斬撃を紙一重のところで躱す!
しかし、体勢が崩れチャンスとばかりに一気に二人の猛攻が続く!
「ぐ、うおおお! 調子にっ乗るなよ!」
アルトの剣を受け流しアリサの方へ腹を蹴飛ばすとアリサは剣を止めてアルトを抱きとめた。
「ハハッやるじゃねえか。地味に危なかったぜ」
「あんたこそやるわね」
「こりゃあ様子見なんてしねえ方がいいな」
「死ぬまでしてくれてもいいわよ」
「はっ! 言うじゃねえか」
「アルト、構えなさい」
「あ、ああ」
再び3人は向き直りジリジリと動きながら一定の距離を保ちつつ様子を見る。
そして、アリサが地を蹴り動き始めたのが決戦の火蓋を切ることとなった。




