即断
口から垂れてくる血を拭いながらレックスは立ち上がる。
これなら勝てると、そう確信しながら。
「15分が限界だ! それまでに終わらせる!」
「15分!? ・・・・・・了解した!」
予想よりも短い時間にレックスは驚くがそれでもやるしかないと返事をした。
ロアクは純剣士で魔力が少なく、聖剣の効果は最大で20分程しか維持が出来ない。
しかし全てを使い切った場合、その時点で地龍を倒せていなければ魔力切れで動けなくなっているところを狙われたら、死は免れない。
「クソがっ、何なんだよあいつはよぉ!」
「あんたはこっちよ!」
「ッ!? グッ!」
地龍相手に二人で善戦する光景を目の当たりにしてフードの男は焦り散らかして戦闘に混ざろうとする。
しかし、そこを追いついたアリサが斬りつけ何とか防ぐが、重い。
さっきまでより遥かに一撃が重くなっている。
そして気付く、アリサとアルトにもロアクの聖剣の効果が付与されていることに。
「ふざけんじゃねえ・・・・・・俺は開拓者を潰しに来ただけだってのによ・・・・・・」
ここまで苦戦することになるとは予想もしていなかったであろう男は苦虫を潰したような顔をする。
明らかに先程までの余裕はなくなり、脳裏には敗北の2文字が過ぎって段々と焦りが大きくなっていく。
「くっ・・・・・・」
そして1度地龍をの方を見て・・・・・・逃走を選んだ。
「どこいくのよ!」
「なっ!?」
「男が逃げていくぞロアク!? どうするんだ!?」
「ッチ!」
突然の出来事にロアクが盛大に舌打ちをする。
ロアクだけじゃなく、その場にいた全員がまさか地龍を置いて逃げるという選択肢を取るとは考えてもいなかった。
「あいつを逃がすわけにはっ・・・・・・」
ここで奴を逃がせば、また勢力をつけて同じようなことが繰り返される。
奴の弱点は相手を舐めているところだ。
ここで敗走し、その弱点を消したとすれば・・・・・・竜種を調教出来るような奴を野放しにするのはあまりに危険で、次は都市モリブスだけじゃなく大陸全体が危険に陥るかもしれない。
それだけは何としてでも避けたい! けれど自分自身もレックスも地龍から目を離せない。
残るはアレスに託されたアリサとアルトの二人。
どう考えても実力不足だ。
「クッソがっフィルドがいれば・・・・・・」
いつもこういった大事な場面は自身の相方が判断を下していた。
その代わりをしている今、どれほどその決断を下すのが重く苦しく、難しいことかを理解した。
「逃がさないわ!」
「なっ待てアリサ!?」
ロアクの指示が出る前にフード男を追ってアリサが突っ走る。
アルトはアリサを追いかければいいのか、ロアクに従えばいいのか分からず困惑し動きが固まってしまった。
「アリサ!」
「今がチャンスよ! 逃がさない!」
「無茶なことをっ、」
「そんなこと知ってるわ時間を稼ぐだけよ! だからそのでかいの倒してすぐに来なさい!」
「死ぬなよ!」
「当たり前よ!」
走り去っていくときに一瞬だけ見えたアリサの目には、ただの横暴な判断ではなく、確かな意思が見えた気がした。
ロアク自身の判断が遅く、何もかも取り返しがつかなくなる前にアリサが動いてくれた。
そんな風にロアクは感じたのだ。
「アルト! アリサの方へ行ってくれ! こっちを終わらせたらすぐに行く!」
「は、はい!」
アルトをアリサの方へ向かわせ、少しでも向こうの戦闘を楽にさせる。
「レックス、聞いてたな。とっとと終わらせるぞ」
「ああ、了解した」
そしてレックスとロアクは薄い黄金の光の膜に包まれながら剣を構え直し、地龍との最終決戦が始まったのだった。




