追う者と追う者
ーーー
「アリサ、アルト! 死ぬなよ!」
「なっ!? あ、アレス!?」
「え? ちょ、ちょっと! 何してんのよ!?」
地龍の突進により壁が崩落し、その後ろにあった滝にフィルドが落下していったと思ったら、今度はアレスが一言だけ残して滝へ飛び込んでしまった。
それを見たアリサやアルトだけじゃなく、レックスやグランフォスも驚愕の表情を浮かべ絶句する。
「アレスは何してんのよ!」
「フィルドの援護に向かわせた! 俺達は少しずつ後退しながら戦闘を続行する!」
「それだけじゃ分からないわよ!」
「今は説明している余裕はない。フィルドがいない今は俺に従え!」
滝への落下をギリギリのところで踏み止まり免れた地龍の相手をしながらロアクは言う。
アリサだけじゃない、彼女以外も文句を言いたい気持ちはある。
それでも今はそんなことする場面では無いと理解して動き出す。
「ああもうッ!!」
そしてそれはアリサも同じで、イラつきながらもロアクの指示に従うことを選択した。
かつてのネフィラなら自分の理解出来ない言いようにもっと突っかかっていただろうが、今の彼女はそれを無意味だと理解している。
この場面では一番の強者であるロアクに従うのが最善の選択だと信じているからだ。
「グランフォス! お前は先に上層へ行って他の冒険者を10階層まで引き上がらせろ! 地龍を15階層まで連れて行く!」
「は、はい!」
ポーションで一人で動けるくらいには回復したが戦力としては使い者にならないと判断したグランフォスを後退させると共に、他の冒険者達を上層へ上がらせる。
「おいおいそんなこと許すわけねえだろ!」
「うっざいのよあんたは!」
グランフォスを追いかけようとする男をアリサが止めにかかるが、男はアリサの剣を受け流し、苛立ちながら首を狙う。
「ッチ! サポーター風情が調子乗んじゃねえぞガキ!」
「うおおお!」
「っ!? もう1人いやがったか!」
が、その剣をアリサのほぼ真後ろから現れたアルトに止められ大きくバックジャンプをして距離を取った。
「ふぅ、邪魔すんじゃねえよ。殺すぞ」
「やってみなさいよ!」
明らかに苛立ちを隠せずにいるフードの男に対してアリサは強気に返事をする。
アルトは何も言わなかったが、アリサの1歩斜め後ろで剣を構え直しサポートに回る。
「・・・・・・はぁ」
フードの男が溜息を吐きながら地龍の方を見ると、片目が見えなくなった地龍はレックスとロアクに上手く死角を突かれ翻弄され劣勢だ。
グランフォスの背は既に見えなくなった為あれは放置、まずは地龍を回復させたいと考えていた瞬間、視線を前に戻すと目の前でアリサが剣を自身の首目掛けて横薙ぎに振るう!
「ぐっ!」
「っアルト!」
「ああッ!」
ギリギリのところでアリサの剣を受け止めるが、その後ろから入れ替わるようにアルトが現れる!
受け流しは、間に合わない!
瞬時にそう判断して上段からの斬りつけを無茶な体勢で横に無理矢理飛んで何とか回避する。
その際に腰を痛めるが、フード男は完全な奇襲を避けきった。
「ッチ! なんで避けられるのよ気持ち悪いわね!」
アリサが力強く舌を弾きフードの男の生存力に驚きを隠せずにいた。
「もういい、お前らから先に殺すわ」
フード男は目標を変え、地龍の回復よりもアリサとアルトに標的を変え冷たい視線を向ける。
瞬間、背筋が凍るような殺気が二人に向けられ咄嗟に身構える。
グアアアアア!!!
「!?」
地龍が咆哮を上げながら走り出す!
その進路方向は20階層へ上がるルートだった。
地龍の前を付かず離れずの距離を保ちながらロアクが、そして後ろをレックスが走っていた!
「おい・・・・・・どこへ行く!?」
「ちょっとッ」
「邪魔だッ!!」
「ぐっ!? 追いかけるわよ!」
「うん!」
左右の壁を破壊しながら進む地龍をフードの男が追い、それをアリサとアルトが追う。




