もう一度②
「はあああ!!!」
俺とヴェガの二人が焔龍の周りを駆け回り翻弄する。
攻撃するタイミング以外は離れすぎないように、かつ近づき過ぎないように絶妙な位置取りを求められる。
焔龍が煩わしそうに前の足を振り、その獰猛な爪が脅威を振りまく。
「ッチ!!」
俺はそれを剣で受け流そうとして、あまりに重くて失敗した。
直撃では無いが、腕を裂かれた。
掠っただけでこの威力。
もし直撃すれば致命傷どころか一撃で死ぬ。
「あんたの相手はこっち!!!」
体勢を崩した俺に追撃をしようとする焔龍に対して、ヴェガが太もものベルトに付けていたナイフを投げる。
それは一直線に焔龍の目まで飛んでいき、躱された。
「ありがとうございます!」
しかしそのおかげで俺への追撃は免れた。
誰かがミスをすれば、他の誰かがカバーをする。
そうしながら戦って既に数十分。
体力の消耗が激しく、集中力を欠いてミスが増える。
悪い循環だ。
少しずつとは言え焔龍にダメージは入っている。
しかしこのままではこちらが先に潰され負ける。
「白き雷よ、我が手に宿れ。怒れる槍となりて、敵を貫け! 雷鳴旋槍!」
フィルドの口から超高速の詠唱が紡がれ、雷の槍が目に見えぬ速度で焔龍に着弾し、炸裂する!
だと言うのに焔龍はお構いなく動き続けている。
鱗が傷付き、今も尚煙をあげていると言うのに。
「地龍ほどじゃないって言ってもタフなんだよなぁッ!」
つい愚痴が零れてしまうが相手は竜種だし、仕方ないか。
それにフィルドも威力の高い氷結旋槍ではなく速度重視の雷鳴旋槍を選んでいる。
焔龍は地龍と違って攻撃を避けたり防いだりしてくるから、少しでもダメージを与えようと避けられないように速度を選んでいる。
「くっ! 」
「ヴェガさん!!!」
焔龍が狙いをヴェガの一人に定め、集中的に狙いだした。
戦力を減らすつもりか!
数日間補給もなしにダンジョン内にいて、地龍やその後のこの階層への逃走やモンスターとの戦闘など、彼女の疲労はポーションだけでは拭えない。
焔龍はそれを理解しているのか、1番弱っているヴェガを狙っている!
「うっ! はぁ、はぁ」
ヴェガは焔龍の猛攻を少しずつ下がりながら捌くが段々と傷跡が増えていき、息も上がっている。
そして、焔龍が大きく腕を引き後ろ足に力を入れて飛びつこうとする!
「死なせるかッ!!」
「うわっ!?」
横から強引に割って入って片手でヴェガを突き飛ばし、剣で爪を受け流すことに成功する。
「よし、」
が、そのまま全身を使って突進をされ突き飛ばされてしまう!
「ぐっ! ぶはっ!!」
広い広間を一瞬で吹き飛ばされ視界がぐるぐるとなりながら壁に激突し、口から血を吐き出す。
壁に衝突した背中や後頭部が痛い、目眩がする。
焔龍に突進された腹や胸がジンジンと熱を発して、体の中がグチャグチャになってしまったように感じる。
「がはっ、ごほっごほッ!」
咳をすると熱い何かが喉を通って大量の血が出てきて、段々気分が悪くなる。
貧血か。
「?」
地面に膝と両手をついて四つん這いになって血を吐いていると、ふっと周囲に影が出来て暗くなる。
バッと視線を上げると、目の前には焔龍が次の攻撃をしようとすぐそこにいた。
そして、落が落ちた。
ピシャアアアアアアン!!っと目眩が治まってきた視界を真っ白な雷が埋め尽くす。
雷が落ちる寸前、焔龍は大きく飛び退き翼を羽ばたかせ空を飛んだ。
絶対絶命は免れた。
「すぐに回復しろ。寝ている暇は無いぞ」
「ごめんアレス君! 私のせいでッ!」
フィルドの声が聞こえたと思ったら、ヴェガが傍までやってきてポーションを掛けてくれて少し楽になった。
そうだ、フィルドの言う通りこんなところで暇を持て余す余裕はない。
立ち上がれ、俺。痛みは我慢しろ。死ぬことに比べればマシだ。
近くに転がっていた剣を掴み、喝を入れて立ち上がる。
「は・・・・・・」
よく見ると、俺の剣は既にボロボロだった。
ここに来るまでずっと使い続けて、そしてここでも何度も焔龍の攻撃を受け止めてきた、クラウスか貰った剣。
これではまともに戦えない。
「ふーッ」
俺は愛刀を背中に背負っている鞘に仕舞い、腰に差してある刀の柄に手を置いた。
刀を使うのは初めてだ。
剣とは使い勝手が違うだろう。
初めて刀を使うのが、焔龍戦とは運が悪い。
まぁいい、どうせいずれは使うつもりだったんだ。
ならこの戦いで身につけてやる。
刀での戦い方を。
「いけるか?」
「はい」
俺達を見下ろしながら上空に飛び待機している焔龍を見上げた。
「ふぅ・・・・・・お前に勝って、クラウスに自慢してやるよ、焔龍」
さぁ、本番はここからだ。




