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同窓会

 七五三田刑事宛に期日指定で封筒が届いたのは3月31日の午前9時の事だった。中に入っていたのは手書きの日記のようなもののコピーが一枚と、プリンターで印刷された紙が一枚。日記のコピーは赤いボールペンで特定の部分を囲んであった。


 七五三田は最初いぶかしげな表情をしていたが、次第に顔が青くなってきた。そして机の電話を取ると何回か電話した。


 電話が終ると、七五三田は隣の席にいた西野に話しかけた。


「西野、お前はこういう話をどう思う?」


「何ですか?七五三田さん」


「女子高生が学校のクラブの合宿だと言って荷物持って家を出る。ところが合宿が終るはずの日になっても帰ってこない。学校に聞いてみると合宿はもっと先だと言われる。母親がその子の机から『駆け落ちします』と言う置手紙を見つける」


「一般行方不明者ですね。捜索対象にはなりません」


「その子が家を出た日、同級生がその子が男と一緒に車に乗ってるのを目撃してた事が分かる」


「ますます駆け落ちですね」


「一緒に乗っていたのが担任教師だったら?」


「男性教師と女子高生の駆け落ちってなんかドラマでありましたね」


「ところが、母親の問い合わせに対して『合宿はもっと先だ』と答えたのがその男性教師だったら?」


「なんか変な話になってきましたね。でも書置きはその女の子がかいたんですよね」


「母親が確認してるからな。その子の筆跡だったんだろう」


「じゃあ、駆け落ちしたふりをして、実は男子教師の家で同棲してるとか?」


「その男子教師は当時既婚者だったとしたら?」


「わかりません」


「失踪した女子高生が妊娠してたとしたら?」


「なんだか凄く雲行きが怪しくなってきましたね。もしその男子教師が女子高生のおなかの中の子の父親だとしたら……。そこまで分かったら特異行方不明者として捜索すべきですね」


「西野もそう思うか?」


「ええ、失踪した女の子の方がまだ帰ってこないんだったらそうですね。単なる家出や駆け落ちじゃない可能性が高いです」


「じゃあ、二人を目撃した同級生がしばらくしてひき逃げで死亡したとしたら?」


「え、うちの管轄の話になるのですか?あ、でも、もし故意に轢いて死亡したのなら一課案件です」


「それで、西野、最後の質問だ」


 そう言うと、七五三田は少し間を空けてから小声で言った。


「もしその目撃した同級生の名前が平宮晶子と言ったら?」


 西野は一瞬キョトンとしていたが、直ぐに顔が真っ青になった。


「その封筒は何なんです?」


「あいつからの手紙と『平宮晶子の日記の一部のコピー』なんだとさ。あの野郎、こんなもの隠し持ってやがった」


 七五三田の持つ封筒の裏面には差出人の欄に『柳大輔』の文字があった。

 

「お前の言うとおりだ。ちょっと一課行ってくる」


 そう言うと七五三田は封筒を持って大急ぎで出て行った。



 I高校200X年度卒の3年4組の有志による同窓会は201X3月31日午後6時から、I市の中心地にある中華料理店で行われた。4階建ての中華料理店は2階、3階が団体向けになっており、大小の宴会に対応で出来る。


 参加したのはかつての同級生33人と当時担任だった渡貫(とつら) (よう)教諭。I高校では2年に志望によるクラス替えがあり、3年ではクラス替えがない。クラスは編成時は40人だったが、1名が事故死、1名が退学したため、卒業したのは38人だ。卒業9周年と言う中途半端な時期だが、瑠璃と健二が積極的に参加を呼びかけたお陰で結構参加率は高い。当然ながらUターンを含む地元組が参加率が高いが、都内就職組も結構参加している。


 宴会場の入口参加者は5000円の会費を入口で幹事に払った。席は8人がけの円形のテーブルで中央に大皿で料理を置いてくるくると回転させるスタイル。後で使うために窓際にスクリーンがあり、その前にプロジェクターと書画カメラが置かれた小さなテーブルがある。席の指定はなく適当に座るが、なんとなく高校時代仲が良かったものが同じテーブルに座った。


 コース料理も半分位まで来た所で、幹事の瑠璃が立って話し始めた。


「私達が卒業してから今日でちょうど9年になります。今日は卒業アルバムを持ってきました。少しあの頃の事を思い出して見ましょう。」


 瑠璃はそう言うと書画カメラで卒業アルバムを撮ってプロジェクターで投影した。順番に一年生の頃、二年の頃を振り返っていく。2年の2学期の修学旅行の所で瑠璃は言った。


「楽しかった関西への修学旅行。この写真には渡貫先生を含めて39人が写っています。でも私達の仲間のうち二人は写っていません。夏休みに交通事故で亡くなった私の親友の平宮晶子さんとこの頃休学していて、結局退学した山久手みさきさんです。彼女らも私達の仲間だった事を思い出して下さい。」


 瑠璃は少し間を空けて続けた。


「実は最近になって平宮さんが住んでいたアパートから平宮さんのノートが発見されました。アパートに越してきた人から渡されたノートがこれです。」


 そう言うと瑠璃は卒業アルバムの代わりにノートを書画カメラに写るように置いて、書画カメラが置かれたテーブルから離れた。


 突然ノートの空白のページにひとりでに開いて、字が浮き出てきた。


 プロジェクターがスクリーンに投影したのは、『みんな、久しぶり。平宮晶子です』と言う文字だった。


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