日記
「何故? あきちゃん何か知ってるの?」と瑠璃が聞いたが、返事は無かった。
2分ぐらいの間応接室を沈黙が支配した後、ノートに文字が現れた。
『私見ちゃったの。みさきちゃんが家出した日、みさきちゃんが渡貫先生と先生のパジェロに乗ってるのを。この日記にも書いたと思う』
大輔はあわててノートをめくった。
『200X年7月29日
今日はみずがめ座δ流星群の観測日。満月が近いから見えるかどうかちょっと心配だったよ。
早めに学校に行ったんだけど、学校の横の交差点で渡貫先生のパジェロに山久手みさきちゃんが一緒に乗ってるの見ちゃったよ。
渡貫先生に睨まれちゃってヤバい。
観測会は月が明る過ぎてあんまり見えなかった。8月のペルセウス座流星群に期待しよっと。』
最初に口を開いたのは瑠璃だった。
「渡貫先生って結婚してましたよね、当時。」
「どうだろう、僕らが高2の間に離婚したって言ってたし。」と健二が続いた。
「離婚したんですか?」
「この前、仲人頼んで断られたんですよ。その時そう言われました。」
「渡貫先生の元奥様と会うことは出来ないでしょうか?」
「それは無理だと思います。そもそも会った事も無いですし、今何処に住んでいるかも分かりません。」
「分かってることを時間順に整理してみましょう。
1.200X年7月29日より前に、山久手さんが産婦人科を受診して妊娠した事が判明しました。
2.200X年7月29日に山久手さんがバレー部の3日間の合宿に行くと言って家を出ました。
3.同日夕方平宮さんが、渡貫先生と山久手さんが渡貫先生の車に乗ってるのを目撃しました。
山久手さんはその後の行方は不明です。
4.200X年8月1日に山久手さんは帰宅しませんでした。親御さんはバレー部顧問の渡貫先生問い合わせましたが、渡貫先生は『バレー部の合宿は8月』と返事しました。
5.山久手さんの置手紙が見つかり、警察に捜索願を出しました。警察は自分の意思で家を出たのは明らかだとしました。
6.200X年8月13日午前0時半に平宮さんがひき逃げされ、死亡しました。
7.上月さん達が高校2年のうちに、渡貫先生は離婚しました。7月29日の前か後かは不明です。
こうしてみると、渡貫先生はやはりあやしいですよね。200X年7月29日に山久手さんと車に同乗してたのに、200X年8月1日に親御さんからの問い合わせに『バレー部の合宿は8月』と返事してるでしょう。
200X年7月29日に山久手さんと一緒の車に乗っていたのは、バレー部の合宿とは関係ないんですよね。常識的に考えて、山久手さんの『駆け落ち』の相手は渡貫先生でしょう。
そして、山久手さんはいなくなって、渡貫先生は未だにI高校で勤めておられると。私にはいやな想像しか出来ないんですけど」
「いや、まさか、そんな事って。あの渡貫先生が山久手さんと晶子ちゃんを殺したっていうのか」
「山久手さんの失踪に関係してるのは明らかですよね。平宮さんについては動機はありますが、実際やったと言う証拠はありません。状況から見てやったとしてもおかしくないとは言えます」
「私は山久手さんの件も含めて警察に言うしかないと思います。こんな事、放って置けないです。柳さんは警察にもあきちゃんの件を殺人だと考えてる刑事がいると言ってましたね」
「ええ。ですが交通事故を扱う交通捜査課の所属なので、殺人は管轄外だと思います。この話をどう受け止めるかは分かりません。多分私に対する心象も良くないです」
「なら匿名で情報提供したら」
またラップ音がして、大輔は慌ててノートのページをめくった。
『私は渡貫先生と直接対決したい。同窓会の場で直接問い正したい』
「同窓会の会場でノートをプロジェクターか何かで投影出来ないですか? 同窓会はいつですか?」
「3月31日、来週の土曜です。」
『瑠璃ちゃん、お願い』
「分かった。何とかする」
「私も経緯の説明を書いて、200X年7月29日の日記のコピーと一緒にI警察署に3月31日到着するように送ります。」




