てんやわんやな登城回3
ラバール公爵の登場により、王宮前は混乱の極みに達する。
「ベル殿、久方振りだと言いたい所だが何やら問題が起きたとか、良かったら私に説明して貰えるかな? 」
柔らかく応じてくれる公爵とは別に、ギゾット侯爵とカーターの顔色は悪くなるばかりだ。
「態々、来て頂けるとは光栄です、公爵閣下。実はこのフォルディルに関して私にあらぬ疑惑が掛けられまして…良ければ公爵閣下のお力添えを願えないかと思いまして」
私の言葉に思案する公爵、その公爵にギゾット侯爵が横から声を掛ける。
「ラバール公爵! そ奴は私のフォルディルを奪った悪漢なのだ! 騙されてはいけません! 」
ゼェゼェと荒い息を吐きながら公爵に進言するギゾット侯爵。
「ん? 何を言っているのだねギゾット侯爵。儂は今、彼にどうやって謝ろうかと考えている所なのだよ? 元凶の君が何を言うかと思えば、よりにもよって嘘の進言かね…陛下にどう言えば良いのか私としても頭が痛いよ」
ラバール公爵の言葉に考える事すら出来なくなったのかその場に崩れ落ち、ボソボソと何かを呟き出したギゾット侯爵。
カーターはリデル達に罪人のように引っ立てられて別の場所へと連れていかれた。
「御助力感謝致します、公爵閣下」
膝をつき頭を下げて礼をする。
今回の件ではかなりドルティア家に迷惑を掛けてしまった…今度メリアさんにレシピを持って行く時に『お土産』も用意しておこう。
「ギゾット侯爵関連なら仕方がないさ。元々、あまり良い噂を聞かなかったしな…近衛隊にも嫌われていたし、どうせそこのハニカム殿にでも助力を頼まれたのであろう? 」
苦笑いをしながらこちらの事情まで当ててくる公爵には益々頭が上がらなくなる。
しかしフォルディルの件に関しては話が別だ。
「契約もしてない幻獣を拘束しようとした侯爵についてはどうお考えですか? ラバール公爵」
私の雰囲気が変わったのを理解したラバール公爵は私の側にくると小声で話し掛けてくる。
「実はその件については陛下の耳にも入ってしまってな。その為、私が迎えに来たんだ」
衛兵に連れられるような形で立たされているギゾット侯爵を横目で見ながら自分は、はまた面倒な事になったなと感じていた。
フォルディルとオモチが俺を慰めてくれるが、この後の予定は全てキャンセルになりそうだ…
渋々ラバール公爵に連れていかれ、王宮内の豪華な待合室で大公を待つ状態となっている。
最近貴族との間のストレスが多くなった所為か、フォルディルとオモチは両隣に置いてもふもふして精神安定を図っているぐらいだ。
「待たせたようだな。済まないがギゾット侯爵の件で少し揉めてな、遅くなった」
大公が共のものを連れ、部屋に入って来た為、席から立ち跪こうとしたら大公に止められそのまま頭だけ下げることになった。
どうやら大公は上機嫌のようで、今は無礼講というらしい。
「それにしてもベル……と言ったな? 良くやってくれた! あやつにはほとほと困っていてな? 今回の件で大きくその力を削ぐ事が出来そうだ。そのフォルディルが件の幻獣か? 」
大公がフォルディルに目をやるのでフォルディルに挨拶を念話でお願いしたら、ソファの上でお座りをして「キュウ」と鳴いて頭を下げる…いかん、可愛すぎて立ちくらみがする…
「これはこれは…フォルディル殿には大変不快な事であったであろうに、挨拶まで頂くとはな。私が大公のバルト・エル・ザルツと申す。此度は大変迷惑をかけ申した」
何とフォルディルに対して頭を下げる大公…ちょっと待って ⁈ 誰か止めて?
何とか大公に頭を下げる事を止めてもらい、普通に会談となったのだが…
「それにしても…その鳥? なのかの? 以前何処かで聞いたような…」
何か大公がオモチを見てうんうんと考え込んでいる…フェザードラゴンの事を知っていたのか? かなり不穏な状況だ…
「へ、陛下。それでギゾット侯爵についてはもう問題無いと思って宜しいのでしょうか? 」
自分で言葉が詰まるのを感じながら話題を逸らそうと努力してみる。
こういう突発的な対応は昔から苦手だ、早くオモチから意識を外したい。
「おぉ…そう言えばそれが本題だったな。勿論侯爵については重き罪を与える為安心して欲しい。この大事な時にこんな問題を起こしてくれたのだ。もう表舞台には立てないと思ってもらっていいぞ? 」
大公の言葉にほっとする自分。
どうやらこれでフォルディルの件は落ち着きそうだ。
「待ったく、ギゾットにも困ったものだ。ただでさえ竜種との問題があったばかりなのにこのような面倒事を起こしよって! ストームドラゴンが王宮に来た時、我々がどれだけ寿命を……竜種 ⁈ 」
やばい…大公の動きが止まり、オモチと自分を二度見した。
「ドラゴン……ファザードラゴン…」
ああぁ…やっぱり知ってたのか!
「…この場にいる全ての者に告げる! これよりすぐにこの場から立ち去れ! これは大公命令だ。拒否は許さぬ! 」
大公の突然の一喝に警備の騎士やメイドさん、果てには影から護衛している人まで慌ててその場から離れていく。
自分も出ようとするが、大公に手を取られて動けない…
その大公も汗を額から流してかなり緊張な面持ち…もうやだこんな展開!
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