てんやわんやな登城回2
「貴様が儂のフォルディルを奪った奴か ! 図々しくもよくも儂の前に現れたものだ。衛兵 !こ奴を捕えらろ! 」
王宮に着くや否やこの有様です。
ギゾット侯爵は見た目40代後半、自分の前の世界の自分と同年代の人間か…
それにしては侯爵のわりに品が無いなぁ。
「お待ちを! その者はコルカ王国よりの船を守るため雇い受けた者なのです。ここは私にお任せを! 」
そう言って出てきたのはカーター…
はぁ…シナリオが読めちゃったよ。
カーター、君はもう少し頭の周りがいい人間かと思っていたんだがなぁ…
「カーター殿がそう言うなら任すとしよう。儂はフォルディルさえ戻って来ればいいのだからな」
二人で顔を合わして話し合う侯爵とコルカ王国大使、君達今、自分達の首を絞めたのが分からないのかな?
「お二人共、私には『何を』言っているのか理解出来ないのですが…特にカーター。君はそのままだと逆臣として処理されるよ?」
私の溜め息混じりの言葉に時間が止まる二人。
「カーター。私はコルカ王国の国民では無い。今回の護衛もギード辺境伯からの推薦で護衛しているだけで君とは何も関係ない。私に口を出したいのならギード辺境伯から許可を貰うべきだ」
唖然とするカーターを放っておいて、次はギゾット侯爵に目を向ける。
「ギゾット侯爵。貴方ほどの貴族が契約もしていない幻獣を『自分の物』呼ばわりするのはどうかと思いますよ? 契約されていない幻獣を拘束するのは神より禁止されているはず。この間、竜種に襲われたこの王宮を灰にでもされたいのかな?」
ギゾット侯爵の顔は赤くなり、カーターの顔は青くなる。
「リデル! その辺にいるんだろ? コルカ王国の役人が他国でこのような振る舞いをしているが良いのか? 」
私の言葉に呼応するかのようにリデル他13隊と他の文官達も現れる。これ、狙って待ってたでしょ?
「ベル殿、何か問題でもあったのですか? おやおや、カーター殿もこちらにおられたか。我々を外してベル殿に会うとは只ならぬ御用のようで…」
顔は笑っているが目は真剣だ。
これはかなり怒っているな…
「リデル、実はこちらのカーターとギゾット侯爵に幻獣の拘束の疑いがあってね…このままでは両国の架け橋として来た外交官が問題を起こしたと言う最悪の結末になりそうなんだが? 」
私の言葉に反論しようとするカーターだったが、それより前に文官から声が掛かる。
「それが本当なら大問題ですね。我々の目的は両国の正常なる国交ですから…申し訳ありませんがカーター殿にはこれ以上単独行動を許すべきではないでしょう」
意外にまともな意見が出て来た。
文官達は、リデルに命じるとカーターを拘束しようとする。
「待て ! その男の虚言に過ぎない ! 我々は陥れられようとしているのだ ! 」
ギゾット侯爵の叫びが門の前に響く。
彼に連れられた衛兵達もどうしていいのか分からず躊躇している。
「それでは、このフォルディルに命令して貴方の所に呼んで頂けませんか ? 」
「貴様が何か得体の知れない力で儂から奪ったのだ ! そうに違いない ! 」
私の言葉に唾を吐きながら反論してくるギゾット侯爵。
もう、話のつじつまが合わないどころではない。
「それでは、貴方はこのフォルディルと契約しているのですか ? 」
「勿論だ、貴様に奪われているだけなのだから ! 」
あーあ、遂に言っちゃったよ…これで犯罪行為を証明出来る。
「ならフォルディル、私と『契約』しようか? 」
その言葉を言った瞬間、大地から巨大な魔法陣が現れ、私とフォルディルを包む。
魔法陣は崩れながら、その文字で私とフォルディルの周りを回りながら我々を祝福していく…そして私とフォルディルに契約の証たる『紋章』が私の左手と、フォルディルの胸の辺りに刻まれる。
「これが…幻獣との契約なのか ! 」
「神が彼らの契約を認めたのだ ! 」
「何年ぶりだ ? 幻獣どの契約なんて」
何か色々声が聞こえるが取り敢えず契約は成功した。
『キュ ! 』
聞いたことのない、鈴のような音の声がフォルディルから聞こえる。
「え ? 君喋れたの ? 」
『キュキュキュ ! 』
…契約したフォルディルは鳴く事が出来るらしい。
【一般常識】さんには掛からなかったから、結構レアなのかな?
「さて、これで公爵様とカーターの言い分は否定される事になりましたがどうすればよろしいですか?ハニカム殿」
私の言葉に笑みを持って答えてくれるハニカムさん、どう纏めてくれるのかな?
「ギゾット侯爵、困りますな。貴族として見本にならなければならない貴方がこのような事をしてしまうなんて…残念ですがこの件につきましては陛下にご報告させて頂きます」
「うるさい ! 近衛兵風情が ! 貴様ら、こいつらを殺せ ! 貴族に不敬を働いたんだ、不敬罪でこの場にいるものを殺してしまえ ! 」
ハニカムさんのとどめの言葉を受け、ギゾット侯爵は遂に本性を現した。
まぁ、この程度の兵士達なら問題無いんだけど主役も来たようだし任せますか。
「やれやれ、ベル殿と付き合うと面白いものばかり目に入って仕方がないな」
門より歩いてくるその姿には見覚えがあり、どうやら私はこの話が終わりに近づいて来た事を実感する。
「さて、ギゾット殿。私の知人を殺すと聞いたが、どういうことか説明してくれるかな? 」
ラバール公爵の嬉しそうな姿が、そこにはあった。
読んで頂きありがとうございます。
申し訳ありませんがストックが完全に切れてしまった為に明日以降は不定期投稿にさせて頂きたいと思います。
申し訳ありませんがご了承下さい。




