てんやわんやな登城回4
部屋の中で大公と二人きりの自分…
いや、正確に言うとオモチとフォルディルもいるけど、今はそれは問題にはならない。
「ベル…殿、この鳥のような生き物はフェザードラゴンの幼生なの…か? 」
大公の信じがたい思いがこちらにも伝わってくるが、嘘をつく訳にもいかないので小さく頷く。
「では、あの竜の島にある『生まれずの卵』がようやく孵ったのか…」
そこまで言うと大公はソファーに持たれ掛かるように座り込む…あの卵、この国だと結構有名だったのか ⁈
「ベル殿、いや…『竜の代行者殿』深く詮索をして申し訳ない…しかしその幼生についてはフォルディルよりも遥かに重要度が上がるのだよ」
大公のその言葉を聞いた瞬間、(時空魔法)でこの部屋を隔絶する。
「それはどういう意味だ? 返答によってはこの王宮すら残さんと思え」
感情的になりすぎた感はあるが、俺は本気だ。
この竜の雛に危害が起こるようなら、俺は全力で立ち向かわせてもらうだけだ。
トリヴェスの思いがこもったこの雛に掛かる災厄は、俺が全て打ち払おう。
「ま、待って頂きたい、竜の代行者よ! この話は別にその幼生に害をもたらすものではない。竜騎士に伝わる話だというだけだ! 」
必死に弁明する大公の反応を見るからに本当のようだ…オモチとフォルディルが心配気に俺の足元に寄り添って来るので頭を冷やすことにする。
「申し訳ありませんバルト大公。どうやら熱が入り過ぎたようです。私の事はベルのままで構いません。もう、竜の代行者をする事は無いでしょうから…」
席に着きフォルディルを撫でて気持ちを落ち着かせる…オモチも構って欲しいと割り込んで来るので一緒に撫でてやる…ふぅ落ち着く。
「こ、こちらこそ難しい案件を軽々と口に出して申し訳ない。竜騎士である私にとっても気になっていた卵の事なのでな」
額の汗をハンカチで拭う大公。
何か脅したようで申し訳ない…
「この竜の幼生が卵で長年羽化しなかった事は、それ程竜騎士達の中では大きな話になっていたのですか? 」
どれだけの人がこの子の事を知っているのか考えただけでも頭が痛くなるので、どの位の人物が知っているのか知りたいような知らない方が良いような……
「そうですな…この国の竜騎士になったものならば全員その話を聞いていると思って間違い無いでしょう」
オモチ…君はどうやら竜騎士達にとってアイドルのようだ。
外に連れ出すのを真剣に止めようかと考えている自分に大公は笑いながら教えてくれる。
「いや、卵の中身がフェザードラゴンだと分かる人間は私以外にいませんからそう真剣にならなくてもよろしいかと…私はそれの親と多少の縁があったから分かったようなものですし」
大公の言葉に頭を上げ、話の先を視線で促す。
無礼な事は分かっているが自分はオモチの両親の事を全く知らない。
少しでもこの子の事を知りたい気持ちが視線に出ていたのか、大公はそのまま話を続けてくれた。
「その幼生のの親はとても美しいドラゴンでしてな。私が若い頃、竜の島に飛竜の卵に加護を貰いに行った時に、守り役をしていたのがその子の親とでした。
竜種にしては珍しいホワイトドラゴンでしてな、私にも気安く声を掛けてくれた事を今でも覚えています…」
大公はそう言うと目を瞑り昔を思い出しているかのようだった。
「私が帰る時に、その竜がそろそろ番を探しに旅に出ると言っていましたな、相手がいるのかと聞けば虹色に輝くフェザードラゴンを探していると言われました。まさか本当にこの目でフェザードラゴンを見る事になるとは夢にも思いませんでしたがな」
そう言って笑う大公。
しかし、この子両親がそんなに目立つ竜だったとは…母親は亡くなったと聞いたから父親にだけでも会わせてやりたいな。
「虹色のフェザードラゴンですか…こちらの国ではそのようなドラゴンを見たと言う記録はありますか? 」
少しの希望でもあればと聞いて見るが大公は首を横に振る…そうだよなぁ、そんな竜がいたら噂にもなるもんなぁ。
「しかし、この国にある竜の聖域なればもしかしたら手掛かりがあるやも知れませんな」
そう言って少しだけ笑う大公に自分はその聖域に行く為に何が必要かを考える。
「それでは公爵閣下もお連れした『私の聖域』に歓迎致しますのでそれの代わりにそちらの聖域にも入れては貰えませんか? 何せ私より『強い』人がそこにはいますから…
その言葉に目を輝かせる大公。
前の砦の戦いでも感じたのだが、この人バトルマニアだよな…
そう思いながら【神の箱庭】を起動させるのだった。
「いやー! 素晴らしい『聖域』でした。あのような場所に連れて行って頂けるとは…私もまだまだだと痛感しました」
神の箱庭で自分と一緒に、先生にボコられたのに満足そうなマゾの人がここにいます……
「あの『露天風呂』とやらも素晴らしかったし何より料理が上手すぎる! …ラバール公爵め! 喋れぬと分かっていてもあのような極楽を先に知るとは腹ただしい…」
何かご機嫌で向こうに三日程滞在されたのだが思ったよりもリフレッシュしたみたいだ。
「では聖域の手配をお願いしますね」
そう言って疲労困憊になった俺達は一旦宿屋へと重い体を引きずりながら帰るのだった……
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