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てんやわんやで異世界転生  作者: いんふぃ
第3章 マルガス公国
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てんやわんやな帰り道

 アンゼルに対しての魔具のプレゼンテーションはここまでにして、次は肉まんの試食をしてもらおう。




 少女達が魔具を使い肉まんを調理していく。


 まだ辿々しい所はあるが順調に調理していく。


 30分ほど掛けて出来上がった肉まんを食べたアンゼルの顔は驚きに満ちていた。


「何だこりゃ?熱いのにふわふわしているだと?中の具が肉の旨味と僅かな甘さでこの饅頭を上品な味にしている…」


 隣の秘書さんは既に両手持ちだ…子供達も出来上がった肉まんを美味しそうに食べている。




「これは流行るぞ! これでこの界隈に店を構えて…」


 アンゼルの言葉を遮るように私は横から口を出す。


「この『肉まん』は子供達の売り物です。魔具を売り込みには来ましたが料理を売るとは言ってませんよ?」


 私の言葉に不思議そうな顔をするアンゼル。


「何でだ?これを売れば必ず儲かるだろ?何で子供達だけに料理を任すんだ?」


 周りの皆も同じ気持ちなのか不思議そうに私を見ている。


「私はこの料理をこの子達に広めて貰いたいと思っています。その為、この子達にはこの料理をより良くするように話をしているんです。この子が自分で考え料理を良くする…

 大人だとどうしても守りに入りがちになりますからね。屋台でこの商品を売り自分達で生きて欲しい…それだけです」



 私の言葉に思うことがあるのか考え出す大人達。


 既に子供達はこの料理を改良している。


 それは饅頭の生地に野菜を細かくした物を練り入れることだったりする、これを聞いた瞬間自分も頭が固いものだと笑ったものだ。


「成る程な、確かにこの料理なら真似る奴も直ぐにでて来そうだしな…改良していく事が出来なければ意味がない…か」


「まぁ、この子達の魔具は専用で作りましたからそこらの魔具製作者の量産品より性能は良くなるでしょうけどね」


「完全に贔屓してるじゃねーか! 」


 贔屓ではない、優先だと言いたいが面倒なので笑って誤魔化そう。


「そういう訳でこの子達の商売の後継人になって頂けたらなと、こちらからの報酬はこの蒸し器とフードプロセッサの試作型をお譲りするということで」


 私の話にアンゼルの表情は硬くなる。


 まだ利益が足りないと言うのかな?その場合にはマドックには申し訳ないが別の所に話を持っていこう…そう考えていたのだが予想外の話となる。


「ならお前が商会を作れば良いじゃないか?こちらで小さな店を用意するからそこで店を出して見ればいい。そうすればこの子達の未来にもいいんじゃないか?」


 真剣な顔でこちらに提案してくれるアンゼル。


 確かにその手も考えたたんだけどね…


「私は旅の放浪者ですから一つの場所に余り長居は出来ないのですよ。この子達の事を考えればここに拠点を置く事も確かに良いはなしなんですけどね。私の目的は世界を周る事なので」


 その言葉にアンゼルとマドックが溜め息を吐く。


 仕方ないよね、余り同じ所にいると目立っちゃうし…


「まぁ…本人にその気が無いのなら仕方がないか…分かった! こちらで面倒を見よう。この子達にはうちの前でこの『肉まん』とやらを作って販売してもらおう。その代わり、うちで勉強もしてもらわんといかんからな。厳しいかもしれんがやってみるかね?」


 アンゼルの言葉が少女達に向けられる。


 少女は躊躇せずその場で頭を下げる。


「一生懸命頑張りますからお願いします」


 他の兄弟達も頭を下げるのを、私は少しだけ嬉しく思ってしまう。






 少女達をアンゼルに預け、自分とマドックは宿屋に帰るとする。


 フォルディルとオモチと離れる事を子供達は寂しがっていたが、少女の説得でどうにかなったみたいだ。


「ベル…どうしてあの子達にあの肉まんとやらを仕込んだんだ?他の品でも別によかったんだろう?」


 マドックの自分の本音を探る言葉に、自分は【アイテムボックス】から一つの肉まんを出し、マドックの口に突っ込む。


「ふが? ふががが…何だこれ ⁈ さっきまでの肉まんと全然違う。ベル…これはどういう事だ? 」


 少し怒りが混じるマドックの問いに、私は少し感傷的な気分で本音を語る。


「それが私の知る『肉まん』です。この世界には無い食材が使われているのでこちらの世界には無いものですね…でもふと、食べたくなる時があるんですよ…」


 そう言って空を見上げる私に何かを感じ取ったのか黙って最後まで食べるマドック。


「懐かしの味ってやつは中々忘れられないからな…たまには俺にも食わせろよ?」


 こちらを見ずに話しかけてくるマドックは他にも気が付いた様子で俺の方を見て問いかけてくる。


「そういや何であの子達の名前を聞かなかったんだ?あそこまで親身になるなら普通聞かないか?」


 マドックの言葉に私は空を見上げたまま答える。


「巣立つと分かってる雛にこれ以上こちらのワガママで心に傷を付けたくありません。名も知らない少年が気まぐれで助けてくれた。その程度の認識でいて欲しかったからですね」


 私がマドックにそう答えるとマドックは長い溜め息をつく…失礼だな。


「何でそんなに捻くれてんだよ?…一体誰に似たんだか…」


 マドックのぼやきを聞きながら、自分達は自分達の宿屋へと親子揃って帰っていった。










読んで頂きありがとうございます。


後書きの下に短編小説のリンクを作っています。

宜しければ読んで頂けたらと思います。

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