てんやわんやな商談回2
「おぃマドック…俺は商談でこんなに腹が立つのは初めてなんだが、どうしてこいつを連れてきたんだ?」
周りの子供達が泣きそうになるのを何とか宥めていると会長さんがマドックに質問というより詰問をしている…怖い、怖い。
「だから言ったろ?放蕩息子だって。普通の子供な訳無いだろう? 耄碌したか?アンゼル爺さん」
嬉しそうなマドックなんて久しぶりに見るな…あ、会長さんがこっちに意識をしてきた。
「おい坊主、俺の事はアンゼルで良い。それで、どうして名前も知らない昨日会ったばかりの子供を俺に預けようとするんだ?確かにお前が作ったものなら宿の料理長が絶賛していたから間違い無く売れるんだろ?…だったら何故大きく売ろうとしない?商人を舐めてんのか、コラ!」
最後の気合いで、少女が飛ばされるほどだ、この人もあのコルカ王国の商人達みたいに普通の商人じゃなかったか。
「私にとってはこの子達の方が、今回商談する品より価値が高い。それだけだよアンゼル」
私の言葉に絶句する会長。隣の秘書さんなんかずっと口が開いている。
その口にポッケから取り出した飴を【投擲】する。
秘書さんは最初は驚いたが、口の中の甘さと香りに次第に蕩けるような表情に変わっていく。
「あーあの飴だ!まだあるなら頂戴! 」
子供達が喜び、少女が恐縮する中、俺はこの場にいる一人一人に飴を口に入れてやる。
勿論アンゼルにもだ。
「…砂糖じゃねーな。独特の甘味だが確かにうめえ…こう言いたいのか?この程度の技術はお前には大した事が無いからデオドラ商会に売り込むんだって」
そや言葉に私は頷く。
会長の隣の秘書さんなんか呆れた目で私を見ている。
いや、周りの大人全員だな、子供達は純粋に俺を尊敬の眼差しで見てくれるから可愛いものだ。
「だから、言っただろうが。一人旅するような放蕩息子なんだ。俺にも理解出来ねえよ」
自慢気に言わないでくださいマドック。
「ふむ、お前さんの考えは分かったが、俺がこいつらを預かった後はどうなるか分からんぞ?商品だけ奪ってその後は捨てるかも知らんしな」
子供を怖がらずような邪悪な笑みを浮かべないで頂きたい、ちっちゃい女の子が泣きそうじゃないか!
《別に?それならそうでしたとしか言いようが無いですね。私の目が曇っていたという事でしょう。この子達には他には当てが無いのでスラムに行って身ぐるみ剥がされて…女の子には酷かな?》
「手前! 子供の前でなんて酷い事言いやがる! それでも男か! 男なら責任取って面倒を見ねえか! 」
《でも、貴方に預けられたら捨てるんでしょ? その後の話をしただけじゃ無いですか》
「俺が預かるならそんな事はしねぇ ! ちゃんと面倒くらい見てやらぁ!」
「言質は取りましたからね?それでは問題は解決ですね」
俺の言葉にハッとするアンゼル。
しかし、この表情は苦々し気だ。
「子供の前で何て話しをしやがる。この鬼畜め!」
その言葉に訝し気な秘書さんが反応する。
「あ、あの会長。先程から急に独り言が多くなりましたが何か聞こえたんですか?私には何も聞こえなかったんですが…」
秘書の言葉にアンゼルは私を二度見する、作戦成功と言いたい所だ。
「小僧…何処まで『普通じゃない』話し方をしてたんだ? 」
「最後の方の言質を取ったという言葉からは普通に喋っていましたよ?顔に似合わず仁義ある人なんですね、アンゼルさんってば」
怒りのアンゼルは私の言葉によって轟沈する。
悪いけどこちらも色々あるからね?本音を聴きたかった訳ですよ。
「おぃ…マドック、こいつ本当に素人か?俺が年を取った所為かも知らんがあまりに悪辣過ぎるだろ…」
「何せ公爵様すら口だけで言い負かすからな。気をつけろよアンゼル?」
「そう言う話は先にしとけよ! 」
二人の喧嘩のような会話は置いておき子供達と一緒にお茶を飲む私…いい茶葉使っているなぁ。
「おぃ!そこで茶を飲んで寛いでるんじゃねぇよ ⁈ 持ってきた商品をさっさと説明しやがれ」
ようやく本題に入りそうなので先ずは、蒸し器とフードプロセッサーを出して説明する。
「この蒸し器ってやつは売れそうだな…かなり分かりやすい仕組みになっているしこれなら確かに売れるな」
「いえ、このフードプロセッサーも良いですよ?これがあれば食事の仕込みがどんだけ楽になるか…」
アンゼルと秘書さんの会話を聞く限りでは上手く行きそうだな、少女に使い方と仕組みは教えているので彼女説明は任せてある…思ったより要領がいい子なんだよね。
「量産もこれなら出来そうだな。これをうちで作って売っても良いんだな?」
「えぇどうぞお好きに。代わりにこの子達に『肉まん』を売る権利と庇護をお願いしますね」
俺の言葉に驚く少女。
そりゃそうだ、知らない人を家に入れたらこんな所まで連れて来られて挙句の果てには、食べ物を売る仕事に就くことになる…シンデレラストーリーとは言えないが中々のサスサスストーリーではなかろうか?
「どうしてここまでしてくれたんですか?私は貴方に何もしてないのに…」
涙目で理由を聞いてくる少女に私は笑いながら理由を話す。
「それはね。神様が私に自由に生きなさいって言ってくれたからだよ。君も頑張れば生きていける場所に来れたのだから頑張ってみると良い」
私の言葉に少女ははにかんだ笑顔を見せてくれる…これだけで十分なお礼だと今の私は感じている。
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宜しければ読んで頂けたらと思います。




