てんやわんやな創作回
さて、具材の吟味だが向こうの世界にあるもので作らなければ意味がない。
しかも、出来るだけ揃えやすく安い品物でだ。
まずは小麦粉、こちらでも薄力粉と強力粉の区別はあるようなので問題ない。
割合は色々変えて試してみよう。
砂糖は高かったから保留かな?酵母は向こうの世界にはまだ無いようなのでこちらも保留かな。
「酵母は早く普及させて欲しいものです。早くです」
…酵母は普及させますね。
後は中身の具材と味付けかな。
イノシシの肉は結構普及していたのだがクセがある。
なので一手間かけよう。
イノシシ肉をリンのおろしたもので漬け込み半日から一日ほど(時空魔法)で加速させ、見てみる。
一日が味と柔らかさが良くなったので覚えておく。
後は白菜に似たハクーとネギと生姜に似たショガを使って餡を作る。
問題はタケノコなのだがこちらの世界では特定の場所にしか無いらしい。
何かあの食感に似た物をものを考えていたらリンが目に入る。
ダメ元で細かく切って焼きリンゴにして餡に入れたら意外に合った。
胡椒も高いので香草と塩で味付け、若干リンの絞り汁も餡を練る時入れてある。
「中々良いではありませんか。豚とリンゴが合うのは、いんたーねっとで知っていましたがここまで合うとは…これは私への『神への捧げもの』に認定してもいいですね」
子供達が卒倒するのでやめてください。
何回か作り、アリスや識天使に意見をもらいながら完成だ。
魔具の蒸し器を5つ、魔具のフードプロセッサーを3つ、トングス、食材を混ぜる為のボールを10個に酵母菌を【アイテムボックス】に入れて現実の世界に戻る。
後は、明日、宿屋の料理場を借りて作り方を子供達に教えよう。
フォルディルとオモチを回収しに行くと、ピカピカになった子供達が綺麗な服を来て遊んでいた。
「ごめんね、サルサ爺。面倒を見てもらった上に服や体まで綺麗にしてもらって…お金は後で払うから教えてね」
自分がそう言うと、サルサ爺は笑って自分の頭を撫でてくれる。
「馬鹿言っちゃいけねぇ。これは俺がしたいからした事だ。それに金ならお前の親父が出してくれている。あぁ見えてこういう話には弱いからなぁ。お前さんの作戦が駄目ならうちで雇うかとか言っていたぞ?」
…まったく勇者は心優しくて困ってしまう。
自分は子供達に明日料理を教えるからそれを覚えてもらう事を説明する。
「わ、私あんまり料理とかした事ないんですが…」
不安そうな少女に簡単な料理だからと言っておく。
他の子達はやる気が十分だ。
朝の朝食時間が済んだ後、店に頼んで料理場を貸してもらうようにお願いする。
料理長がその料理を作る所を見せてくれたら良いと言うので、自分が作りながら子供達に教える所を見てもらう。
「すっごい!この道具勝手に野菜やお肉を粉々にしちゃうよ ! 」
「この蒸し器ってとっても熱いよ、気をつけようね」
「はわわ ! こんなに簡単に出来るんだ」
「美味しい ! これ、本当に美味しいよ! 」
概ね好評だ。
サルサ爺とマドックに味の評価を頼んでいたのだが、料理長や副船長に船員達といつの間にか人でいっぱいだ。
「頼む ! その魔具を譲ってくれないか ! 」
料理長に頼まれたがこれは試作品でデオドラ商会に売り込む物だと伝えたら、早く売り込んでくれと催促された。
あと、『蒸す』という方法について聞かれたので、ある程度教えて上がる。
料理場を使わせてくれたお礼だね。
「この度は何やら新しい魔具を紹介していただけるとか?マドック殿も優秀な息子さんをお持ちで羨ましいものですな」
「いやいや、ただの放蕩息子ですよ。今回は一緒に動いてますがいつもは一人旅を楽しむようなやつなんで」
デオドラ商会に来たらいきなり会長さんに、会長室まで連れて来られた。
どっかでこんな事があった気もするが子供達の方が不安そうなので付き添っている。
会長さんとマドックは世間話から入り5分ほどもすると俺の訪問理由の話になる。
「それで…どうしてうちにこの話を持って来られたのです?サラムーン海運でも料理などは取り扱っているのでは?」
商人として色々な事を経験してある人に嘘やとぼけるのは悪手だよな…私はこの商談を成功させる必要がある。
「単純な話ですが、この首都マルガスで大きな影響力を持つデオドラ商会にだからこそ…ですよ」
「それは私の所の力でその商品を売りたいと考えてよろしいのですかな?」
目の色が変わった!やっぱり歴戦の猛者だ。
こちらが弱い所を自覚させてくる。
「いえ?単にデオドラ商会に売り込めばこの子達の将来に良いと考えただけですよ?」
さすがにこの回答は予想してなかったのだろう、私の隣にいる子供達に視線を向けている。
「それは商品の売り込みの話より、そちらを重視すると受け取っていいのでしょうか?」
会長の目がキツくなってきた、隣のマドックなんか溜め息ついてるし。
「えぇ。正直な話、私の持ち込んだ商品は既に何処にでも売れる物ですし、私にとってはその商品よりこの子達の方が重要ですから」
その言葉に更に睨むような形でこちらを見ている会長さん。
既に手は握りこぶしとなっている!塩分控えないと大変だよ?
「ではこの子達にはそれだけの価値があり、それがデオドラ商会に大きな利益を与えてくれると考えていいのか?」
…あらあら、遂には商談口調まで変わっちゃった。
まぁでもこれから言うことの方がよっぽど酷いし仕方がないか。
「いえ?大体私はこの子達の名前も知りませんし、昨日会ったばかりですが?」
会長室が静まり返るのをはっきりと感じ取れた。
あれ?しばらくほんわか時間に入るつもりがギスギスしてきた…
後書きの下に短編小説のリンクを作っています。
宜しければ読んで頂けたらと思います。




