てんやわんやな朝市の出来事
皆に自分が作製した武具を渡したのでこれ以上ここに留まる理由も無くなった。
「それではそろそろ元の世界に戻りましょうか。ここで見聞きしたものは元の世界では喋る事も、書き残す事も出来ませんので覚えて置いてくださいね」
「その為にここに連れて来たのだろう…以外とえげつないな。これでは私もどうする事も出来まいて…」
自分の言葉に皮肉を口にする公爵。
しかし、その顔は笑っている為自分の言いたい事は分かってくれたようだ。
「それではこれより元の場所への回廊を開きます。我が主人、またの訪問をおまちしております」
来た時とは裏側になる石の女神の石像にお礼を言って、俺は先にマドックの部屋に出る。
確認してみるが問題は無く、来た時のままの部屋の状態に未だ数度しか使ってない自分は安堵の息を吐く。
「ギョピ?ギョピピピピ!」
「……⁈ ………! 」
フォルディルとオモチは帰って来た事に驚いているのか、2匹で仲良く会話? している。
今までフォルディルが鳴いたことが無い事を自分は多少気にしていたのだが、神の箱庭にある幻獣達の住む森のフォルディル達も一切鳴いてなかったのでそういうものかと思っておく。
「本当に時間が経っていないんだな…」
「これは貴重な体験だったな」
「でも、向こうにいると年を取り過ぎそうだからちょっと怖いわ」
「あぁ…あの本達があれば俺の魔法は更なる高みに達するのに…」
「あー親父に会うのが憂鬱になってきた…ギルバルト、お前代わりにしてくれない?」
「隊長は自分の仕事をこちらに振らないで頂きたい」
「フォルディルちゃん! 今の私を慰めて! 」
「あー食い物は美味かったがあそこにはもう行きたくねーな…」
「そうか? 俺はあの攻撃に耐える為、今からでも修行したいぐらいだ」
「………」
「ふぅ…儂、こんな機密だらけの生活耐えれるのかの? 」
「お父様、駄目になりそうな時はもう一度あそこに連れて行ってもらいましょう…」
「料理のレシピは覚えましたが、使えるのでしょうか?心配です」
メリナさんの料理のレシピはこちらで用意してあげよう。
てんやわんやな自分の説明はこうして終わりとなった。
次の日の朝、自分はオモチをローブのフードを改良したオモチ入れにオモチを入れて、肩にフォルディルを乗せようやく首都マルガスの観光を始める。
本当に…ここまで長かったよ!
マルガスではほとんど何も観光できてない所為でストレスが溜まり過ぎた。
自分は自由に暮らしたいのに中々上手くはいかない、自分から首を出しているのは分かっているが、放っておかない事が多すぎる!
「フォルディル、オモチ、今日はゆっくりとこの場所を楽しもうね! 」
「ギョピィ!」
「………♪ 」
どうやら2匹も気合が入っているようだ。
今は、朝市を巡りながら何か変わった物が無いか物色中だ。
オモチやフォルディルが欲しそうな物は本人達に聞きながら買っている。
港町ならではの活気に溢れる朝市はマルガスの国中から集められたのではないかと思うほどの品々が所狭しと並んでいる。
「ギョピ!ギョピ!」
「…?…!…‼︎ 」
2匹も目移りするのか辺りを見渡しっぱなしだ。
今回2匹が騒いでも人の目が集まらないのは神の箱庭で作っておいた『認識阻害のローブ』のお陰である。
ローブ自体に【認識阻害】のスキルを付与した為、ローブに触れているもの全てに影響を及ぼす仕組みになっている。
「嬢ちゃん、今日のリンはうめぇぜ、買って行かないかい?」
果物屋のおっちゃんが10歳前後の女の子がリンという果物をじっと見ているのを見て声を掛けている。
「…ごめんなさい、今はお金が無いの」
下を向き、呟く少女ににおっちゃんは少し戸惑っているようだ。
「済まないが10個ほどそれを貰えないか?腹が減って堪らない」
自分でもどうしてこんな事を口にしたのか分からない、でも今の光景を見て何か心にくるものがあったのは事実だ。
「あいよ!…兄ちゃん一個おまけするから…」
少女をチラリと見るおっちゃん。
敵わないなぁ…
「分かってるよ、代金の大銅貨だ。これでいいよな?」
「あいよ!毎度あり!」
笑顔のおっちゃんと訳が分からない顔をしている少女。
「お嬢さん。実はリンを買い過ぎてね、良かったらこれを貰ってくれないか?」
自分は2個のリンを渡してあげる。
「そ、そんな!お金が無いのに受け取れません」
慎み深いと言うべきか、律儀と言うべきか…少し笑ってしまったのは内緒だ。
「なら、この朝市を案内してくれるかな?実は自分は旅人でね。この辺の地理には疎いんだ」
出来るだけ困った顔をして尋ねてみる。
少女は少し考えた後、こちらを見て頷いてくれた。
「ならお願いするね。おっちゃんもありがとね」
俺はおっちゃんに手を振り、少女の案内で朝市を回ることにする。
どうやら少女はこの辺の店に詳しいようで色々な物を買ってしまう。
「ギョピ ! 」
「………♫」
どうやらリンを食べたオモチとフォルディルも上機嫌だ。
リンはリンゴに似ているが、少し甘さが控えめだ、日本のリンゴは色々手を加えられているので比べるのは可哀想だが。
「ん?どうしたの食べないの? 」
少女は案内する間、ずっと手に2個のリンを持っていたままだった。
「うん…弟達に食べさせたいから」
恥ずかしげに言う少女を見ながら自分は思ってしまう。
神様、偽善でもこの子達を助けてあげたいと思うのは傲慢でしょうか?
首に掛けられた識天使の首飾りかほんのりと暖かく感じられた。
今日から改稿を少しずつですがさせて頂きます。期間は未定ですがお見苦しい所があるかも知れませんのでお許し下さい。




