てんやわんやなギルツさん
親子のようなバフマンさんとギルツさんの不思議な関係を見ているとセラさんが笑いながら話してくれる。
「この2人親子のようでしょ?昔出会った頃はギルツはやんちゃな子でね、バフマンが色々構っているうちにパーティを組むようになったの。あの頃のギルツは可愛かったわぁ。」
「やめてくれないか、セラ姉。私も既に立派な大人だ。あまりそのような態度をとって欲しくはない。」
頭を胸に抱えられながら何言ってるんですかねぇ。これは主人公か?主人公ポジションなのかギルツさんは?
「まぁお三方の仲の良さは分かりました。…ギルツさん。貴方はあの女性を知っていますか?」
本来聴きたいのはこの事である。他の2人も真面目な表情になる。年的に近そうだし顔ぐらいは合わせたことがあると思うんだよなぁ。
「何故そう思う?」
ギルツさんの目が冷静さを取り戻し、真意を探るように見てくる。
「同じ公爵家で年齢が近い。知らないと思う方が不自然だと思いますが?」
思った通りの事を正直に話すと、ギルツさんは溜め息をつき、話し始める。
「確かにその通りだな。私は彼女の事を知っている。そうは言っても7年以上前の事になるのかな。彼女のドルティア家と私のフォーベイン家はある程度の仲を持った間柄でね。小さい頃は遊んだこともある。彼女が竜騎士を目指していた事も知ってはいたがあのような事態になる事は予想出来なかったな。」
少し悔しそうに話すギルツさん。幼馴染のあのような姿を見て力になれないのが悔しいのだろう。意外とリデルと似ているかも知れない。それより問題がある。
「そうなるとカーターはその事を知っていますかね?いや、知らないか。知っていればギルツさんにお声がかかるはずだから。」
考えながら話しているとバフマンも気になったのか会話に加わる。
「多分知らない筈だ。こいつの本拠地は冒険者ギルドではギードになってるからな。…しかし、あの嬢ちゃんに会えば分かっちまうか。こちらから言わなければカーターの野郎が何か言いそうだな。どうすっかな。」
バフマンさんも悩んでるな。カーターに言えばギルツさんを政治の道具にされそうなんだよな。まぁマルガス公国の公爵の子供を政治的利用なんぞしようものならこちらが叩かれるのが普通なんだが………仕方がないので今のカーターの状況を説明して判断してもらうか。
「バフマンさん実は………」
という事でバフマンさん達に現状を報告する。バフマンさんは頭を抱え、セラさんはあちゃーといった感じの顔をしている。ギルツさんは何か考えているのかな?
「こんなんだから貴族になんてなりたくなかったんだ。あー面倒くせぇ。」
バフマンさんが最初に切れた。バフマンさんは法衣貴族、要は土地を持たない貴族なんだよね。とある遺跡の発見で貴族として受勲したらしい。お金は冒険者として稼いでいるというから驚きだ。
「バフマン。あんたギード辺境伯寄りだったわよね。下手な手に出たらユーグリット派とギード派の戦いになるんじゃない?」
セラさん。的確な判断ありがとうございます。バフマンさんが固まっちゃった。ギルツさんが何か決心したようで俺達に話しかけてくる。
「仕方がないな。私がマルガス公国の公爵の息子としてカーター殿と会おう。バフマンには済まないがギード辺境伯側の人間として付いてきてもらおう。本来ならリデル殿がいいんだが彼は今回カーター殿の護衛として来ているからな。ギード辺境伯側の人間として扱えば問題になる。ベル殿にも済まないが来てもらいたい。私がフォーベイン家に招待したい人間だと言えば外交官としても文句は言えまい。貸しが2つになるがお願い出来ないだろうか?」
そう言って頭を下げるギルツさん。みんなの事を考えての行動だ。それを自分は微笑ましく思う。
「頭を上げてくださいギルツ卿。我が身で役立つ事なれば喜んで手伝わせていただきます。」
[礼儀作法]を使い見苦しくないよう礼をする。バフマンさんとセラさん驚いた顔をしているが別にギルツさんの事を憎く思っていたわけではないしギードのみんなの為でもある。このくらいなら手伝ってもいいと自分で判断しただけだ。…単なる依怙贔屓だけどね。
「ありがとう、ベル殿。私のことはギルツでいい。済まないが君の力を貸してもらいたい。」
ギルツの潤んだ瞳に照れ臭さを感じながらもこちらも覚悟を決めたので笑顔で答える。
「分かったよ、ギルツ。私のことはベルで構わない。さて、眠り姫の所に行こうか。」
そう言って4人でクリステラさんの所に向かう。何故4人かって?セラさんが駄々を捏ねてついて来たからだよ!
「何用ですか?ギルツ殿に他の方々。おや?ベル殿もいるではありませんか。それではついに私達「済まないが用があるのはこの私だ。この私、ギルツ・ルグ・フォーベインが会いに来たとクリステラ・ウル・ドルティアに伝えてくれないか。カーター殿。」
カーターの言葉を途中で遮り、マルガス公国の公爵家の息子として会話するギルツ。周りにいたリデルも驚いているな。…あ。こっち見て睨んでる。
「こ、これはドルティア家の方でしたか。クリステラ殿は体調がすぐれず「カーター殿はマルガス公国の公爵家に意見を言われるのですか?公爵家同士の話し合いに我々が口を出すなど国際問題になりかねません。ここはお引き取りを。」
意見を言わさないよう私が言葉を遮る。本来なら自分が不敬なのだが、今回はギルツの威を借りるベルという感じだ。礼儀作法も使っているから言葉遣いにも多分問題無いだろう。カーターが人を殺せそうな目で此方を見てるが知ったことではない。
「今回はギルツ卿と交流の深いバフマン卿もおられます。警備はこの私、マドックの子ベルとバフマン卿とサラ殿がギルツ卿より仰せつかってありますのでどうぞお引き取り下さい。」
と駄目押しをする。流石に形勢の悪さを感じたのかカーターは黙って去っていった。
「お前えげつないよな。」
リデルがボソリと言うが心外だ。こんなに心優しい人間なのに……なんでみんなそんな目で見るんですかねぇ。
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