てんやわんやな主人公
ワイバーンの食欲を満たすためこいつと一緒に狩りに出かける自分。
「息子よ。食料が持たん。こいつと狩に行ってこい。」
という無責任な親父のせいで海で獲物を探しています。
「おさかないないのよー。」
海上を獲物求めて彷徨うワイバーンの背に乗り[索敵]しているだけの自分。平和だな。
「そう言えばお前のご主人様はどうして怪我をしたんだ?」
何気ないように会話を切り出す。強襲か反逆か何か知らないが助けたこちらに害が出るようなら早めに対処しないといけない。出来れば事故ぐらいか1番無難なんだが。
「えんどろーがきゅうにきりかかってきたのよー。ごしゅじんさまはわたしにたすけをもとめたからはこんでにげたのよー。」
駄目だこれ。知り合いの裏切りとか最悪のパターンじゃん。
「エンドローってどんな人なの?」
取り敢えず最後まで聞こう。どうせ巻き込まれるならきちんと知っておこう。
「えんどろーはごしゅじんさまのこんやくしゃなのよー。ふねでりょこうちゅうだったのよー。」
説明を聞いて分かった事はクリステラさんはエンドローという男と婚約者と共にとある島に旅行しに行っていたらしい。その帰りの船の中で突如エンドローがクリステラさんに斬りかかったらしい。船の甲板で寝ていたワイバーンはクリステラさんの悲鳴を聞いて助けに行きそのまま逃げたらしい。で、近くにいたうちらの船を見つけて助けを求めたんだそうだ。
話をまとめるとこんな感じだがおかしい事がけっこうある。
何故クリステラさんは完全装備をしていたのか?
何故他の船員は助けに行かなかったのか?何故ワイバーンと一緒に船で行ったのか?
など疑問点が多いのだがこの子の説明ではここまでしか分からなかった。後はクリステラさんの容体が良くなってから聞けば良いだろう。そんな質問をしながらの狩は大型のカジキのような魚を捕まえて終了した。
「さて、ベル殿。ワイバーンとも意思疎通が出来る聞いたのですが本当ですかな?」
カーターに呼び出され質問を受ける自分。どうやら面倒な事は無くならないようです。
「感情が分かるという感じですかね。特に大きな感情は分かりやすいですね。」
白々と[虚偽][演技][弁舌]などを使い対応する。貴方とはあまり関わり合いたくないのですよ。カーター
「成る程。では貴方の言うことを聞くのは何故です?竜騎士のワイバーンは主人以外に気を許す事がほとんど無いと聞いていますが?」
そうですね。ワイバーンは気位が高いのでよっぽどでないと主人以外の命令は聞きませんよね。
「ワイバーンに主人を助けたければ言うことを聞くように説得しましたからね。それで従順なのでしょう。」
嘘じゃないですよ。カーター。そんな人を殺せそうな目で見られても困ります。それにしても彼女はまだ意識が戻らないのか。
「ふむ。ワイバーンに忠義があり主人を第1に考えるならそうなりますか。しかし、勝手にワイバーンを動かしたとあってはマルガス公国との間に問題が起こるかもしれませんね。」
嫌味たらしく言ってくれるカーター。笑わせてくれる、その程度の脅しでどうにかなるかと思っているのだろうか?日本の御無体な扱いを受ける営業相手に片腹痛い。
「船長から直々にワイバーンの食料を獲得してこいと言われましてね。船長から聞いていません?竜騎士の竜に何かあればそれこそ問題になると思うのですが?マルガス公国は竜を愛する国と聞いております。そのような国にたいして飢えた状態のワイバーンを返してもよろしいので?」
弁舌さんが絶好調でカーターを煽っていく。他の官僚さんの顔が青くなっているのに対しカーターの顔は無表情だ。言い過ぎたかな?
「成る程。確かに言われる通りです。お手数をかけましたね。船長にも礼を言っておきましょう。」
そう言うと用は済んだとばかりに部屋を出される。もうちょっと粘られるかと思ったんだがな。まぁいいか、部屋に帰って休もう。
そう考えていたのに部屋の前で待っているギルツさん。自分の目を見ていますね。また[鑑定]ですか?やめてください。
「何か用ですかギルツさん。先程までカーター殿にいじめられていてあんまり気分が良くないんで早く寝たいんですがね。」
少し機嫌が悪いのを伝えながら早くどいてくれと思っているとギルツさんから意外な言葉がかけられる。
「ワイバーンの件、見事な働きだったな。あれほどの飛竜の扱い方マルガス公国にも出来る人間はそれ程いないだろう。」
何か前半は褒められたが後半は怪しまれているようた。仕方ないか、実際怪しいし。
「褒めてくれてありがとうございます。ギルツさんはマルガス公国に詳しいようですがご関係があるんですか?」
最初に竜騎士だと叫んだのはギルツさんだったなぁと思いながら問いかける。上位冒険者なら大陸を渡ることもあるのかなと考えながら聞いたのだが予想外の返事が返ってきた。
「あぁ俺はマルガス公国に住んでいたからな。詳しいのも無理はない。しかし、主人付きの飛竜にあれほど懐かれる人間は見た事がないな。ましてや主人の他に単独で他の人を乗せるなんて聞いたこともない。そうだ。正式な名乗りを上げてなかったな。私はギルツ・ルグ・フォーベイン。マルガス公国フォーベイン公爵の3男だ。」
笑顔で挨拶してくれるギルツさん。あんた無茶苦茶VIPですやん。
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