てんやわんやなワイバーン
ワイバーンの叫び声にし自分が頭を悩ませている間にも、船員達は大混乱である。そうだよね。あんなものが真っ直ぐ此方に向かって来たらそうなるよね。
「バリスタ用意出来るか?」
「固定式だから間に合わねえよ!」
「魔法使いでなんとか出来るか?」
「ワイバーン相手だと当たるなどうか分からん。」
いや。あのワイバーン助けを求めてますからね。攻撃の意思がある訳じゃないからね。そんな場違いな事を考えているとギルツが皆をなだめるように大声を出す。
「あれは竜騎士用のワイバーンだ。鎧に見覚えがあるから間違いない。攻撃はするんじゃないぞ。マルガス公国の竜騎士なら国際問題になりかねん。」
ギルツの説明のお陰で混乱は収まるがマドックやカーター13隊の皆さんに冒険者のリーダーまで来ている。リーダーは槍まで持ってるしやる気満々だったな。怪我治ってないのに。
ワイバーンは船の上空まで来ると、ホバリングをしているかのようにその場で動かなくなった。羽ばたかなくても飛べるんだなと思いながら見ていると、またワイバーンの叫び声が聞こえる。
「だれでもいいからごしゅじんさまをたすけてー。このままじゃしんじゃうのー。」
その声を聞いてワイバーンの背中を見てみると血塗れの騎士が確かにいる!流石に放って置けないのでマストを登りワイバーンの近くに寄り、ワイバーンの背に乗れる場所を探す。
「おまえはだれなのよー?」
ワイバーンが多少警戒した唸り声でこちらに吠える。助けてほしいのか、警戒するのかどっちかにしろと言いたいが、周りの目もあるので小声で話しかける。
「背中の人を助けたければ自分を背中に乗せろ。それが嫌なら他を当たれ。私以外にお前の声は分からないからな。ほら、さっさと選べ。」
そう言ってやると、ワイバーンは驚き吠えるのをやめた。
「ほんとうにたすけてくれるの?」
短い吠え声と共に聞こえてくる言葉に頷いて返答を待つ。しばらくすると此方に近づいて来て乗りやすいように頭を下げて来た。
「よし、いい子だ。」
そう言ってワイバーンに乗り移る。飛竜の背中にうつ伏せで倒れれている騎士の容体を見る。どうなら刀剣による裂傷のようだ。血を大量に失っている為、体温も低くなってる。回復魔法を死なない程度にかけ止血をする。回復魔法をかける所は見られてないが魔力の波動は感じられたかも知れない。
「取り敢えず船首の方に向かってくれ。場所を開けるようにするから。」
ワイバーンにそう言っておき、下の人達に注意を促す。
「今から艦首の甲板にこいつを下ろします。騎士の方が1人重傷。ギルベルト殿を至急呼んで下さい。」
後は甲板にワイバーンを誘導する。全長10mはあるが何とか着地する事が出来た。マドックとリデルにギルベルトが近づいてくる。
「騎士の方は刃物にて傷を負われています。体温が下がっているので温めれるよう準備してください。ギルベルトさんは傷の手当てをお願いします。ワイバーンに関しては自分が対応しますので騎士の方が起きるまでは任せて下さい。」
それを聞いたマドックが暖を取れるよう手配を始める。ギルベルトさんは鎧を脱がして傷の具合を見るようだ。自分はワイバーンに現状を話して落ち着かせる。
「わかったのよー。ごしゅじんさまをよろしくたのむのよー。」
意外と聞き分けが良いようだ。そんな事をしたいるとギルベルトさんが困った様子でこちらに来る。
「ベル殿。実はあの騎士の事なのだが女性でな。治療の方は終わったのだが服の取り替えはフィナに任せている。…傷の具合が良すぎるのは私が担当したことにしてるがギルツ殿が貴殿を怪しんでいる。気をつけて下さい。」
後半の話が本命で小声で忠告される。やっぱそうなるか、仕方ないよね。
「分かりました。騎士の方の処置はお任せします。自分はこの子の対応で忙しいので。」
と極力騎士には近づかない事を暗に表明する。多分どうにもならないだろうけど。騎士の状態を見るために鑑定したのが間違いだったよなぁ。
(名前)
クリステラ・ウル・ドルティア
マルガス公国ドルティア公爵家長女
竜人
22才
Level 16
(出身国)
マルガス公国
怪我の状態を見たかっただけなのだが、見たくもない情報が見えてしまった。貴族のステータスを見たって事がバレたらろくなことにならない筈……知らないふり。知らないふり。
「息子よぅ。助けたのは感心だが、せめて一言いってからにしろや。いきなりマスト登って飛竜に飛び降りるなんざ反応に困るだろうが。」
ポカリと自分の頭を叩いてマドックが文句を言う。確かに何も言わずに行動は良くなかったな。反省。反省。
「飛竜とまで話せるとは思わなかったが良しとしよう。んで何か問題でもあるのか?」
表情に出ていたのかマドックが聞いてくる。ここじゃ言えない話なんだよね。彼方此方で聞き耳立ててる人がいるし。
「こいつの食料をどうしようかと。きっとよくたべますよね。」
おいしいものがたべたいのよー。などと言ってるお馬鹿ちゃんは置いといて当面の問題を話す。肉食でこの大きさ。船の食料全部食べられるんじゃね?
「そ、そいつはまずいな。こいつに自分で取って来るようには言うないかな?」
真っ青になるマドックを横目にどうしたものかと思案する自分であった。
読んでくださりありがとうございます。




