てんやわんやな争奪戦
人が突然いなくなった無人の船。
どうやら港まで戻って来ているらしく、ガロルさんに詳しい話を馬車で聞く事ができた。
船の中には誰もいない状態で見つかっており、ただ人だけが居なくなったように見えるらしい。
一応魔法などが使われてないか調べられたが今の所、その形跡はないそうだ。
その為、自分の子供達を見つけた力で見つけて欲しかったのだそうだ。
魔法すら使われてないとするとスキルぐらいしかこのような事が出来るはずがないと思うのだが流石にそのスキルが何かまでは分かってないのが現状らしい。
船に着いた為、気絶させた男は置いておきガロルさんに指示してもらい2人だけで確認することにする。
もしも何かあった時自分の秘密がばれるのを極力避ける為である。
「見た感じは普通の船の感じと変わりありませんね」
【第六感】【感知】【魔眼】【精霊視】などを使い船の外装を見る。
特に変わった所はなく目立ったり傷もない。
船内に乗り込むと僅かだが魔力を感じる。
魔力が濃いところを探す為船内を探索していると、ある1室が周りの魔力より濃いことが分かった。
「ここに違和感を感じるので少し離れてて下さい」
そう言うとガロルさんは驚いた表情でこちらに話しかけて来た。
「たいしたものだな。もう原因をみつけたのか? 」
「いえ、違和感程度ですのでこれが原因かどうかまではまだ断言できませんよ」
そう言って離れたのを確認すると扉を調べる。
魔法などが掛かってない事を確認し、部屋に入る。
部屋の中は一般船員らしい部屋で荷物も少なく見るべきところもない。
魔力視で全体を見ていると部屋の隅に魔力を感じる。
目を凝らして見ると精霊視により小人のような精霊を発見した。
「君はここで何をしているのかな? 」
念話で話しかけたので聞こえているはずだが返事が無い。
警戒を強め、もう一度話しかける。
「聞こえないのかな? それとも話したくないのかな? それ以上無視するなら敵対行為と受け取るよ? 」
そう言うと、びっくりしたようにこちらを見る。
《僕が見えるの?君は一体誰なの? 》
怯える表情から出された声は甲高く子供らしい声だ。
ようやく話が出そうな相手なので分かることを聞き出したい。
「自分はこの船に乗って居た人たちを探すために雇われたんだ。君はどうしてこの船に乗っているんだい? 」
そう言うと精霊は慌てたように自分に話しかけてくる。
《僕はアロンの友達なんだ。アロンは君のようには見えないけど僕の事を感じ取れているからいつも一緒なんだ。それなのに…》
精霊は不意に泣き出しそうな顔になり、こちらにすがりついて来た。
《なんか急に音楽が聞こえてきて、みんなその音につられて出ていったんだよ。アロンくんも止めたんだけど僕の事を無視して行っちゃった》
そこまで言うと泣き出してしまった。
流石に精霊を泣かせたままにしておけないので連れて行くことにする。
部屋を出るとガロルさんが怪訝な顔をしていたので先程の聞いた話しをする。
「ふむ…音楽が聞こえてそれにつられて全員船を降りたって事か。怪しい事この上ないな。自分はここ最近でそういった事がなかったか調べて見るとしよう。お前さんをはどうする? 」
ガロンさんは、周辺への聞き込みをするみたいだ。
自分は精霊の事が気になるので別行動する事を伝えておく。
《これからどうなっちゃうの?》
不安そうな妖精に微笑みながらこれからする事を教える。
「これからみんなを助けに行こうと思うんだけど場所がわからないんだ。覚えているかい? 」
そう聞くと、精霊は大きく頷き自分の肩に乗った。
《いつも通る海路だから覚えているよ。でも船がないと行けないよ? 》
そう言うので指を口に当たる動作をする。
「これから起こる事や自分がする事はみんなに内緒だよ? 誰にも言っては行けないよ」
そう言うと【飛翔】を発動し、海面上を飛ぶ。
スキル飛翔は本来神獣や幻獣などに発生するレアスキルなのだが百花繚乱によりエクストラスキル以下のスキルを全て使える為、使用可能となっている。
妖精の案内を受け、音楽が聞こえた場所に着く。
日もほとんど暮れてしまい、夜の海での捜索方法を考えていると、うっすらと音が聞こえてくる。
《これだよ。この音楽でみんないなくなったんだ》
精霊がそう話しかけてくるがこちらはそれどころじゃなかった。
体の自由が奪われていく。
そんな感じで体が動かなくなってきているのだ。
【精神耐性】【魔法耐性】などを使って見るが効果がない。
じわじわと体の感覚が失われている。
既に手足が自由に動かない。
慌てている精霊を見ながら不味いことになったと思い最期のスキルに全てを託す。
「頼むぞ……【完全制御】」
スキルと音楽の体の争奪戦が今始まる。
段々タイトルが一番時間かかるように…




