てんやわんやな無人島
意識だけがはっきりとする中、【完全制御】と謎の音楽は自分の体の支配権を取り合っていた。
ユニークスキルである完全制御と同レベルでの洗脳に流石に動揺は隠せない。
後1つ切り札はあるが今つかうべきか判断に迷う。
とりあえず念話で精霊に辺りを確認してもらう。
「すまないが敵から攻撃を受けている。辺りに不審な者がいないか確かめてくれ」
現状を話して応援を求めた所、精霊は辺りを探索し始めた。
依然完全制御と敵の洗脳はお互いに自分の体の取り合いをしており、体が動く気配がない。
そろそろ切り札を使おうとした時精霊から敵の発見報告を受ける。
「ここから東に1kmほどの所に大きな島が出来ていましたー」
ん?島が出来ていた?
「今までその島は無かったって事?」
確認の為聞いてみると、精霊は大きく頷いた。
「今まで同じ所を何度も通っていますがあんな島見た事ありませーん」
そういう事なら間違い無いかな。
目標が決まった為、奥の手を使う。
「【神龍紋】タイプC起動」
2匹の輝く龍が頭に寄り添い合い角の様になる。
完全制御を増幅した瞬間、体の制御はこちらの手に戻った。
すぐさま飛翔でその島へと向かう。
飛翔で向かった先には確かに島があった。
謎の音楽もそちらから聞こえる。
全長4〜5kmぐらいの島であろうか。
その割には緑が多くまるで小さな森の様になっている…しかし、これは。
「精霊さん。アロンくんが何処にいるか分かる?」
そう聞いてみると、周りを見渡してある一点で止まる」
「あそこにいるー間違いないよー」
指し示した方向に向かって飛んでいく。
謎の音楽の音も大きくなってくる。
その方向には確かに人が集まる場所があった。近くによると海賊さんもいた!
音源を探すと人々が集まる中心にオルゴールのような物がある。
それをアイテムボックスに仕舞う。
するとようやく音が聞こえなくなり、夜に静けさが戻った。
音が聞こえなくなって少しすると段々人の意識が戻り始める。
神龍紋を解除し、アロンくんのそばに精霊を届けると【無詠唱】にて(転移魔法)で一旦街に戻る。
街に戻ると、探知にてガロルさんを探す。
商店に戻っているようなので店に行きガロルさんを呼ぶように頼む。
「なんでぇ、何か分かったか? こっちも調べていたが、どうやらあと1隻程同じ様に無人の船が見つかる事があったらしい」
ふむ、被害が少なくて何よりだ。
自分でさえやばかったのだから一般人じゃどうにもならなかったであろう。
「こちらは朗報、居なくなった人達をみつけたよ」
そう言うと、ガロルさんは顎が外れたかのように口が開けっぱなしになった。
虫歯は無さそうで何よりです…と、また護衛のような人がこちらに寄ってくる。
「おやっさんが見つかったのか?」
走り込んでくるので躱す。
男臭い抱擁なんていりません。
「島のような場所にいたので全員いるかは確認は取れていませんが、フェルマルさんは確認出来ましたよ。人が多いので早く船を手配して欲しいのですが」
そう言うと、我にかえったのかガロルさんは急いで店を出ていった。
後には漢泣きする。護衛のような男と疲れ果てた美少年(自称)だけである。
仕方がないので2人で港を目指す。
その合間に男が勝手にフェルマルさんとの出会いを話し出す。
聞いていたことを簡単に纏めると子供の頃、流行り病で両親を亡くし兄妹4人の面倒を1人で見ることになったそうだ。
人が嫌がる仕事でも犯罪でなければ率先して働いたと言っている。
それでもやはり全員の面倒をみるのは難しかったらしく、最後は自分が奴隷になって他の兄妹に金を渡すことまで考えたらしい。
そんな時フェルマルさんが彼を雇い他の兄妹にも簡単な仕事をくれたそうだ。
…いかん。泣ける話やん。
あんな海賊みたいな顔をしている割にかなりの世話焼きらしい。
そんな話を聞いていると、いつのまにか港に着いていた。
「準備は出来ている。後は出航するだけだ」
準備のできた船に乗り、目的地に向かう。
3隻も出航するので聞いてみたら2隻が救助船で1隻はサポート用だそうだ。
この短い時間でこれだけの事が出来るのは流石は大商人、周りへの影響力が半端ない。
幾人かにどうやって見つけたのか聞かれたが全部ガロルさんが対応してくれている。
ただ自分が見つけた事はすでに広まっているらしく今後の影響が面倒そうだ。
2時間程で目的地に着く。
島の海岸付近に人が集まってきている。
船が見えた為か、こちらにてを振っている人が多い。
さて、漸く救助活動開始だな。
救助活動は順調に進み島の探索もほぼ終わっている。
植物に関してはてんでバラバラで統一性が全くないらしい。
あと、動物を全く見かけない。
昆虫ですら……
何よりこんな所に島は今までなかったと色々な人が証言している。
そんな不安の中、島の捜索は終わり救助活動は成功した。
後はこの様に残っているのは自分だけである。
「本当に出ていいのか? 」
心配そうにこちらを見るガロルさん。
ガロルさんには救助活動が終わり次第この島をすぐに離れるように言ってある。
理由は秘密で……他の人達からは反対の声が上がったが、ガロルさんがそれを抑えてくれた。
「構いません、出来るだけ早くここから離れて下さい。でないと命の保証が出来ません」
そう言うと渋々ながらも離れてくれた。
ある程度離れてくれてからが本番だ。
今日の銀狐亭の夕飯食べたかったなぁ。
今日も寒い1日になりそうです。




