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魔法使いと少女  作者: 徒然花
本編
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6/14

弟子

溺愛モードに突入……でしょうか(笑)

少女がうちの前で行き倒れていた時、そしてそのまま弟子入りした時から5年が経った。


彼女はガーネットという名で、西の地方の小さな村に住んでいたという。6人兄弟の上から3番目で、兄姉はもう家の手伝いをしていると言っていた。ガーネットは、仕事(農業らしい)の忙しい両親に代わって弟妹の面倒を見ていたのだが、手に職をつけたいと思い立って、ばあちゃんに弟子入りしようと家を出てきたということだった。もちろん両親の同意の上で。


オレの周りをちょこまかとしていたガーネットだが、『師匠!』と呼ばれるのだけはどうにも慣れず、


「師匠はやめろ」

「え~? じゃあアル様?」

「はあ? なんで様付なんだ」

「だって呼び捨てにはできませんし? アレッサンドロ様って長くて言いにくいじゃないですか?」

「……」


小首を傾げ、あっけらかんと言い放った彼女。まあ、師匠から逃れられるならよしとするか?


「まあ、いいだろう」


渋々認めたオレだった。




実家でも家事手伝いをしていたという彼女は、なかなか料理も上手く、家事も10歳とは思えないくらいにてきぱきとしていた。


「お前、家事慣れてるな」

「はい! 毎日してましたからね!」

「それに手際もいい」

「実家はごちゃごちゃしていた上に荷物が多かったですから。でもアル様のおうちは必要最低限しか置いてないから、とっても片づけも掃除もしやすいです!」


屈託ない笑顔でそう言うガーネット。

オレも一人暮らしが長いし、ばあちゃんにこき使われ……こほん、修行の一環で炊事洗濯もしていたから、身の回りのことに不自由していなかったが、ガーネットが来てからは、すっかり彼女に任せきりになっていった。




家事がひと段落する昼飯後。それから夕飯後。その時間がガーネットの勉強の時間。

薬草から病気のことまで、流れを追って教えていく。

字も、読み書きできないようなので、少しずつだが教えていった。

ガーネットは、もともと怜悧な性質らしく、教えたことは砂が水を含むようにあっという間に吸収していった。吸収するだけでなく、きちんとアレンジなんかも考えている。なかなか筋がいい。

診察に行く時もガーネットを伴い、研修させた。


というように、勉強・修行に関しては文句ない優秀な弟子なのだが。


いかんせん、致命的に方向音痴なのだ。




初めて村の薬屋に、オレの作った薬を卸しに行かせた時。朝食後に家を出たにもかかわらず、いつまで経っても帰ってこないので心配になり、ガーネットの気配を辿って転移すると、『どこだよここ?』みたいな場所で迷子になっていた。もちろん、村とは全然関係ない方向だ。


「ガーネット!!」

彼女を見つけてそのそばへ寄る。すると涙にぬれた顔でこちらを見上げてくる。

「アル様ぁ~~~!! うわーん! 村がありませーん!!」

って、村が移動するかよ!

「村がねーんじゃなくて、お前が違うとこに来たんだろうが!」

オレが冷静に突っ込んでやると、

「え? そうなんですか?」

ピタリと涙を止めて、きょとんとした表情になるガーネット。ああ、またそんなところがかわいいと思ってしまうじゃねーか。

「そうだ! 帰るぞ! ったく、心配かけやがって」

蹲ったままのガーネットを抱き上げる。びくっと驚いたようだったが、やはり安心したのだろう、

「うえ~ん! ありがとうございまーす!!」

そう言って、オレにギュッと抱き着いてきた。くそっ、やっぱりかわいい。


森の入り口らしきところで蹲ってえぐえぐ泣いているガーネットを見つけた時は、正直、体中から力が抜けて、その場にへたり込みそうになった。

でも、それを悟られるのが恥ずかしくて、かなりぶっきらぼうに接してしまったけど。

涙の跡も乾かないガーネットを抱き上げて、転移魔法で帰宅した。




村に使いに出す度にこれじゃあ、心臓がいくつあっても足りないと判断したオレは、うちから村の入り口まで、そこかしこに標識を立てた。迷う隙もないほどに。


そんなオレの行動を知った村人からは、


「溺愛だね~」

「健気だね~」

「ロリコンだね~」


と、散々からかわれたが。ほっとけ。


そう言う村人たちも、もともと人懐っこいガーネットをかなり気に入っていて、ことあるごとに差し入れをくれたりしている。

オレのところに来たころは、まだかわいらしいという形容がぴったりだったのが、5年経った今ではすっかり『美少女』と言って過言ではない。


そう。ガーネットは美少女なのだ。


だから、村人の中でも彼女に懸想している男もいる。

まあ、オレが睨みをきかせているから、そうそう手出しはできないだろうが。


しかし、今日も、


「アル様~! 今日のお代です。それから、八百屋のマリリンからお野菜と、魚屋のサシェから新鮮なお魚、ああ、パン屋のコリントからパンをいただいてきました~!」


村に薬を卸しに行った帰りに、いろいろ持たされたのだろう、ガーネットが嬉しそうにオレのところに今日の成果を運んできた。

この差し入れ、全部オレ目当てにくれたもんだと思っているガーネットだが、実は全部ガーネット目当てなのだ。

コリント(オトコ)はまだわかる。が。マリリンもサシェも、お前ら女だろうがっ!


まったく。油断も隙もありゃしない。

それに気付かないガーネットもガーネットだ。

うれしげに、


「アル様? 今夜はお魚にしますね~」

「パンは明日の朝に食べましょうね~」


なんて呑気に鼻歌まで歌ってる始末。

別にガーネットが悪いわけじゃないのに、不機嫌になってしまった。


今日もありがとうございました!


やっぱりアル様、ロリ……?(笑)

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