葛藤
粥を温めなおし、部屋に持っていくと、少女はまたすやすやと寝入っていた。
眠っているのを起こすのは可哀相だと思い、ベッドサイドのテーブルに盆を置き、部屋を出ようと思ったところで、少女が目を覚ました。
「ほら。起き上がれるなら食え。粥だ」
そう言って、少女が起き上がるのを手助けしてやる。
オレってこんな面倒みよかったっけ? と、自問しつつも、甲斐甲斐しく起き上がった背中にクッションを入れてやったりした。
「ありがとう、おにーさん。わあ、美味しそう! いただきます!」
碧の眼をこれでもかとキラキラさせてお礼を述べる様子は、本当にかわいい。
知らず頬が緩みそうになるのを引き締めて、スプーンを手渡してやった。
しかし、嬉しそうにスプーンを受け取ったはずなのに、一向に食べ始めない。
どうした? 何をためらってる? 毒なんて入れてねーぞ?
「どうした?」
怪訝に思い、問いかけてみると、
「なんかね、手が震えて上手くスプーンが持てないんですよ。おっかしーなぁ?」
首をちょこんと傾げて、震える自分の手を見つめている。
ああ、極度の空腹で筋肉が痙攣しているんだろう。
すると少女は、おもむろにスプーンをお盆に置き、粥の入った器をガン見し出した。
なんだ? 食べるのを諦めたのか? 諦めたら空腹が満たされず、このままますます衰弱していってしまうじゃねーか。
……仕方ない。自分で食べられないのなら。
「何をやってるんだ。……はぁ。ほら、貸せ」
衰弱していく少女を見てはいられないから、それならオレが食べさせてやる。
くそっ、こんなこと誰にもしたことねーぞ?! ったく!
と、何だか自分にイライラしてため息が出る。少女の前からスプーンを取り、粥の入った器も取り上げる。
「ほら。口開けろ」
粥を一掬いし、少し冷ましてから少女の口に持っていく。
初めキョトンとしていたが、これがいわゆる『あ~ん』だと気がつくと、ちょっと顔を赤らめて恥ずかしがる素振りは見せたものの、素直に口を開けた。
よほどお腹が空いていたのだろう(当たり前だ)、あっという間に完食してしまった。
お粥には、塩だけでなく、少しの滋養強壮の薬草を入れてあったので、しばらくしたら体力も回復してくるだろう。
体力が回復したら、本来の目的地であるばあちゃんのところに送ってやろう。
転移の魔法を使えばあっという間だし。
「さ。これでもう一休みしろ。体力が戻れば西の森に連れてってやるよ」
食器を片付けながら少女にそう告げると、何を思ったのか彼女はまたサア~っと顔色を変えて、慌てだした。
何か不都合でも?
そう思い、少女をしばらく観察してたんだが、彼女は目を見開いて、口をパクパクさせたままオレを見つめている。
必死に何かを考えている様ではあるけど、まったくわからん。
何が言いたいのか聞こうと思い、オレが口を開こうとしたその時、
「おにーさんも魔法使いなんですよね? 私を弟子にしてくれませんか?」
「はぁぁぁ????」
オレの問いは、呆れ声に取って代わられた。
いわく、家事手伝いでも何でもするから、オレの弟子にしてくれと。
オレ、弟子取るような立派な魔法使いでもねーんだけど? まだ駆け出しって言っても過言じゃねーしな。オレに弟子がついたって聞いたら、ばあちゃん、腹抱えて笑い死にしそうだ。
しかも早速「師匠!!」とかゆーてるし! いや、師匠は勘弁してくれ。身に余りすぎるから!
オレの手を握り締めて懇願してくる少女。必死にお願いしてくる姿にまた『かわいいな』と思ってしまっている自分に驚く。
こいつ、まだ10歳なんだよな? オレ、もしかして無自覚のロリコンだったのか?! ……いや、待てオレ。早まるな! 今までそんなこと思ったことないぞ! 断じてない!! じゃあ、なんだ? ……こいつ限定なのか?
オレは縋り付いてくる少女をじっと見下ろしながら、一人葛藤していた。
しかし、そんなオレの葛藤なぞ気も付かない彼女は、終い目にゃ、
「こんな子供をまた放り出すなんて、できませんよね? ね?」
ときたもんだ。それを言われちゃさすがにオレも抵抗を諦めざるを得ない。
こんな時に『子供』だっちゅーことを武器にしやがって~~~!
今日もありがとうございました~ (^-^)
魔法使いのおにーさんの葛藤ということで(笑)




