弟子入り
ちょっとまたうとうとと眠ってしまった私。
なんだかふんわりと温かな、そして美味しそうなにおいで目が覚めた。
「?」
おにーさんがベッドサイドのテーブルに、お盆を置くところだった。
「ほら。起き上がれるなら食え。粥だ」
そう言って私を引き起こし、背中にたくさんクッションを置いてくれた。
わ~、なんかお嬢様になった気分だ。
「ありがとう、おにーさん。わあ、美味しそう! いただきます!」
おにーさんからスプーンを受け取り、食べようとしたんだけど、手が震えて上手くスプーンが持てない。あれれ??
「どうした?」
いつまで経っても食べ始めない私に、おにーさんは怪訝な顔をして聞いてくる。
でも私はそれどころじゃないんだよ。自分の手なのにうまく制御できない。なんじゃこれは?
「なんかね、手が震えて上手くスプーンが持てないんですよ。おっかしーなぁ?」
面白いほどに震えている自分の手を、他人事のように見てるんだけど、このままじゃお粥が食べられないよね。仕方ない。お粥が冷めるまで待って、器から直接流し込むか!
そう決めた私は、スプーンを諦め、お粥が飲み込めるくらいまで冷めるのを待つことにした。
でも、そんな私(お粥をガン見したまま食べようとしない)を見かねてか、
「何をやってるんだ。……はぁ。ほら、貸せ」
おにーさんは盛大なため息をひとつつくと、私の前からスプーンを取り、
「ほら。口開けろ」
そう言うと手ずから食べさせてくれようとしてくれた。
って、これはいわゆる『あ~ん』だよね? この歳になってしてもらうとは思わなかったなぁ。弟や妹の面倒を見てて、私がすることはあってもさ。でも、
「え……あ、はい。……むぐむぐ」
羞恥心をかなぐり捨てても今は食事が欲しいのだ! ただのお粥なのにめっちゃ美味しい!! なにこれ、なんか特殊な調味料が入ってるの?
いや、タダの塩だと思うけど。うん。でも、すっごい美味しい。空腹は最高のスパイスとはよく言ったもんだ!
素朴なお粥の美味さに、体中に力が漲る気がした。
次々と口に運ばれてくるお粥を、夢中になってがっついてたら、あっという間に完食していた。
おにーさんが食器をお盆に片づけながら、私に向かい、
「さ。これでもう一休みしろ。体力が戻れば西の森に連れてってやるよ」
そう言った。
って、え?え? もっかい私に5日間飲まず食わずで歩き通せとな?? 正確に言うと5日と半日。さらに距離が伸びてるし! 無理無理無理無理!!!!
つーか、おにーさんも魔法使いなら、このままここで弟子入りさせてもらったらいいじゃない! ワタシ的には魔法使いの修行ができるならどこでもいいわけだし? そうだよ。もうなっがい距離を歩くの無理だもん。おにーさんにお願いしてみよう!!
私はそう自分会議で結論し、
「おにーさんも魔法使いなんですよね? だったら私を弟子にしてくれませんか?」
「はぁぁぁ????」
思いっきり呆れ顔なおにーさん。いや、師匠←すでに気分は弟子☆
「師匠!! お願いします! 家事手伝い何でもしますから!」
おにーさんの手を、私の両手でぎゅうぎゅう握り締めながら、私は懇願した。
「師匠ゆーな! 手を離せ!」
おにーさんは焦って手を抜こうとしてるけど、こっちだって必死なんだから。離すもんか!
「こんな子供をまた放り出すなんて、できませんよね? ね?」
ダメ押し。ちょっと泣きそうな顔でお願いしてみた。こんな時に子供ってことを出してくるのは卑怯だとは思うけどねっ☆
「ぐっ……」
おにーさんは言葉に詰まったかと思うと、抵抗を諦めた。
よっしゃ! 師匠げーーーっちゅ!!
今日もありがとうございました (*^.^*)




