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魔法使いと少女  作者: 徒然花
本編
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2/14

保護

家の前で『ばたっ!!』と何かが倒れる音がしたので、何事かと思い、オレは様子を見るために外に出ようとした。しかし玄関扉を開けた途端に、それが何かにぶつかった。

勢いよく開けていたわけではなかったので『こつん』程度で済んでよかったが。

ギリギリオレ一人が通れるくらいに細く開いた扉。


そこから、投げ出された人間の脚が見えた。


まさかオレんちの前で行き倒れ?! 朝から勘弁してくれ。


慌てて隙間から外に出ると、その脚の持ち主は、華奢な少女だった。

着ている服はそこかしこに汚れが付き、お世辞にも『清潔な』とは言えない代物。

というか、着の身着のままでここに倒れたってか。そんな感じだ。

かがみこんで、少女の脈をみる。ほっそりとした首筋に手を当てると、弱いながらもちゃんと脈打っていた。よかった。死んではいない。

しかし倒れるほどに具合が悪いとなると、早く手当をせねばなるまい。

どこが悪いのかは後から診るとして、とりあえず一旦家の中に運んで、安静にさせよう。

そう思い、抱き上げた少女は、あまりに軽くて驚いた。




オレはこの東の森で魔法使いとして生活している。

といってもそんなに長くはないが。まだ2年てところ。

それまでは西の森の魔女(通称ばあちゃん)のところで修行していた。それこそ幼いころから。

で、2年前に「もうそろそろいいだろう」ってことでのれん分けしてもらい、商圏が被らない、東の森に拠点を置いたのだ。

魔法使いって言っても、今時は人を呪い殺したりとかそんなオドロオドロシイものではない。

薬草を調合して薬を作ったり、病人を診たりする、いわゆる医者のようなものが主だ。

魔法も操るが、この平和なご時世、頻繁に使うとしても治癒魔法と移動魔法くらいなもんだ。攻撃魔法に至っちゃいわゆる『宝の持ち腐れ』に近い状態。

薬は、一般的なものから、オーダーメイドのものまで各種取り扱っております。ごひいきのほどを。

って、宣伝はまあ、それはいい。


行き倒れていた少女を、一つしかないから、自分のベッドに寝かせる。

顔色が悪い。青いというより白だ。よほど具合が悪いのだろうか。

そのまま静かに少女を観察する。

肩より少し下くらいの、真っ直ぐな濃茶の髪の毛は、無残にもあちらこちらで絡まっている。やはり着の身着のままっていうのが正しいようだ。しかし、このまだあどけない少女が、どうしてそんな状況になったんだろう。家族は? 親戚は?

静かに掛布団をかけてやり、それから右手を少女の上に翳し、身体の状態を確かめる。目を閉じ、彼女の身体から返ってくるオレの魔力を解析する。

病気というよりは……疲労と空腹?!

空腹……。

まあ少し安心した。

重篤な病気ではなくてよかった。


「さて。じゃあ、寝てる間に粥でも作っとくか」


眠る少女を見下ろしながら腕組み一人ごち、少女の世話の準備に取り掛かる。




目が覚めた少女は、何度も瞬きしながら、しばらく天井を見つめていた。

そりゃそうだ。見たことない天井だしな。

彼女はなおも天井をガン見するばかりで、傍にいるオレに全く気付く様子もないので、


「気がついたか」


声をかけると、元々大きな目をさらに見開き、


「ふわっ!! びっくりした……!! おじさん、誰?」


と言う。

『おじさん』?! オレはまだ20歳だっ!! このクソガキ!! ……コホン。取り乱した。こんな子供相手に。

「おにーさんはこの森に住む魔法使いだ」

冷静に訂正しておこう。おじさんでは断じてない!!


少女になぜここに倒れていたのか話を聞いてみると、どうやら西の森のばあちゃんのところに行こうとして、この東の森にたどり着いたらしい。

って、どんだけ方向音痴なんだよ。

がっくりと自分の首が下がるのが判った。

通り過ぎた王都にも気付かずにここまで来るのは、ある意味奇跡に近い。王都に気付いてりゃ、5日間も飲まず食わずで倒れることもなかっただろうに。西の地方から王都までだと徒歩で2日くらいなものだからな。


「お前、いくつだ?」

気を取り直して彼女に聞いてみると、

「え? 10歳です」

何とも無邪気な表情で答えてくれる。

10歳だって?! なんでまたそんなに幼いと言っても差し支えのない少女が、西の森の魔女のところを目指してたんだよ?

それを問えば、


「え? 魔女様んところで修行させてもらおうと思ったんです。手に職付けたいなぁって思って」


それが何か? 的な返答が返ってきた。

表情豊かな緑の瞳をくりくりと動かし、小首を傾げてオレのことを見つめてくる。


オレの中に、いまだ感じたことのない感情が湧いてきた。


『庇護欲』


あんまり他人に関心のなかったオレに、そんなもの備わっていたのか、果たして彼女がそう思わせる何かを持っていたのかはわからないが、とりあえず『今は守ってやらないといけない』と思ってしまったのは事実。


呆気にとられた間抜けな表情を引き締めてから、オレはとりあえず彼女の空腹を解消すべく、先程作っておいた粥を取りに行くことにした。


今日もありがとうございました(^^)


ま、短いのでサクッと更新♪ ←最初だけかも(笑)



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