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聖女ロボットが完成したので、人間の聖女はもう必要ないそうです  作者: 小平ニコ


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第5話(ジェイリアム視点)

「国王陛下。この国は、人の出入りが多すぎます。出入国の審査を厳格化し、一日の入国者、出国者の数を、合計で10人までとしましょう」


 俺は困惑した。


 アデライド王国はそれほど貿易の盛んな国ではない。それでも一日に100人以上は、外国から入って来る者、そして出国していく者がいる。その出入国者の数を、たった10人に絞ることなどできるはずがない。


 そんなことはエルディット・マーク2も分かっているはずだ。何といっても彼女は、人間よりも優れた機械の頭脳を持っているのだから。


 俺はエルディット・マーク2に、何故出入国の審査を厳格化したいのかを尋ねた。するとエルディット・マーク2は、淀みない弁舌で、スラスラとその理由を述べる。


「恐れながら申し上げます。国王陛下は以前私に、『完璧なる平和』の『完璧なる国』を作るにはどうすればよいかと尋ねられましたね。私はそれ以来、どうすればアデライド王国が『完璧なる平和』を得ることができるか、常に考えています」


「…………」


「現在、私の聖なる力によって、魔物たちは完全にシャットアウトすることができています。人間の犯罪者も随分と減りました。しかし、ゼロになったわけではありません。私の聖女の力は、凶悪犯を魔物と同一視して排除しますが、軽犯罪者はそうもいきません。国の中に一人でも犯罪者がいては『完璧なる平和』とは言えません」


「ふむ……」


「犯罪者の比率を計算して分かったのですが、この国で起こる不法行為の5割以上は、外国から入って来る者が犯しています。ですから入国者を厳しく審査すれば、犯罪の発生リスクを最小限に抑えることができるのです。そして、完璧に入国者の審査をするのは、一日に10人が限界なのです」


「なるほど、よく分かった。だが、そういうことなら、出国者については、別に制限を設けなくても良いのではないか?」


「いえ、そうもいきません。出国した者は、いずれ帰ってきます。その際、外国から未知の伝染病を持ち帰ってくる可能性があります。私のデータベースによると、帰国者が持ち込んだ病原菌のせいで滅びてしまった国は、これまでの人類の歴史で、星の数ほどあるのです」


「そうなのか……恐ろしい話だな」


 エルディット・マーク2は、ギギギと首を動かし、頷いた。


「私はこのアデライド王国を、あらゆる厄災から守らねばなりません。すべては、陛下の望まれる『完璧なる平和』のため。国王陛下、どうか、出入国審査の厳格化をご承認ください」


 俺は少しだけ悩んだが、エルディット・マーク2の意見を採用した。彼女の言う通りにしていれば、まず間違いはないだろうと思ったからだ。


 エルディット・マーク2は、高い知能と豊富な知識を持っており、あらゆる可能性を考慮して未来を推し量る、予測能力も備えている。『これはどうしたものだろう』と迷っている時間があるのなら、一度、エルディット・マーク2の思う通りにさせてみればいい。


 なあに、それで思ったような成果が出なかったら、すぐに出入国の審査を今まで通りの形に戻すだけのことだ。


 そして俺は、すぐさま、どこの国よりも厳格な出入国管理局を作った。


 当たり前のことだが、外国への人の行き来が減ったことで、貿易総額は大幅に下がった。だが、他国との貿易が自由にできなくなった分、国内の産業が発展し、経済的にはむしろ豊かになったくらいだった。


 エルディット・マーク2は、きっとこの結果を最初から予測していたのだろう。さすがは機械の頭脳だ。人間のとろくさい頭とは、根本的に出来が違う。


 出入国の厳格化により、アデライド王国の治安は、より完璧なものになった。


 外国から入って来るのは、素行、身分共に、わずかの問題もない、善良な者のみ。厳重な検疫制度により、未知の病原体が侵入することも、まずない。


 事実、出入国の審査を厳格化してから、外国人の犯罪者は一人も出ていない。これまで、何年かに一度は、外国から入って来た『はやり病』で人々が苦しむことがあったが、今はそれもない。


 素晴らしい。


 本当に、素晴らしい。


 素晴らしい治安。

 素晴らしい環境。

 素晴らしい経済。


 アデライド王国は、エルディット・マーク2という完璧なる守護者のおかげで、着実に理想国家へと近づいている。俺は喜び勇んで、エルディット・マーク2をねぎらった。


「見事だ、エルディット・マーク2。お前の言う通りにして本当に良かったよ。世界中探しても、我がアデライド王国ほど繁栄し、それでいて平和な国は存在しない。何もかもお前のおかげだ。お前がアデライド王国に『完璧なる平和』をもたらしたのだ」


 しかしエルディット・マーク2は、喜ぶこともなく、いつもと変わらぬ機械的な微笑を浮かべ、いつもと変わらぬ機械的な声で、滔々と語り始めた。


「いいえ、国王陛下。確かにアデライド王国は、以前よりかなり平和になりました。しかし、まだ完璧とは言えません。これほど厳しい管理をしているのにもかかわらず、犯罪率がゼロにならないのです」


「なに? そうなのか?」


「前にも述べましたが、私の聖なる力により、殺人や強盗のような凶悪犯罪は皆無になりました。出入国審査厳格化により、外国人の軽犯罪も、ゼロになりました。しかし、アデライド王国の国民による軽犯罪が、ゼロになっていません。窃盗や暴行などの軽微な犯罪が、週に一度は起こっています。これは由々しき問題です」


「窃盗や暴行と言っても、子供が万引きをしたり、酔っ払い同士が喧嘩をする程度の話だろう? そんなもの、犯罪のうちに……」

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