Rock ‘n’ Roll Suicide
翌日、学校へ行くといじめグループは教室にいなかった。
昨日、教頭先生はああ言ったけど担任の言動で教師を信用していなかった僕は半信半疑だったから学校がこんなに早く動くのかと驚いた。
このころの学校はいじめが問題になってはいたが、対応ははっきり言ってお粗末だった。だからこの対応は異例だったと思う。
ホームルームの時間になったら担任ではなく教頭先生が入ってきた。
教頭先生からこのクラスでいじめがあり僕が被害者であること。僕と両親から話しを聞き、今いじめを行った者たちから話しを聞いていること。必要に応じてこのクラスの生徒からも聞き取りがあること。きちんと問題を解決、処分を行うこと。担任はその問題を放置悪化させたことにより解決まで謹慎していること。僕がいかがわしいところへ出入りしている噂は真実ではないことを説明した。
教室は音一つなく静まり返った。
静かにしてれば自分には関係ないと思っているんだろうなとぼんやり思った。
どうでもいい。所詮『同じ教室にいるだけの人たち』だ、自分には関係ない。
そう思えるようになったのは学校以外に居場所が出来たからだろう。
いじめグループは三時限目の途中で教室に戻ってきた。
3人のうち2人はこっちを見ないようにしていたけど1人だけ僕を睨みつけてきた。
少し怖いと思った。けどそれ以上に面倒だなと冷めている自分がいて驚いた。
何か言ってくるのかと思ったけど、結局何事もなく放課後になった。
僕はいつものスタジオへ向かって歩いていく。
途中人気のない公園を抜けようとしているとき、後ろからの足音に気づいて振り向いた。
僕を睨みつけていたいじめグループの一人がこっちに向かって走ってくる。
手にナイフを持って。
「えっ・・・」
固まって動けない僕にそいつが叫ぶ。
「ふざけんな、おめぇ!」
近づくナイフから目が離せない。でも、動けない。頭が真っ白になる。
バコォッ
ナイフがそいつごと真横に吹っ飛んで行った。
「よぉ、少年。危なかったな?」
こんなデカくて黒ずくめの目立つ人がどこに隠れてたのか。佑二さんが横から蹴り飛ばしたらしい。
「そこのお店に行って警察呼んでくれる?」
ナイフを遠くに蹴飛ばしそいつを取り押さえながら、場違いなくらい穏やかに佑二さんが言った。
そいつは何かを叫んでいたけど良く覚えていない。耳元で佑二さんが何か言ったら黙ったけど。
「大事になっちまったなぁ」
あれから一週間後、スタジオで会った佑二さんは煙草をふかしながらつぶやいた。
あの後警察が来ていじめグループの一人を引き渡した。僕も佑二さんも警察署に連れていかれた。パトカーに初めて乗ったけど少しカッコいいと思ったのは内緒だ。
警察の人にいじめのところから事情を説明していると両親が来た。母さんが泣きながら抱き着いてきた。父さんは佑二さんに何度も頭を下げてお礼を言っていた。
教頭先生も駆けつけて両親に再度謝罪、佑二さんにお礼を言ってから警察の人に連れられて別室へ行ってしまった。あいつの親が来ていたかどうかは分からなかった。
佑二さんによるとあの日スタジオに向かう途中公園でタバコを吸っていたら、たまたま僕を見かけた。話しかけようと近づいたら僕の後ろからナイフを持ったヤツが走ってきたから蹴とばしたと警察で話したという。
たまたま?あの公園は佑二さんの家と反対方向だけど?
そんなことを佑二さんに言うと
「なんかさぁ、嫌な予感ってのはあるもんなんだよ」
って笑ってた。偶然じゃないじゃん。この人はそういう人だ。
「学校はどうなった?」
佑二さんが続けて尋ねる。
「ん~、意外と何もないと言うか。あいつは来てないし、とりあえずいじめはなくなったし、平和です」
「そか」
佑二さんはそれ以上聞かなかった。
煙草の煙がゆれていた。
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