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あの日、僕はrock 'n' rollに出会った  作者: 銀色商会
出会いは風の中

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7/7

情熱の薔薇

「やっぱり、寒いな」

昔のことを思い出しながらライブハウスへ向かう。

あの後、担任は戻ってこなかった。警察が入る事態にまでなったのだから仕方ないだろう。

どこか別の学校に異動になったが教師を辞めたらしいと噂だけ聞いた。

ナイフで刺そうとした奴も学校に戻ってこなかった。

少年院にはいかなかったようだが、転校したのかどうなったのか。

両親には説明があったみたいだが聞いてない。僕は将来を考えられるようになったから。

佑二さんは年明けライブでボーカルを他の人にしてギターに専念すると宣言。

その後のライブで佑二さんのバンドはもっとカッコよくなってたから正解だったんだと思う。


僕が高校生になってギターを弾き始めたあたりで佑二さんのバンドはプロになった。

いつものスタジオに行っても会えなくなって寂しくなった。ギターも教えて欲しかったけど、佑二さんたちの成功のためだと思って我慢した。


そんなある日、家に帰ると父さんが楽しそうに電話していた。誰かなと思ったら佑二さんだった。実は父さんとたまに飲みに行ってたらしい。なんじゃそりゃ?少々嫉妬しながら二人に文句を言った。成人してからは僕も混ぜてもらったけど。


僕もバンドはやったけど佑二さんたちみたいにプロ志向ではなく、楽しみ優先でやった。メンバーは変わったけど、今も数か月に一度はスタジオに入っている。

大学を出て社会人になり、結婚して子供もいるとなかなかしょっちゅうスタジオ入りはできない。でも、バンドメンバーの事情に合わせてまったり活動できるウチのバンドを気に入っている。


佑二さんはソロ活動したりしているが、基本はあのバンドメンバーのままだ。

そこにサポートメンバーを入れてる。

要求水準が高いのかサポートメンバーは長く続かない。新しいギターの人は「少年」と呼ばれている。なんとなく長くなりそうな気がする。

昔からのメンバーと会うこともあるけど、あのころと変わらない距離感がうれしい。


いつもの階段をおりてライブハウスの扉を開ける。

入り口でチケットのモギリをやってる店員さんが話しかけてくる。

「あ、達也さん。オーナーとあの人は奥にいますよ」

佑二さんがこのライブハウスに顔を出すのはファンの間で有名だ。

気を使って「あの人」なんだろう。


バーカウンターでビールを注文する。

「今日もがっちり飲んでってくださいね」

カウンターの店員さんが笑っている。ライブハウスの経営は厳しい。

常連は少しだけ多めにドリンクを注文する。僅かだけかもしれないが、そうやって自分たちの居場所を支えてきた。他のライブハウスではドリンクの注文も減ってきてるらしいが、ここはなんとなくそんな文化が残っている。


ビールを受け取り奥へ向かう。

「よぉ、達也」

佑二さんが片手をあげる。奥には昔よりカッコよくなった佑二さんと何歳になったんだかさっぱりわからん妖怪のようなオーナー、そして佑二さんのサポートメンバーの「少年」がいた。

「お、少年も来たんだね」

僕がそう言うと

「僕はいったいいつまで少年と呼ばれるんでしょう?」

と困った顔をしていた。

「さてねぇ、僕は20年呼ばれてたよ。佑二さんに20年たって名前で呼ばれたときは吃驚したよ。僕の本名を覚えてたのかって」

笑って答えるとショックを受けてた。

佑二さんが続く。

「大丈夫、少年の名前もまだ覚えてる」

何のフォローにもなってない。この人はこういう人だ。

「まぁいいじゃねぇか。とりあえず乾杯しよう」

マスターも相変わらずヒドイ。

「「「「乾杯」」」」

あぁ、やっぱりここは僕の居場所なんだなぁ。

30年前のあの日。

僕はデカくて黒ずくめの男の形をしたrock ‘n’ rollに出会ったんだ。

これで完結です。

いかがでしたでしょうか?


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また次のお話しでお会いしましょう。

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