謎のマスクマン、登場
「こんなん〇ン毛も生えてないガキが見るもんだろ。なんでボーボーの俺ちゃんが……」
ぼやく一坂をよそにイベント会場は大熱狂だった。
『セーラセイラアアァァァ――――――――――――――――――――――――――ッ!』
空を貫くような、気持ちの良いシャウトと共にヒーロー&ヒロインたちが登場。
四角いステージの中で飛んだり跳ねたりの大活躍を披露する。
設置されたパイプ椅子から熱い声援を送るロリたちと、家族サービス大好きおじさん達がしきりに連続シャッターを切った。
その中で一坂たち三人は最後列の席に並んで座っていた。
しこたま買い込んだ屋台ものを平らげたミカンは元気爆発。
大はしゃぎで熱気に混ざっている。
『セーラー・ペガサスセイラがピンチ! よいこのみんな、大きな声でセイラを応援して! せーの……』
「「「「「せいらがんばって――――っ!」」」」」
固唾を呑んで展開を見守っていたロリ達と一緒にミカンも声援を送る。
その口元に付いたたこ焼きのソースを詩織がハンカチで丁寧にふき取った。
興行は大盛況のうちに幕を閉じた。
未だファンたちの熱気は冷めず、鼻息荒く出演陣との写真撮影の列に並んでいく。
「お前も山田さんと写真撮りたいだろ?」
謎のマスクマンがミカンに言った。
顔全体を覆う赤いマスクは、セイラショーの後に始まったヒーローショー『仮面ライガー』に登場した主人公の山田が装着していた変身アイテムのDX版だ。
「撮りたいだろう?」
二度も言った。
マスクの角がクルクル回る。
「いくー」
「うおおおおおおっしゃああああああああッ! それなら仕方なああああ――ーい!」
正体不明のマスクマンはミカンと一緒に写真撮影の列に突撃した。
「誰だあいつは?(ゴミ袋の封を縛る詩織)」




