だから目を離すなとあれほど・・・
ほどなくして写真撮影が完了した。
一坂かもしれない謎のマスクマンは、ほくほく顔で使い捨てカメラをしめしめとスタンバっていた現像屋に渡した。
もう財布は逆さに振っても何も出ないが、推しのためなら出費は惜しまない。
ファンの鏡だった。
「そういやあいつは……?」
山田と熱い握手を交わした手にニヤついていた謎のマスクマンは、自らマスクを脱いでその正体を晒し、すっかりその存在を忘れていたミカンを探した。
「あれは……」
ミカンは山田の隣にいる敵役の怪獣と向かい合っていた。
その手がゆっくりと伸ばされる。
「――――――っ」
一坂の心臓が跳ね上がった。
彼女が一体何をしようとしているのかを瞬間的に察する。
「イタイ……?」
ミカンの細い指が、試合中に負った怪獣の腕の怪我に優しく触れた。
そして豆電球ほどの小さな光を放った後、指が離れる。
「What……? Ohっ!? Illusion? Not……revolutionっ!」
頭の弱そうな怪獣は傷が一瞬で消えたことに驚きの声を上げた。
ニッコリと微笑むミカン。
(なにやってんだ――――――――――っ!?)
一坂の体中の血が、ワッと湧いた。
怪獣は自身に起こった不思議体験に困惑し、その張った声が周囲の注目を集め始める。
(やばい! どうする!? なんとか、誤魔化す、言葉………)
焦りで思考が混乱し、全身に嫌な汗が吹き出した。
そうこうしている間に人が集まりだした。
一坂は考えが定まらないまま、とりあえず走り出す。
人混みをかき分け、怪獣とミカンの間に体ごと強引に割り込んだ。
「今のはあれがああなってああなんで、あっしらはここいらでドロンさせていただきやすっ!」
狼狽しながら印を切って捲し立てると、ミカンを小脇に抱えて遁走した。




