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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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魔王の超高速逃避行と、星を揺るがす愛の捕縛

叩き上げ自衛官の極秘サバイバル 

深夜の宇宙空間。神聖シャルロット帝国の首都星『星系シャルロット』の影から、一台の、極限まで無駄を削ぎ落としたフォルムの宇宙船が、音もなく滑り出していった。 

それは新帝国のどのデータバンクにも登録されていない、完全なる幽霊船。そして、そのコックピットで操縦桿を握っているのは、他でもない帝国の最高権力者たる魔王・太郎、その人であった。


「さんぼう……本当に、本当に逃げ出せちゃうの? ぼく、おねえちゃんたちに見つかったら、今度こそバラバラの塵にされちゃうよぅ……」 

助手席で、11歳になった人族の男の子、レオが短い足をガタガタと震わせながら、泣きそうな顔で太郎を見上げていた。


「安心しろ、レオ。俺はただ無計画に飛び出したわけじゃない。これでも、地球の自衛隊で叩き上げられて士官にまで上り詰めた男だ。相手のスペックが宇宙規模で悪すぎるだけで、普通の戦場なら俺はここまで追い込まれんさ」 41歳(肉体年齢20歳)になった太郎は、若返った鋭い横顔に、かつてないほど冷徹な「サバイバル参謀」としての光を宿していた。 


太郎がこれまで逃亡を諦めていた最大の原因。それは、シャルロット姫様と【魂のレベルで深く繋がってしまっている】という一点だった。 


本来、この魂の絆というものは、お互いのいる「大体の方向と距離」が微かに分かる程度の神秘現象のはずだった。

しかし、無敵の破壊神であるシャルロット姫様にいたっては、その規格外の感知能力により、太郎の居場所を『センチメートル単位の超精密さ』で完全に把握してしまうのだ。 

しかも、究極の宇宙戦略兵器として創造された彼女は、宇宙空間を生身で弾道飛行する自力移動手段すら持っている。

ただ幸いなことに、その移動スピードは「高速駆逐艦並み」。彼女の他の理不尽な神の能力に比べれば、まだしも【常識の範囲内(時速数万キロ程度)】に留まっていた。

「だからこそ、この船を半年かけて作ったのさ。

あの強化施術の初日、超人化したはずの俺が一瞬で紙細工のように粉砕された夜……俺は本気で悟った。

このままここにいたら、子宝を授かる前に愛の質量で殺される、とな」 

太郎は不敵に笑った。 

あの日から、大商会長(宰相)や医療班、そして二人の最強ワイフの目を完全に盗み、戦艦の予備ドックの資材を少しずつ横流しして、半年間で極秘裏に完成させた完全ワンオフの【超高速偵察艇】。

 

「この船の最高出力なら、姫様の追跡速度を遥かに凌駕する。

追いつかれることは絶対にない。

俺はこの時間を利用して、魂の絆の電波すら届かない、宇宙の最果ての『未開の世界』へ逃げ延びる。

……悪いが、付き合ってもらうぞ、レオ。お前は姫様の甥だが人族だ。姫の唯一の良心の盾(肉壁)としてな」


「やっぱりぼく、盾じゃんかぁーーーっっ!!」 レオの悲鳴を乗せ、超高速船は空間を激しく歪めながら、光を超える超加速で宇宙の闇へと消え去っていった。


化け物たちの真の覚醒 一方、星系シャルロットの最高宮殿。 太郎が忽然と姿を消し、それが「周替わりスケジュール」の板挟みに耐えかねた命がけの逃亡であると発覚した瞬間、王宮は凍りついた。


「……太郎様が、いらっしゃらない。私の魂のレーダーの先、すっごく遠いところで、ものすごいスピードで遠ざかっていますわ……」 最初に太郎の失踪を察知したシャルロット姫様は、怒るよりも先に、大粒の涙をポロポロと流してその場にへたり込んでしまった。

18歳の破壊神の心は、最愛の旦那様に逃げられたという絶望で完全にへし折られていた。

「私のせいですわ……。私がまた我慢できなくて、太郎様の腰の骨をバラバラにしてしまったから……。太郎様に嫌われてしまったんだわ……う、うわぁぁん!」 シーツを被って王宮の床で泣きじゃくるシャルロット。


周囲のゴブリンや日本の官僚たちが「どうしよう、姫様が絶望のあまり星を破壊するぞ!」と青ざめる中、その生温かい空気の風向きを、一瞬で変えた人物がいた。


「――何をボケていらっしゃいますの、シャルロットッ!!!」 バンッッ!!!と、パワードスーツを換装したアリスお嬢様が、怒りのままに床を蹴り上げてシャルロットの前に立ちはだかった。ふさふさの猫耳を限界まで逆立て、尻尾を鞭のように激しくしならせている。

「アリス……? あなた、私が悲しんでいるのに、なんて無礼な……」


「無礼なのはどちらですか! 私たちが毎晩激しすぎて太郎様を追い詰めたのは、認めますわ! 悪かったと思っていますわよ! ――ですが! だからと言って、私たちをここまで本気にさせて、骨抜きにしておいて、今更一人で地の果てまで逃げ出すなんて、太郎様も激しく悪うございますわよ!!」 アリスはお嬢様らしい気品を完全にかなぐり捨て、怒気を含んだ極上の正論をぶちまけた。


「私は、今更太郎様のいない人生なんて、絶対に認めませんわ! 逃げるというのなら、地の果て、宇宙の最果て、次元の壁の向こうまで追いかけて、私たちが如何に太郎様のことを狂おしいほどに好きなのか、その身にたっぷりと、嫌というほど思い知らせてご覧に入れますわよ! シャルロット! あなたの太郎様に対する気持ちは、旦那様に逃げられたくらいで床でシーツを被ってシクシク泣く程度の、そんな生ぬるいものですの!?」「――っ!?」 アリスの強烈な一喝に、シャルロットの瞳の奥で、眠っていた『本物の怪物の火種』が、パチパチと音を立てて爆発した。 


泣き顔が、一瞬で消える。 みるみるうちにシャルロットの顔が真っ赤な戦意の色に染まり、その顔が、全宇宙の神々を震え上がらせるような、極めて【好戦的】な破壊神の笑みへと変わっていった。

……よく言いましたわ、泥棒猫(アリス)。ええ、その通りですわね。


私の太郎様への愛は、宇宙が何百回ビッグバンを起こそうとも揺るがない、絶対のものですわ……。

逃げるなんて、お仕置きが必要ですわね……❤

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!! 二人の化け物が、本当の意味で「同時に覚醒」した瞬間だった。 シャルロットから溢れ出す禍々しい黄金の神の魔力と、アリスお嬢様のパワードスーツから放たれる数百年の眠りから覚めた先祖返りの闘気が、最悪の形で共鳴(シンクロ)を始める。 二人の足元から放たれた規格外の力の奔流は、最高宮殿を激震に包み込むに留まらず、なんと『首都星シャルロットの惑星地殻』そのものにダイレクトに影響を及ぼし始めたのだ。


『緊急事態! 帝星全域でマグニチュード8クラスの大規模な地震が同時多発的に発生! 大陸プレートが歪んでいます! このままだと星が内側から崩壊するギギッ!!』 ゴブリンのオペレーターたちの悲鳴が響く。

「ひ、ひぇぇぇーーーっ!! アリス、シャルロット様! 頼むから暴走するなら宇宙(外)でやってくれ! ワシの星が、ワシの全財産が割れてしまうがな!!」 未来の帝国宰相である大商会長は、愛娘たちの見たこともない桁違いの恐怖の力の前に、腰を抜かしながら叫んだ。

星の崩壊を防ぐため、彼は必死の形相で二人を宇宙へと押し出す。

「今すぐ行きなさい! 二人で協力して、太郎殿を連れ戻してくるんだ! この星から早く離れてくれぇぇ!!」


「「ええ、行ってきますわ(お父様)!!」」 

ドンッッッ!!!!!!! 二大超人が同時に虚空を蹴り上げた瞬間、首都星の全大気に激震が走り、二人の影は光速の壁を紙切れのように突き破って宇宙空間へと躍り出た。 


太郎は計算違いをしていた。シャルロット単体の移動速度は高速駆逐艦並みかもしれない。だが、「破壊神の無限の魔力」と「ケット・シー王族の完全体の超運動空間把握能力」が、太郎への独占欲の元で完全に一つに融合した時、彼女たちが叩き出した移動スピードは、太郎の想像を絶する、宇宙の物理法則そのものを嘲笑うレベルの超・超高神速へと到達していたのだ。


エアーロックの選択、魔王の覚悟

「――よし、レオ。このまま第4跳躍ポイントを通過すれば、魂の絆の範囲外だ。俺たちの勝ち――」 

太郎が、操縦席で安堵の笑みを浮かべた、まさにその瞬間だった。 ドッ、ガシャァァァァァン!!!!!! 何の前触れもなく、太郎の超高速船の船尾から、絶望的な爆発音とアラートが響き渡った。


『警告! 警告! 後部メインエンジン、および予備の超光速駆動機関が、外部からの【素手による打撃】によって完全大破! 本船は全出力を喪失しました』

「な……に……っ!?」 太郎は戦慄し、コンソールにしがみついた。計器のバックモニター映像が映し出したのは、信じられない光景だった。 光速を超えて宇宙の最果てへ突き進んでいたはずの船の真後ろに、全裸シーツスタイルのシャルロット姫と、対破壊神パワードスーツを真っ赤に輝かせたアリスお嬢様が、ピッタリと並んで宇宙空間を並走していたのである。一瞬。本当に、一瞬で追いつかれたのだ。 


二人は、超高速船のコックピットのガラスのすぐ目の前まで回り込むと、宇宙空間であるにもかかわらず、その精神感応魔力によって、太郎の脳内へ直接「冷酷極まる声音」を響かせてきた。


『――太郎様❤ 楽しいドライブは、ここまでですわ』

『さあ、選択してくださいませ、太郎様。自分たちの手で大人しく

【エアーロックを開ける】か、それとも、私たちがこの船の装甲をごと【粉々に叩き割って】中に入るか……どちらがよろしいかしら?❤』 

画面の向こうの二人の目は、完全に据わっていた。 

いつもの日常のキャットファイトでの甘えや拗ねではない。自分たちを置いて逃げようとした太郎に対する、ガチの、本気の、冷酷な執念の眼光。 

太郎は自衛官としてのすべての経験から察知した。ここでエアーロックを開けなければ、彼女たちは本当にこの船を宇宙の塵に変え、自分とレオを強引につまみ出すだろう、と。

「……さんぼう……ぼく、もうだめだ……お星様になっちゃう……」 泡を吹いて気絶しかけているレオを見て、太郎は深く、静かに覚悟を決めた。


「……レオ。お前はよくやった。ここからは、大人の、仕事だ」 


太郎は、助手席のレオを抱え上げると、船内の奥にある小さな隔離式の【緊急救難ボート】の中へと強引に押し込み、内側からロックをかけた。

「いいか、レオ。何があってもここから出るな。俺が二人を食い止める」


「さんぼう!? 嫌だ、さんぼうを見捨てるなんて――」

「これは命令だ。お前は生き延びろ。自衛隊のレンジャーの生き残りとしてな」 太郎はボートのハッチを閉めると、コックピットへと戻り、意を決してコントロールレバーを引いた。 プシューーーッ……。 重厚なエアーロックの隔壁が開き、外の宇宙空間の絶対零度の空気(魔力障壁)と共に、無表情のまま、一糸まとわぬシャルロットと、ボロボロのパワードスーツを纏ったアリスの二人が、音もなく船内へと足を踏み入れてきた。 太郎は、若返った緋緋色金合金の身体を真っ直ぐに張り、二人の怪物の前に立ちはだかった。


自分の死は、もう免れないかもしれない。だが、せめて、レオの命だけは守り抜く。魔王としての、そして41歳の男としての、最後の意地だった。

 

静寂の広がる船内で、太郎は二人の接近をじっと待った。 

二人は無言のまま、ゆっくりと、太郎との距離を詰めていく。シャルロットの手が、アリスの細腕が、自分の胸元へと伸びてくる。

(来るか……! 引き裂かれるか、あるいは粉々に潰されるか……!)

太郎がぎゅっと目を閉じ、全身の合金骨格に力を込めて衝撃に備えた――その瞬間。 

ぎゅうぅぅぅ……。「……え?」 太郎の身体を包み込んだのは、肉体を破壊する暴力の衝撃ではなく、驚くほど優しく、そして必死に縋り付いてくるような、二人の少女の「温もり」だった。 

シャルロットが太郎の右腕に、アリスが左腕に、まるで世界にそれしかすがるものが無いかのように、全力で頭を擦り付け、しがみついていたのだ。「う……うわぁぁぁーーーーーーんっっ!!! 太郎様ぁぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ!!」 次の瞬間、船内に響き渡ったのは、破壊神たちの狂気的な咆哮ではなく、幼い子供のような、激しい【号泣の声】だった。


「嫌わないでください、太郎様ぁ! 私が毎晩激しすぎて、太郎様を痛い目にばかりあわせてしまったから、逃げ出されてしまったのですね……っ! 私、本当に反省しています、もう絶対に無茶はしませんから、私を置いていかないでくださいましぃぃ!」 

シャルロットが、太郎の式典服の胸元に顔を埋めて、子供のようにワンワンと泣きじゃくる。


「私だって……私だって、太郎が大好きだから、もっと私のことを見て欲しくて、マウントなんて意地悪なことをしてしまいましたわ……っ! 太郎のいない世界なんて、この帝国の栄華なんて、私にとっては一銭の価値もありませんのよ……っ! う、うわぁぁん!」 

アリスお嬢様もまた、パワードスーツのヘッドギアを脱ぎ捨て、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、太郎の腰にしがみついて咽び泣いていた。 あまりの落差に、太郎は呆然と立ち尽くすしかなかった。 


宇宙を滅ぼせる二大超人が、今、自分の足元で、ただの「大好きな人に嫌われたくない18歳の女の子」として、プライドも何もかもを捨てて泣き叫んでいるのだ。


「太郎様……もし、どうしても私たちのことが嫌いになって、もう顔も見たくないというのなら……いっそ、太郎様の手で、私たちを殺してくださいまし……っ」 

シャルロットが、涙に濡れた大きな瞳で太郎を見上げた。


「そうですわ……。私たちの防御力は、太郎様の攻撃では、私たちは絶対に傷つきもしませんし、死ぬこともできません。……だから、あなたのそのお口で、命令してください。【死ね】と。

太郎の命令なら、私たちは自らの魔力を暴走させて、あなたのために、今すぐここで喜んで命を絶ってみせますわ……っ!」 アリスもまた、真剣な、一切の偽りのない目で、自らの生殺与奪の権を太郎へと差し出してきた。 あなたのいない世界で生きるくらいなら、あなたのために死ぬ。 世界中を敵に回し、全宇宙を恐怖させた二人の怪物の、これが、太郎というたった一人の人間に対する、あまりにも純粋で、あまりにも重すぎる「愛の本質」だった。


「……お前たち……」 ここまで言われて、41歳になった叩き上げの元自衛官の胸の奥で、何かが完全に決壊した。 自分は地球にいた頃、結婚もせず、子供も作らず、ただ国を守るための任務に明け暮れていた。

もし、あのまま地球で普通の人生を歩んでいたら、ちょうどこの子たち(18歳)くらいの、手のかかる、しかし愛おしい娘がいたかもしれない――。 


太郎の心の中に、これまでの寝室地獄への恐怖を遥かに超越した、不器用で、深い【父親としての父性】が、どろりと持ち上がってきた。

「……悪かったよ、二人とも。俺の方こそ、お前たちの気持ちから、ただ怖くて逃げ出すなんて……魔王としても、男としても、情けないことをした」 太郎は優しく腕を動かし、右側の破壊神と、左側の猫耳お嬢様の頭を、同時に、包み込むようにぎゅっと抱きしめた。「俺もお前たちのことが大好きだよ。嫌いになるわけがないだろう? だから……もう死ぬなんて悲しいことは言うな。俺を置いて逝くな。

……これからも、ずっと一緒にいてくれ」


「「太郎様ぁぁぁーーーーーーっっ❤❤❤」」 

船内のコックピットで、三人でお互いを抱きしめ合いながら、一通り大粒の涙を流して泣き明かした。それは、出会ってから1年、様々な誤解と暴走を経て、三人の心が本当の意味で【一つに繋がった】、奇跡的な和解の瞬間であった。


寝室のICUでの大団円「……あの、さんぼう? もう、ボートから出ても、バラバラにされない?」 一連の号泣ドラマが落ち着いた頃、恐る恐る緊急ボートのハッチを開けて、レオが顔を出した。

「ああ、レオ。もう大丈夫だ。ほら、おねえちゃんたちに挨拶しろ」 太郎が苦笑しながら言うと、シャルロットとアリスは、まだ涙目のまま、レオに向けて「驚かせて悪かったね(私ですわ)」と、いつもの優しいお姉様たちの顔に戻って微笑んだ。


レオは「ふぇぇ……本当によかったぁ……」とその場にへたり込んだ。 


壊れた超高速船のエンジンを直すのは面倒ということで、帰路は、シャルロットとアリスの二人が、超高速船の船首を【両手で抱える】という驚異の力技を採用。二人の限界突破した神速の魔力推進により、太郎たちの船は、文字通り「一瞬」で首都星『星系シャルロット』のドックへと連れ戻されることとなった。 


ドックでは、大商会長(宰相)をはじめ、地球の医師団、ゴブリン、エルフの全医療班が、首を長くして待っていた。

「全員、本当にすまなかった! 俺の個人的な我がままで、国家の最高幹部たちを混乱させてしまって……」 太郎を真ん中に二人を従えたまま、大商会長や日本の連絡官たちに向けて、深く頭を下げて謝罪した。


シャルロットとアリスも、太郎の隣で神妙な顔をして「ごめんなさい(いたしますわ)」と頭を下げる。

「いや、いいのですよ、太郎殿。星が割れずに済んだだけで、私は商人として大黒字です」 大商会長は、ノイローゼから回復したばかりの医療班たちと共に、どこか晴れやかな顔で笑っていた。二人の娘たちが太郎の元で完全に精神的に安定したのを見て、この帝国の未来が真の意味で盤石になったと、確信したからだ。 その夜。 王宮の最深部、あの壁一面にバイタルセンサーが埋め込まれ、廊下にゴブリンの医療班が24時間待機している、物々しすぎるハイテク魔導ICU(寝室)。 だが、今夜のその部屋には、かつてのような地獄の夜戦(デスゲーム)の気配は、微塵も存在しなかった。 大きなキングサイズのベッドの真ん中に、若返った超人・太郎が横たわっている。 その右側には、シーツを仲良く分け合い、太郎の右腕を嬉しそうに抱きしめてすやすやと眠るシャルロット姫様の姿。 そして左側には、ふさふさの猫耳をリラックスさせて、太郎の左腕に心地よさそうに頬を寄せているアリスお嬢様の姿。 周替わりのルールも、知略や物理のマウント合戦も、今夜はすべてお休みだった。


「……ふぅ。サバイバルの基本第一条は『逃げろ』だが……時には、逃げずに懐に飛び込むことが、最大の生存戦略になることもあるんだな……」 太郎は、両脇に眠る二人の最高のワイフたちの温もりと、規則正しい寝息を感じながら、静かに微笑んで天井を見上げた。 廊下のバイタルモニターの警告ランプは、今夜は一度も点滅することなく、穏やかな緑色の光を灯し続けている。 

全宇宙を支配する巨大帝国の最高権力者たち。 


一人の魔王と、二人の美しき超人ワイフによる、命がけで、そして世界で一番愛に満ち溢れた「新婚日常」の本当の幕開けは、ここから静かに、幸せに、始まっていくのである。

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