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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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魔王の演説、真の権力者

「集結した全艦艇、および地上部隊への音声・映像回線、接続完了しました」 ゴブリンの技術士官が鋭い声で告げる。ドワーフも「いつでもいけるぞ、大尉」とコンソールを叩いた。 

最新鋭戦艦の艦首甲板、そしてケットシーの星の巨大広場に集まった何万という兵士たちの前に、ホログラム映像として太郎の姿が投影された。

本来であれば、新国家『神聖シャルロット帝国』の頂点であり、無敵の破壊神であるシャルロット姫が演説を行うべき席だ。

しかし、カメラの前に立ったのは、どこにでもいるような、しかし冷徹な眼光を宿した中年の元自衛官だった。

シャルロットは、彼のすぐ斜め後ろで、誇らしげに胸を張って控えている。 

集まった多種族の兵士や、通信越しに見つめる各国の代表たちの間に、ざわつきが広がった。なぜ、あの化け物(破壊神)ではなく、ただの人間が前に出ているのか、と。 


太郎はゆっくりと口を開いた。その声は、拡声魔法と戦艦の通信システムを通じて、全宇宙の同盟軍へと響き渡る。


「我が『神聖シャルロット帝国』の軍勢に加わった諸君、歓迎する。


俺は当帝国の参謀、太郎だ」 太郎は一拍置き、集まった大群集を冷たく見下ろすように視線を走らせた。

「諸君の中には、我が帝国の象徴であるシャルロット姫の『破壊神』としての力に怯え、あるいはそれを利用して自身の目的適えようと目論んでいる者がいるはずだ。

ハッキリと言っておく。

その考えは捨てろ」 冷酷な言葉に、集結した艦隊の指揮官たちが息を呑んだ。

「シャルロット姫は無敵であり、不老不死の絶対者だ。

だが、彼女はその強大な力で世界を支配することにも、諸君らを導くことにも興味は無い。彼女がその引き金を引くのは、ただ一つ――この俺が命令した時だけだ」 太郎がそう断言した瞬間、彼の背後にいるシャルロット姫が、嬉しそうに、そして世界への慈悲など一滴も持ち合わせていない不敵な笑みを浮かべて、太郎の言葉に深く頷いた。

俺が右を向けと言えば、彼女は右の星系を灰にする。

俺が左の敵を殺せと言えば、彼女は左の神々を屠る。

諸君らが仕えるべきは、破壊神シャルロットではない。

その破壊神の支配者であり、同時にすべての破壊を決定する独裁者――この俺、

魔王・太郎だ。


俺に従う者には勝利と新たな世界の席を約束するが、もし俺の足元をすくおうとする者がいれば、諸君らの星ごと、彼女の炎で消滅させる 全軍が、圧倒的な恐怖の前に平伏した。 



新しく集まった各国の代表も、ゴブリンの兵士たちも、そして大商会の面々も、真の意味で理解したのだ。

この『神聖シャルロット帝国』における真の権力者、真の支配者が誰であるかを。 無敵の怪物を背後に従え、その絶対的な暴力を完全にコントロールしている中年の人間。彼こそが、この帝国の脳であり、全宇宙を統べるべき男なのだと。 


演説が終わり、通信が遮断されると、ブリッジの隅で見ていた大商会長が

「素晴らしい……やはり私の目に狂いはなかった」と狂喜の笑みを漏らし、アリスお嬢様は「太郎様ぁ……!」と完全にメロメロになっていた。

シャルロットは太郎の腕に嬉しそうに抱きつき、「最高の演説でしたわ、太郎様!」と頬を寄せた。 

太郎は冷徹な表情のまま、メインモニターの海図を切り替えさせた。 

その画面に映し出されたのは、次なる目的地。

「全軍、針路を固定。――虎の獣人星系へ向かう」 反破壊神同盟の主力の一角が待ち受ける、獰猛なる猛獣たちの領域。 

そこに潜む大艦隊との、神聖シャルロット帝国の初陣となる、宇宙の命運を賭けた大決戦の幕が、ついに上がろうとしていた。


恐怖の裏返しの牙 

漆黒の宇宙空間を、神聖シャルロット帝国の旗艦たる最新鋭戦艦、そして大商会の私設護衛艦やゴブリン星系の突撃艦からなる混成艦隊が、静かに、しかし圧倒的な威圧感を放ちながら進軍していた。 

目指す針路の先にあるのは、反破壊神同盟の最前線――『虎の獣人星系』である。


「さんぼう、モニターにたくさんの光が見えるよ。

……あれ、全部敵の船?」 ブリッジの床にちょこんと座り、レーダー画面を凝視していた10歳の男の子、レオが、緊張で声を震わせながら太郎を見上げた。


かつてシャルロット姫の理不尽な「甘え(肉体的アタック)」から太郎の命を守るための肉壁として連れ回されていた少年は、今やブリッジの緊迫した空気を肌で理解できるようになっていた。


ああ、そうだ、レオ坊ちゃん。

……数だけなら、こちらの約三倍といったところだな。

 四十歳の参謀・太郎は、感情の読めない冷徹な声で応じた。 

モニターに映し出されているのは、破壊神同盟が擁する大艦隊の陣形だった。

まともな軍事常識からすれば、三倍の戦力差がある陣地に正面から突入するのは自殺行為に等しい。

だが、太郎の顔に焦りの色は微塵もなかった。


……それにしても、敵の布陣、ひどく前がかりですわね。

防御を完全に放棄して、全艦が突撃体制に入っていますわ

太郎のすぐ傍らで、ふさふさとした猫耳をぴくぴくと動かしながら、アリスお嬢様が不可解そうに呟いた。

彼女の背後に控えるメイドたちも、データ端末を覗き込みながら怪訝な表情を浮かべている。


「それこそが、今回の奴らの『アキレス腱』さ」 太郎は冷たく言い放った。

自衛隊時代に叩き込まれたあらゆる戦術教本、そしてこの世界に来てから集めた情報のすべてが、敵の心理を完全に読み解いていた。 

反破壊神同盟において、この虎の獣人という種族は最も戦意が高いと恐れられていた。

だがその実態は、狂気的な「恐怖の裏返し」に過ぎない。 

かつて、シャルロット姫様が単身で彼らの母星に降臨した際、時の皇帝も含めて地上に展開していた虎獣人の主力部隊は、文字通り『壊滅的被害』を受けていたのだ。星の地表が消し飛び、誇り高き戦士たちが一瞬にして塵へと変えられた。生き残った彼らにとって、シャルロット姫という存在は、遺伝子レベルで刻まれた絶対的なトラウマであり、同時に、戦士としての誇りを完膚なきまでに踏みにじった仇敵だった。 彼らにとって、これ以上の我慢は不可能だった。

恐怖に震えて奴隷のように滅びるくらいなら、その恐怖を狂気的な怒りで塗り潰し、無謀であっても一矢報いるために突撃する。

それが、虎の獣人艦隊が防御を捨てて前がかりになっている理由だった。

来るぞ。


――敵艦隊、全艦加速。

こちらへ向けて全速力で突入してきます! ゴブリンの甲板士官が鋭く声を張り上げた。コンソールを担当するゴブリンのオペレーターも「チッ、本当に命が惜しくない特攻の構えじゃな!」と毒突く。


「……シャルロット」 

太郎は振り返り、自分の斜め後ろに静かに控えていた17歳の許嫁の名を呼んだ。 


衣服を破らんばかりの豊満な巨乳を誇るその少女は、無敵の破壊神としての冷酷なオーラを纏いながらも、太郎に名前を呼ばれた瞬間だけは、恋する普通の少女のような、とろけるような甘い微笑みを浮かべた。

「はい、旦那様。いつでも、あなたの命じるままに」

これより、お前に迎撃を命じる。


――全広域通信回線を開け。

敵味方、全宇宙の傍受回線も含めて、すべてのチャンネルに俺の声を乗せろ!


太郎の冷徹な指示に、ブリッジの全員が息を呑んだ。


魔王の命、破壊神の微笑み


「通信、全宇宙へ開かれました。……いつでもいけます、参謀」 

オペレーターを務めるゴブリン兵士が、緊張で緑色の肌を強張らせながら告げた。 太郎はマイクを掴み、全宇宙の通信回路に向けて、あえて感情を完全に削ぎ落とした「魔王」としての声を響かせた。

それは、味方である新帝国軍だけでなく、突撃してくる虎の獣人艦隊、そして彼らを裏で操る反破壊神同盟のすべてに筒抜けになる、絶対的な恐怖の宣告だった。


神聖シャルロット帝国全軍、および、突撃してくる哀れな獣たちに告ぐ。

――これより、我が帝国の絶対武力、シャルロット姫による迎撃を開始する 

太郎はモニターに映る敵影を見据えたまま、画面の向こうの敵を絶望させるための言葉を、意図的に紡ぎ出した。


シャルロットよ。敵対する艦隊、種族の『一番小さな船』をただ一隻だけ残し、他はすべて破壊せよ。――救難ボートも、武器を捨てて降伏を乞うた者も、一切見逃すな。徹底的に、一人残らず殺せ! 


その言葉が全宇宙に響き渡った瞬間、傍受していた周辺星系の国家代表たちは、恐怖のあまり椅子から転げ落ちた。日本政府の連絡官にいたっては、

通信越しに「狂っている……国際法も人道もあったものではない……!」と青ざめて絶叫していた。 

一番小さな船だけを生かして残す。その意味は、命を救うためではない。目の前で自国の大艦隊が跡形もなく消滅していく恐怖を、その目に焼き付けさせ、生きた伝書鳩として世界中に「恐怖」を伝播させるための、冷酷極まる見せしめ(プロパガンダ)だった。 


だが、その血も涙もない「魔王の命令」を聞いたシャルロット姫様は――。


「――っ……❤」 


信じられないことに、まるで見惚れるような、身の毛もよだつほどに美しく、蕩けるような極上の笑みを浮かべた。 

彼女にとって、世界の人道や法律など、ゴミ屑同然だった。

大好きな太郎様が、自分のために世界中の悪名を背負い、冷酷な魔王として自分に命令を下してくれている。

その事実そのものが、17歳の破壊神の歪んだ愛欲を、これ以上ないほどに刺激していたのだ。


「了解いたしました、私の素晴らしい旦那様(魔王様)。あなたの望む通り、あの哀れな虫ケラどもを、ただの一匹も残さず、徹底的に磨り潰して差し上げますわ」 シャルロットは恍惚とした表情で、自らの豊満な胸を抱きしめるように身悶えした。


しかし、彼女は出撃のためにブリッジのハッチへと向かう直前、ふと足を止め、いたずらっぽい、しかし確定的な「死刑宣告」の視線を太郎に向けた。


「――ですが、旦那様? 宇宙のゴミ掃除を頑張った後ですもの。

戻ってきましたら……う~~んと、私のことを愛してくださいね? 骨の髄まで、私でいっぱいにして差し上げますわ……❤」 


ゾクリ、と。

ブリッジの温度が数度下がったかのような錯覚を全員が覚えた。 

それは、実質的な太郎への「腹上死宣告」であった。世界中を恐怖に陥れる魔王の命令の対価は、四十歳の中年男性の肉体にはあまりにも重すぎる、破壊神の無制限な夜のスキンシップなのだ。


「……っ」 


シャルロットがブリッジを去り、専用の出撃ポッドへと向かった瞬間、太郎は手に持っていたマイクを落とし、通信を切ると同時に、崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

膝がガクガクと震え、冷や汗が滝のように流れ落ちる。全宇宙を脅かす魔王の仮面は剥がれ落ち、そこにはただ、夜の恐怖に怯える四十歳のおじさんの姿しかなかった。


「……あ、哀れな参謀殿じゃ。全宇宙を恐怖させておきながら、自分の寝室が一番のサバイバル地獄とはな……」 ドワーフの若いメカニック兼治療士が、心底気の毒そうな顔で首を振った。


だが、彼はすぐにプロとしての顔に戻り、ブリッジの通信機に向かって叫んだ。


「おい! ゴブリンの治療士8名、それにエルフの治療長! 突撃準備(蘇生準備)じゃ! 参謀殿の命の灯火が消えかける前に、あらゆる回復薬と蘇生魔法の術式をスタンバイさせておけ! 戻ってきた姫様の『愛』の暴走に耐えられる肉体を、今から作らねばならん!」

「ギギッ! 了解した! 最高の強壮剤と、細胞再生魔法を準備する!」 ゴブリンの治療士たちが、物々しい足取りで医療キットを抱えてブリッジへとなだれ込んできた。


太郎はもはや、彼らに担ぎ上げられるがまま、魂の抜けたような目で天井を見つめることしかできなかった。


魔王の不在、泥棒猫の暗躍

最新鋭戦艦の外では、全宇宙の歴史に刻まれるであろう絶望のショーが始まっていた。 

だが、その外の狂気とは裏腹に、戦艦のブリッジ、あるいは太郎のプライベートルームの周辺は、妙に甘ったるい空気が漂っていた。


「さあ、太郎様。ゴブリンたちの怪しげな薬ばかり飲んでは体に毒ですわ。

このケットシー特製の、滋養強壮に効くハーブティーを召し上がってくださいな」 

シャルロットが出撃し、寝室のベッドに半ば横たわるようにして体力を温存(戦々恐々)していた太郎の元へ、かいがいしくお茶を運んできたのは、アリスお嬢様だった。 彼女は、ライバルであるシャルロットがいないこの好機を、絶対に逃すまいと輝かせていた。


ふさふさとした尻尾をこれでもかと太郎の腕や足に絡ませ、まるで猫が自分の縄張りを主張するかのように、ぴったりと身体を寄せてくる。


あー、アリスお嬢様。ありがとう。

でも、そんなに近くに寄らなくても……

「何をおっしゃいますの! 私は太郎様の正式な『第二夫人候補』、そして現在は医療サポートの責任者ですわよ? 体調を崩されている旦那様のお世話をするのは当然のことですわ。

ほら、もっとこちらへ寄って……」 


アリスは、自身の細くしなやかな身体を太郎の胸元に擦り付けるようにして、クンクンと鼻を鳴らした。


「ふふん、これでよし……。あの傲慢なシャルロット様が戻ってきた時に、太郎様から私の『アリスの匂い』がプンプンしていれば、どんな顔をされるかしら……❤」


「アリス、それ、俺の命を縮める行為だって分かって言ってるか……?」 

太郎は引き攣った笑みを浮かべた。シャルロットが戻ってきた際、自分から他の女――それも「泥棒猫」と呼んで嫌悪しているアリスの匂いがすれば、どのような修羅場(あるいは、それを上書きするための過激な愛の暴走)が待っているか、想像するだけで胃に穴が空きそうだった。 


しかし、アリスのメイドたちもまた、「お嬢様、もっと大胆に行きなさいませ!」「太郎様の背中にも匂いをつけておくのです!」と、ブリッジの影から楽しげにヤジを飛ばしている。

彼女たちケットシーにとって、太郎はもはや、一族の未来を託すに足る、真に惚れ込んだ「最高の旦那様」なのだ。あの魔王放送での覚悟を見せられて、惚れない女はいない。それが、彼女たちの共通の認識だった。


「さんぼう、おねえちゃん、もう始めたみたいだよ」 部屋の扉の隙間から、レオが小さな頭を覗かせて外の戦況を伝えてくれた。


太郎はアリスを優しく引き剥がし、なんとか這い上がるようにしてブリッジのメインモニターの前に戻った。

アリスは不満げに頬を膨らませつつも、かいがいしく太郎の肩を揉みながら、その後に従った。


前進せぬ艦隊、戦後への布石 

メインモニターに映し出された光景は、まさに「神話」そのものだった。 宇宙空間に躍り出たシャルロット姫は、宇宙服すら着用していない。破壊神としての不可視の障壁を身に纏い、禍々しくも美しい黄金の魔力の翼を広げていた。 


対する虎の獣人艦隊は、数千隻の巨体が、狂気的な咆哮を上げるかのように、全門のプラズマ砲を斉射しながらシャルロット一人の身へと殺到していた。

空間を焼き尽くすほどの光条が彼女を飲み込む――。 だが、光が晴れた跡には衣類こそ消し飛んでいるが、素肌には少しの傷も汚れもついていない、退屈そうに欠伸を噛み殺すシャルロットの姿があった。

「――お労しい(かわいそう)な、哀れな獣たち」 

彼女が静かに片手を掲げると、その指先から、全宇宙の物理法則を無視した『滅びの業火』が放たれた。 

一筋の光炎が、突撃してきた敵の先遣艦隊に触れた瞬間、爆発すら起こさずに、数万トンの超合金の巨体が、一瞬にして消し炭(プラズマの塵)へと変わっていく。

連鎖する滅びの炎は、虎の獣人たちの誇り高き戦艦を、まるでおもちゃの家のように次々と飲み込み、消滅させていった。 


特筆すべきは、神聖シャルロット帝国の本隊――すなわち、太郎が指揮する最新鋭戦艦をはじめとする艦隊の動きだった。

「参謀殿、本当に前進しなくて良いんじゃな? 敵の側面は完全にガラ空き、今突撃すれば、我が艦隊の主砲で一網打尽にできるぞ!」 ドワーフのメカニックが、進言する。


エルフの護衛も、いつでも魔法障壁を展開できるよう身構えている。


「いや、このままでいい。全艦、現位置を維持。

敢えて太郎の戦艦を守る形で陣形を組み、前進は一切するな」 太郎は冷徹に命じた。 普通であれば、全軍で波状攻撃を仕掛けるのが軍事的な正解だ。

しかし、太郎が指示したのは「徹底的な静観」だった。

帝国軍の艦隊は、まるで観客席の特等席に陣取るかのように、シャルロット一人が敵の大艦隊を一方的に蹂躙し、大虐殺していく光景を、ただじっと見つめている。 これこそが、四十歳の元自衛官参謀が描いた、「戦後を見据えた生存戦略(サバイバル)」だった。 

もし、ここで新帝国軍の艦隊が共に戦い、普通に勝利してしまえば、世界は「新興勢力との戦争」としてこれを受け止めるだろう。

だが、そうではない。太郎が見せつけたいのは、「神聖シャルロット帝国に仇なす者は、たった一人の化け物によって、この宇宙から完全に消し去られる」という、絶対的な、言い訳の効かない恐怖の事実そのものだった。 

そして何より、その無敵の破壊神に「一番小さな船だけ残して、他はすべて殺せ」と命令を下し、彼女を完璧にコントロールしているのが、あの『魔王・太郎』という無名の人間であるという構造を、世界に、そして味方の多種族たちにも永遠に焼き付ける必要があった。 

味方の艦隊――ゴブリンの兵士たちや、周辺星系の指揮官たちは、モニターに映るシャルロットの圧倒的な破壊の光景と、それを腕を組んで冷たく見つめている太郎の横顔を交互に見比べ、全身を激しい戦慄で震わせていた。


(……これでいい) 太郎は心の中で呟いた。

(世界が俺を『魔王』として恐れれば恐れるほど、シャルロットへの非難は俺に集中する。

そして、俺が生きている限り、誰も彼女に手を出すことはできない。

俺が死んだ後も、この圧倒的な恐怖の神話が残っていれば、世界は彼女を恐れ敬い、決して独りぼっちにすることはない……) それは、世界を敵に回した、一人の男のあまりにも不器用で、壮大な未来への生き残りプランだった。


「――あ、あははは! 逃げなさい、逃げなさい! でも、その小さな一隻以外は、ぜーんぶ私の太郎様への『お土産(塵)』になりますのよ!」 モニターの向こうで、虎の獣人たちの断末魔の通信を浴びながら、シャルロットの狂気的な、しかし少女のように純粋な笑い声が宇宙に響き渡る。


救難ボートも、降伏信号を上げる戦艦も、太郎の命令通り、一切の見逃しなく光の中に消えていく。ただ一隻の、最も小さな駆逐艦だけが、恐怖に狂った乗組員を乗せて、命からがら逃げ惑う姿だけが残されていた。


「ひぇぇ……おねえちゃん、本当に怒らせたら怖いなぁ……」 レオが太郎の足にすがりつきながらガタガタと震えている。


アリスもまた、その圧倒的な武力には戦慄しつつも、太郎の横顔を見つめ、さらに強くその腕を抱きしめた。

「太郎様……。私はどこまでも、あなたという『魔王』の、最高の内助の功となって見せますわ」「……ああ。頼むよ、アリス。……それと、そろそろゴブリンの治療士たちを、俺の部屋の前に二重に配備しておいてくれ。


死線(寝室)が、すぐそこまで迫っている……」 宇宙を埋め尽くす滅びの光の中、四十歳の魔王は、次なる本当の死闘(スキンシップ)に向けて、深すぎる決意の溜め息を漏らすのだった。


(続く)

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