富士裾野の実証試験
自衛隊の衝撃
富士の裾野に広がる、陸上自衛隊の関東方面最大の演習場。
光学迷彩を解いて音もなく大地へとランディングした、ゴブリン特製の黒い宇宙戦艦の前には、防衛大臣の全権によって極秘裏に集結させられた、陸自の火力が臨戦態勢で待ち構えていた。
最新鋭の10式戦車の大隊、対戦車ミサイル中隊、そして完全武装の空挺団の精鋭たち。
一佐を筆頭に、情報畑の三等陸佐や技術研究官たちは、山田太郎一等陸尉(四十歳)の連れてきた130センチの少女が、本当に「戦略兵器レベルの生体核弾頭」なのか、冷徹な軍人の目で値踏みしていた。
「山田一尉。これが我が陸自の回答だ。
……あやつが本当に戦略兵器レベルの生物兵器だというなら、その実力をここで証明してもらう」
一佐の冷酷な大号令と共に、実証試験(総火力テスト)の火蓋が切って落とされた。
――ドゴォォォォォォォォォォォン!!!
演習場に、大気を引き裂くような凄まじい砲撃音が轟いた。10式戦車が一斉に放った、地球の現行兵器の最高峰たる【厚さ60㎝近い装甲板を撃ち抜くAPFSDS】の斉射。
さらに無数の対戦車ミサイル【APFSDS同様に厚さ一メートル近い装甲板を撃ち抜く】が、演習場の中央に立つシャルロット姫様に向かって一直線に殺到した。
当初、自衛隊員はシャルロットに向けて撃つのを躊躇う者が多かった、
何度も上官に確認を取る者が続出した、
まるで、ハリウッド映画のお姫様の様な見かけの子供に攻撃をする、
疑問を持つなと言う方がおかしい、
むしろ疑問なく攻撃を出来る者が居るならそいつは異常者であると断言できる。
予めそのことを予想していた一佐は攻撃担当の幹部に対して写真を見せながら、この姿は攻撃を躊躇わすための偽装である、諸君らも見たことあるだろう?未来からの殺人ロボットが大暴れするやつ?
話は理解できたが、これ程の戦力が必要か?
聞けば最初の一撃は受けてくれると言う、舐めているのか?10式の主砲を使わずとも同軸だけで方つきそうでないか。
大隊長は部下にどう説明して納得させられるかサッパリ分からなかった。
凄まじい爆炎と閃光が弾け、大気摩擦の熱と衝撃波によって、姫様のエプロンドレス(日本食の猛練習用)は一瞬にして綺麗さっぱり消し飛んだ。
だが、土煙の向こうから現れた、生まれたままの姿(真の naked スペック)となった彼女の白い肌には――傷一つ、赤み一つすらついていなかった。
「――太郎様直伝の、やりすぎない基準(壊さない加減)、いきますわ!」 姫様は、太郎から教え込まれた『山田家の第一規律(物を壊したらチュウが減る)』を脳内に滾らせ、しかし自衛隊の攻撃を「太郎様をいじめる悪いオモチャ」と判断。
風を切る音すら置き去りにする精密無比な高速移動で、
10式戦車の大隊へと突撃した。
あまりの速さとトリッキーな動きの前に、10式の誇る火器管制装置、現代の戦闘ヘリですら捉え続けるそれが彼女を見逃した!
戦車隊にパニックが広がった、
対戦車ヘリですら見逃さない自慢のFCS(火器管制装置)が全く捉えられないのだ、
中には肉眼で捉えようとした者も居たが捉えた時は、砲身をたたき折ろうと一瞬停止した姿だった。
――バキィィィン!!!
戦車の砲身は、生半可な力では曲がらない。
だからこそ、姫様はその人外の腕力で、10式戦車の強固な防魔鋼鉄並みの砲身を、【まるで乾燥した小枝でもへし折るかのように、根元から一瞬で完璧に叩き折った】のだ。
さらに、標的として並べられていた『破棄戦車(退役した74式な戦車)』の前に立つと、愛らしい小さな右拳を「フンッ」と一閃。
――ズガァァァァァン!!!
凄まじい【グウパンの一撃)】を受けた数十トンの破棄戦車は、
爆発する暇すらなく、まるで蹴り飛ばされた空き缶のように破片をまき散らしなが吹き飛んでいき、一瞬でスクラップと化して消滅した。
口や手から放つ超高熱線(狙撃熱線)を出すまでもない、圧倒的なフィジカルの暴力。
最後に、演習地内の小高い丘(予め姫の放つ熱線の目標として指示されていた
(地球の常識人である彼らは当然信じていなかった、念の為測定機器は向けられていた)
予め太郎に言い含められていた通りに、全員の目が自分に向いたころ合いに、おもむろに手を目標に向け、敢えて人差し指を拳銃のように向けて撃つた、
眩い白なのか黒?なのか形容し難い光の線が丘と繋がったと見えた瞬間丘が大爆発した(この爆発は演習とは言い訳できず事故として苦しい言い訳になった)
「……ば、馬鹿な。旧式とはいえ74式戦車が、ただのパンチで……おもちゃのように……っ」
「あの威力はなんだ! 計器にはあの光線の反応がないぞ」
あの体で数十トンの戦車を叩き飛ばすなんて、物理的に有り得ない。
それを言うなら、あの光線もおかしすぎる、何であれだけのサイズの丘が綺麗に吹き飛ぶ、どう考えても可笑しいだろ?
モニターを見つめていた技術研究官たちは、計測器を放り出して頭を抱えてしまった。
一佐や空挺の精鋭たちも、現実の圧倒的な敗北を前にして、顔面を紙のように真っ白に変え、全身の毛を逆立てて硬直していた。
地球の近代兵器など、この少女の前にはただのおもちゃに過ぎなかったのだ。
衣服の無い姿のまま、太郎から貰ったジャケットを胸元に羽織り、「太郎様♡ 山田家の武力として、悪い戦車さんたちをお片付け(手加減付き)しておきましたわ!」と太郎に名前を呼ばれて「はぅあぁっ♡」と舞い上がっているシャルロット姫様。
一佐はガタガタと震える手で、太郎の肩を重々しく掴んだ。
山田一尉……。
お前、こんな怪物の隣りに居て怖くないのか?
どうやって制御出来ている
何よりも妻とは? なんだ!
まさか本当に妻なのか?
ご両親への挨拶も本気なのか?
洗脳とか脅されているのではないのか?
まさかとは思うが、夫婦生活も行っているのか?
怒涛のごとく、繰り返される?数々。
さしもの一佐も冷静さを失い早口でまくし立てる。
いやぁ、司令。実はね、向こうの世界で夜戦(実戦)をやる度に、俺、三日三晩生死の境を彷徨って完全に仮死状態になるんですよ。
だから今、その命を少しでも維持するために、ドワーフの回復薬と、後ろにいるアリスお嬢様たち総勢十数名の『専属医療班』を戦艦に乗せて、二十四時間体制で命を繋ぎ止めてるんです
「――――なっ」
その言葉を聞いた瞬間、一佐をはじめ、空挺団の精鋭たちの太郎を見る目が、完全に『神(異常者)』に対するそれへと変わった。
特に、自衛隊内で結婚し、【妻という名の家庭内の権力者(?)に日頃から頭の上がらない既婚者の幹部や隊員たち】ほど、その太郎の受けている「夜の地獄の所業」と、怪物の好意?を得るために自らの四十歳の肉体を毎夜毎夜生贄として捧げ続けている圧倒的な勇者振りに、魂の底から激しく感動し、畏怖の念を抱いていた。
山田一尉……。お前は色ボケなどでは断じてない。あのような怪物を『嫁』にしていること自体、あまりにも畏れ多く、恐ろしい偉業だ……っ! 日本の、いや地球の平和は、お前のそのボロボロに砕かれる腰骨と息子の上で辛うじて保たれていたのだな……っ! 心から敬意を表する!!
涙を流して、太郎への尊敬を無限大へと深める自衛隊の面々。
こうして、陸自の増強大隊級戦力が事実上完全降伏(心服)したことで、太郎の日本の実家のお嫁さん戸籍・身分偽装工作は、防衛大臣からの報告を受けた総理の決済の元に超法規的措置によって国家最高機密扱いで要領よく処理されることとなった。
京都の街頭と、猫耳のローキック(極秘デート編)
富士の実証試験を圧倒的すぎるパワー(破壊神)で終え、日本国のバックアップによって『日本国籍の身分証』を手に入れた山田太郎。
彼はタイムリミットまでの束の間の休息として、日本語を完全にマスターした新皇帝シャルロット、そして大商会令嬢アリスの美人二人を連れて、生まれ故郷である京都府の中京区の市街地へと、極秘の『日本デート』に繰り出していた。
「まぁ! 太郎様の故郷の『きょうと』、古いお建物が並んでいて、エルフの里みたいに綺麗ですわね!」「山田様、あそこの『くれーぷ』というお菓子、とっても美味しそうですわ! 私が奢って差し上げますわね、にゃん♡」
日本語でキャッキャウフフと太郎の左右の腕を取り、はち切れそうな巨乳の肉圧を交互に押し付けてくる二人の美女。
通行人の誰もが、130センチの可憐なロリ巨乳お姫様と、本物の猫耳をパタパタさせるアリスの姿に(物凄いハイクオリティなコスプレイヤーか……!?)と目を丸くして振り返っていた。
だが、そんな華やかなハーレム日常の最中、繁華街の裏路地から、酒の臭いを漂わせた地元のヤンキー(不良)の男たちが数人、下品なニヤニヤ笑いを浮かべて立ちはだかった。
おぅおぅ、おっちゃん。随分と極上の姉ちゃん二人も連れて、いい身分じゃねえか。
ちょっとその猫耳のネーチャン、俺たちと遊ぼうやぁ ヤンキーのリーダー格が、アリスの肩を掴もうと泥臭く手を伸ばした、その瞬間だった。
(あ、こいつら、終わったね) 太郎が「やれやれ」と肩をすくめたコンマ数秒後。
――ドゴォッ!!!
大気が爆発するような、尋常ではない鈍い衝撃音が裏路地に響き渡った。
動いたのは、アリスお嬢様だった。
彼女はケット・シー(超古代文明人の正統なる末裔)の種族。身長は小柄で温厚な種族だが、その基本身体スペックは人類の身体能力を遥かに凌駕する異世界人だ。 アリスはお嬢様らしからぬ、極めて迅速かつ容赦のない
【強烈なローキック(下段回し蹴り)】を、ヤンキーの太ももへと叩き込んだのだ。
地球のただの不良の肉体だ。地球人にとって、スーパーマンといってよい力をを持つアリスのローキックをまともに喰らい、ヤンキーのリーダーは「あ、ぎゃ、あがァァァ!!!」と、骨がへし折れるような凄まじい悲鳴を上げて、一撃で路地裏のコンクリートの上を何メートルも転がって悶絶・失神した。
あり得なかった、どう見ても七十キロ有る男を四十キロ有るか無いかの女の子が蹴り一つで何メートルも吹き飛ばしたのだ、
喧嘩慣れしたものほど、その異常性を理解し恐れた。
「なっ……な、なんだこの女のキック!? 車に跳ねられたみたいだぞ!?」 残りのヤンキーどもが恐怖で腰を抜かし、一瞬で蜘蛛の子を散らすようにして逃げ出していった。
アリスは衣服の乱れを上品に整えると、ふふんと猫耳を立てて笑った。
「フン、山田様の正妻(予定)のこの私に触ろうなんて、百年早いですわ! ね、山田様、私のこの完璧な護身術、素敵でしょう?♡」
「あ、はは……アリスお嬢様、ナイスローキック。地球人相手にはちょっと加減してあげてね……」 太郎は冷や汗を流しながら苦笑いした。
一方、この路地裏の喧嘩の一部始終を、一般人に扮装して遠巻きに監視・護衛していた、陸上自衛隊の『保安員(情報畑の私服隊員)』たちは、無線機を握りしめたまま、その場に完全に硬直していた。
気を取り直して、
すぐさま車を手配して蹴られたヤンキーの移送手配をすると、指揮所に連絡をする。
(……報告します。山田一尉の同行者、二番手の『猫耳の少女』ですら、生身のフィジカルで我が国の成人男性を一撃で戦闘不能にする、異常な身体能力を発揮しました。……信じられん、破壊神だけでなく、あの二番手の令嬢ですら、地球人の常識を遥かに凌駕する化け物だ。
……山田一尉、お前は毎日どんな魔境を生き抜いているんだ……!) 保安員たちは太郎の受けている「調教サバイバル」のあまりのレベルの違いに、魂の底から舌を巻いて震え上がるのだった。
日本の防衛中枢を完璧に心服させ、実家の両親への日本語での挨拶と、日本の街での三角関係極秘デートを要領よく(?)完了させた山田太郎。
アリスとシャルロットの日本語での正妻戦争に胃をキリキリと痛ませながらも、地球への一時帰省という最大のミッションを終えた山田家の一行は、いよいよ次回、時空の門を再び潜り、超古代人の生き残りとデバッグデータの核心が眠るという、宇宙で最も獰猛な武連が集う【虎の獣人星系と、魔王の調教包囲網編】への、大天変地異の進撃へと向かって、復活した黒い戦艦の舵を力強く押し進めるのだった!




