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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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制圧

シャルロット姫様の寂しさMaxによる操縦レバー粉砕事件から丸一日。

ドワーフの天才メカニックとゴブリンの専門家たちが血眼になって施した突貫修理が完了し、黒い海賊戦艦はついに、大転送門(スターゲート)の渦巻く漆黒のワームホールへと突入した。 


――ドゴォォォォォォォォォォォン!!! 


次元の壁をねじ切るような大激震が船体を襲う。 

視界が眩い光に包まれた次の瞬間、モニターに映し出されたのは、幾何学的な巨大要塞星を囲むようにして配置された、超古代文明の『自動防衛艦隊』の群れだった。 千年の時を超えて稼働し続ける、かつて世界を恐怖させた伝説の軍隊。新メンバーたちが息を呑んだ、


その時――。

「――全艦、ゴブリン製の超近代プラズマ主砲、最大出力でロックオン。

……皆殺しちゃってくださいな」 

艦長席の太郎は、お守りの帽子(暗視ゴーグル)を弄びながら、冷徹な微笑みを浮かべて命じた。 

そう、超古代文明の兵器は千年前の技術の遺物だ。

対して、太郎が今乗っているのは、ケットシーの技術と、宇宙ゴブリン帝国の異界の量子魔科学技術によって『限界突破のアップグレード』を施された、文字通りの超近代最新鋭戦艦である。 


いざ戦闘が始まってみれば、かつて全宇宙を震撼させた古代の自動防衛艦隊の放つレーザーなど、今の太郎の戦艦の反重力シールドの前には煤(すす)をつけることすらできない旧式兵器に過ぎなかった。 

ズドォォォォォン!!! と、ゴブリン製のプラズマ主砲が一閃するたびに、古代の戦艦が一瞬で分子レベルで消滅していく。

太郎の戦艦『一隻だけ』による、圧倒的な一方通行の完全無双だった。


「太郎様! シャルロットも、あやつらをスクラップにして、太郎様のお役に立ちたいですわ!」 ブリッジの隅で、衣服を破らんばかりの巨乳をふんすふんすと膨らませ、ウズウズしていた姫様が太郎の右腕に抱きついてきた。

 

だが、太郎は彼女の小さな手をぎゅっと優しく握りしめ、静かに首を振った。

「ダメだよ、シャルロット。

今回は、お前は最後まで『隠し札』として、俺の隣でお留守番だ」


「え……? なぜですの、太郎様? 私、もう人間基準の力加減を完璧にマスターいたしましたのに……」 寂しそうに猫のように目を潤わせる姫様。

だが、太郎の瞳は、一人の男としての、どこまでも深い愛に満ちていた。

相手は、お前を創り出した超古代文明の本拠地だ。

もし、お前という存在に対して、俺たちの知らない『対抗策(強制スリープ信号など)』を隠し持っていた場合、俺は……お前を失う可能性がある。


そんなリスク、万に一つも冒せるわけがないだろ?」

「――ぁ」 姫様は顔を耳の裏まで真っ赤に染め上げ、あまりの太郎の深い愛の言葉(お留守番の理由)に、胸をときめかせてとろけるように太郎の胸元へと身を委ねた。

「太郎様……! ああ、私の安全のために、そこまで深く考えてくださっていたなんて……! シャルロット、一生太郎様の手綱に従いますわ……♡」 


二人の濃厚な温かいイチャイチャ空間がブリッジをピンク色に染め上げる中、旧世紀の防衛艦隊は、太郎の戦艦の主砲によって、文字通りただの塵へと変えられていくのだった。


 宇宙空間の防衛線を完全無双で蹴散らした太郎たちは、ついに要領よく要塞星への『突入作戦』へと移行していた。 

船のハッチが開き、コンテナから発進したのは、元ゴブリン皇帝からプレゼントされた【反重力装甲車】と、最新のプラズマ兵器を装備したゴブリンの精鋭陸戦隊の一団だった。

彼らは太郎の冷徹な戦術指揮のもと、要塞の防衛ロボットたちを次々と十字砲火で粉砕し、文字通りブルドーザーのように最深部へと進撃していった。 


だが、その破竹の進撃は、最深部へと繋がる『最終隔壁』の前でピタリと停止した。 そこに立ちはだかったのは、超古代文明の【絶対無敵エネルギーシールド】を全面に展開した、十メートルを超える超巨大防衛ゴーレムだった。


ゴブリンたちの最新のプラズマ砲をもってしても、その量子シールドの表面で完全に弾き返され、一ミリの傷すらつけることができない。


「くそっ、最新の魔科学でも、あのシールドは突破できねえぞ!」 ドワーフのメカニックが叫び、万策尽きたかと思われた、その時だった。


「――私の出番のようね、山田殿」 太郎の背後に控えていた、エルフの女性戦士が静かに前に出た。彼女が構えたのは、プラズマ兵器でも超古代の銃でもない、エルフの里に伝わる伝統的な、ただの木製の『魔導弓』だった。


彼女はゴーレムとの戦いの最中、役に立たないプラズマガンの代わりに種族の心たるエルフの弓で矢を放っていた、ダメもとで何の期待もしていなかったが矢は何もないかのようにシールドを通過した。


後はゴブリン兵に何処を狙えばよいか聞くだけだった 

ヒュン――ッ!!! 鋭い風切り音と共に放たれた、一本の古典的な矢。 超古代のゴーレムのシールドシステムは、あまりにも【化け物染みた近代兵器(量子・プラズマ)】に対する防衛対策に全振りされていた。

それゆえに、石器時代の化石のような『ただの原始的な物理の矢』に対しては、システムが完全に異物(例外)として処理し、何の防御対策も施されていなかったのだ。 


エルフの見事な神速の腕前により、放たれた矢はシールドをすり抜け、ゴーレムの胸部にある【エネルギーシールド発生器】へと、寸分の狂いもなく突き刺さった。 

パリィィィン!!! と、ガラスが割れるような音を立てて、絶対無敵のはずの結界が完全に崩壊する。

「よし、シールドが無くなれば後は簡単だねぇ。

全員、やっちゃってくださいな」 太郎の指示一発、ゴブリン陸戦隊のプラズマ砲が一斉に火を吹き、結界を失った巨大ゴーレムは一瞬にして鉄屑へと爆砕された。 

最終隔壁がバリバリと火花を散らして崩壊し、太郎たちはついに、要塞星の最深部――千年の時を超えて稼働し続けるメインコアの密室へと足を踏み入れた。 


そこにいたのは、コールドスリープと生体工学の神術によって生き長らえていた、数人の【超古代人の残党(科学者たち)】だった。 


太郎は現役の自衛官としての圧倒的な凄みと、士官として交渉術、そして「後ろに控えるゴブリン陸戦隊」という最大の手綱をチラつかせながら、科学者たちと要領よく冷徹な交渉を開始した。

「――分かった、分かったからそれ以上データをハッキングするのをやめてくれ、調教師(魔王)よ! 今すぐ、その個体(コード・シャルロット)の寿命のバグを上書きし、人間種基準へと制御するための『最終上書き緊急コード』を差し上げよう!」 恐怖に震える超古代の科学者たちから、太郎はついに、念願のデバッグコード(結晶チップ)を受け取ることに成功した。

これで彼女を普通の女の子にできる――! 太郎は喜び勇んでコードを端末に接続し、シャルロットの魂(システム)へと流し込んだ。 

だが。 

――ブー、ブー、ブー!!!『――エラー。対象:生体兵器(コード・シャルロット)。

婚姻の護符による致命的なバグが遺伝子深層まで完全に定着しているため、デバッグコードは一切受け付けられません(適用不可)』


「……あ。やっぱり駄目だ、これ」 

太郎はハッキング端末を見つめたまま、ガクッと両肩を落として、その場に完全脱力(絶望)した。 

やはり、聖国で自分で仕掛けてしまった『婚姻バグ(永久の軛)』の強固さは、創り主である超古代人の最高コードを以てしても、一ミリも上書きできないほどに絶対的なものだったのだ。 


だが、そのエラー画面を見たシャルロット姫様は、なぜかこれ以上ないほどに嬉しそうに、大きな瞳をきらきらと輝かせた。


「ああ……! 太郎様! システムすら、私と太郎様が永久に結ばれた夫婦であることを証明してくださったのですね! シャルロット、嬉しくてお腹がキュンとしてしまいますわ♡」「……ははは、喜んでるところ申し訳ないんだけどね、姫様。俺の骨格を守るためのセーフティも消滅したままだからね、優しく卵のように扱ってくれよ


よし、方針変更(手綱の追加)だ」 太郎は冷徹な(最低な)ハッタリの笑顔のまま、アリスとお姫様を前にして、人差し指をビシッと立てた。


「これからは、お命のストッパーを言い訳にした、アリスお嬢様たちの【『口移し』を含む過度なアプローチも、山田家の禁止規律に適用】します! もしこれを破ったり、嫉妬で暴れたりしたら、日の暮れのご褒美(おでこチュウ)は永久に無しですからね!!」

「はぅあぁっ!? く、口移しも、物を壊すのも絶対に禁止ですのね!? 太郎様のおでこチュウが無くなるなんて絶対に嫌ですわァァァ!!!」 

新たな『手綱』の追加に、おでこチュウのために必死にフカフカな良い子を維持しようと涙目で自制する姫様。


新メンバーの二人も(魔王がまた新しい恐ろしい手綱を増やした……)と震え上がる、完璧な調教ラブコメ日常の続きだった。 


だが、その様子を見ていた超古代人の残党の老科学者が、ポツリと、太郎に向かって衝撃の事実を告げた。

「……山田太郎よ。そのお前の絶望しているシステムだがな……。実は、この要塞星のメインゲートの座標を反転させ、そのハッキング端末のデータとリンクさせれば


……お前の故郷である


【『地球』という世界と、この世界を、自由に行き来できる永久の双方向ゲート】として起動させることが可能だぞ」


「――え?」 太郎の動きが、今度こそ完全に止まった。 自由に行き来ができる、本当の『門(ゲート)』の完成。 

太郎の脳裏に、日本で自分の帰りを待ちわびているであろう、あの年老いた両親の顔が鮮明に浮かび上がった。


神隠しに遭ってから、どれほど心配をかけたことか。 


一人で逃げれば世界が滅ぶが、行き来ができる門であり、大人のブレーキ(自制心)を完璧に覚えたこの最高のシャルロットを連れての帰省であれば、何一つ問題はない。

四十男がこんな可愛い嫁を連れ帰るんだ、喜んでくれるはず。


……よし。決めた。陛下、アリスお嬢様、みんな。

……俺、一度、故郷の日本へ『帰省』するわ。

両親に、この世界一最高で最強の嫁さんを、ちゃんと紹介しに行かなきゃいけないからね。


「はいっ、太郎様ァァァ!!! 太郎様のご故郷のご両親様へのご挨拶ですね! シャルロット、山田家の立派な嫁として、命がけでお仕えいたしますわ!!」 


大喜びで太郎の左腕にフカフカの肉圧を押し付ける、新皇帝シャルロット。


その横でニコリ意味深に笑うアリスお嬢様。


チート能力はなく、生身の肉体スペックは最弱のまま、全宇宙の国々をお散歩(調査)のついでに次々と破壊神の名のもとに完全征服(ハッキング)してしまった山田太郎。 


永久不滅のバグを抱えながらも、本当の愛と覚悟、そして大量のゴブリン近代兵器を携えた山田家の一行は、いよいよ次回、時空の壁を完璧に突き破り、懐かしき地球の日本への【帰省編】という、新たなる大天変地異日常への舵を力強く切るのだった!

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