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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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魔王の冷徹なる大号令 虎の獣人の星系

――宇宙ゴブリン帝国の新皇帝に祭り上げられ、反重力装甲車やプラズマ兵器といった異界の超近代アセットを大量に毟り取った山田太郎一行は、次なる目的地へと到達していた。

 

超古代人のデバッグ(仕様変更)データの痕跡が眠るという、宇宙で最も獰猛な武が集う星――【虎の獣人の星系首都星】。


だが、その星系の絶対的な防衛宙域を平和的に突破し、大気圏を降下している最中も、戦艦の艦橋の艦長席に座る太郎の脳内アラートは、最大音量で鳴り響いていた。


「……うん、おかしい。もの凄く、おかしいねぇ」

太郎はコンソールのレーダーを見つめながら、頬を引きつらせた。

宇宙海賊を壊滅させ、ゴブリン帝国を軍門に降らせた自分たちの噂は、当然この星系にも届いているはずだ。

それなのに、宇宙空間での迎撃はおろか、大気圏突入時のスクランブルすら一切ない。何事もなく、あまりにも静かに星系首都星への進入を許されているのだ。


泥をすすって生きてきた叩き上げの士官の直感が告げていた。この「何もない静寂」こそが、最も危険な底なしのトラップであると。

太郎の警戒心は、この時点で完全にメーターを振り切って『マックス(最高レベル)』に達していた。

船は警戒心を全開にしたまま、管制から指示された首都近くの巨大な宇宙港の着陸エリアへと静かにランディングした。


エンジンをカットし、ハッチを開けた、まさにその瞬間だった。


 ――ズガガガガァン!!!

 突如として、着陸エリアの地中から、防魔合金で作られた数十メートルを超える【巨大な鋼鉄のアーム】が何本もせり上がってきたのだ。

アームは太郎たちの戦艦を四方から完璧に包み込み、油圧の凄まじい地鳴りを響かせながら、船体をへし折らんばかりの力でガッチリと固定(ロック)してしまった。


次の瞬間、船内の全周波数のスピーカーを強制ハッキングし、獣特有の地響きのような大声がブリッジに鳴り響いた。


『――愚かな異邦人どもよ、降伏せよ! お前たちが伝説の【破壊神(コード・シャルロット)】を船内に所有していることは、とっくに調査済みだ! おとなしくその娘を我が虎の獣人王国に差し出せ! 従えば、貴様ら虫ケラどもの命だけは助けてやろう!』


それは、獰猛な虎の獣人たちが仕掛けた、完璧な『待ち伏せ(チェックメイト)』の宣言だった。


普通なら、あまりの絶望的な包囲網に絶叫し、腰を抜かす場面だろう。


だが――。

その緊迫したはずのブリッジでは、太郎をはじめ、レオ、ドワーフ、エルフ、そして新加入したアリスお嬢様とメイドにいたるまでの全艦橋要員が、スピーカーの向こうの獣人たちに向けて、

【何処かひどく気の毒そうな、哀れみの目を向けながら、乾いた笑いを浮かべていた】。


「あはははは……。わざわざ自分からゴジラの尻尾を踏みちぎるなんて、宇宙の虎さんたちは随分と命知らずで、要領が悪いねぇ……」


太郎は頭を抱えて深い溜息をついた。

現代の銃火器という優位性を宇宙で完全に失った太郎だが、だからこそ、隣にいる『不老不死の戦闘兵器』の手綱を握る調教師(魔王)としての冷徹な計算は、一瞬で最悪の戦術を弾き出していた。


このままシャルロット姫様を怒りに任せて暴れさせれば、この不毛な首都星そのものが一瞬で粉砕され、付帯被害が多すぎる。

それだけは、これからの情報収集の観点からも絶対に避けたかった。


太郎は悩んだ。深く、深く悩んだ末に――ついに、プロの士官としての【最も苛烈で冷酷な、絶対の破壊大号令】を、隣のシャルロットへと下した。


「――シャルロット。お仕事の時間だよ」


 太郎の目が、冷徹な『軍人』のそれに切り替わる。

先ずは、我が山田家の船を固定している周囲の巨大アームをすべて精密に破壊して、この宇宙船を発進させられるようにして。


……以後、この船を狙う防衛システムや迎撃部隊を最優先で破壊してね。船が安全に大気圏外へ脱出したら、お前はそこから、この宇宙港から王宮へと続く中央道路沿いに……

【八時間かけて、じっくりと時間をかけて王宮の王座まで進撃してきておくれ】


太郎は指を一本立て、顔の横で冷酷に固定した。

「その八時間の進撃の間に、お前に対して攻撃を仕掛けてきたものは――それが軍隊であれ、兵器であれ、何者であっても、

【絶対に、ただの一人も生かしておくな】

徹底的に消滅させなさい。

……そして、王宮の王を捕まえろ。

殺すな。

ただし、今後二度と我が山田家に逆らう気が起きないよう、

【言葉が話せるギリギリの限界まで、徹底的に痛めつけなさい】


太郎の言葉は、大気の温度を氷点下まで引き下げるほどに容赦がなかった。

「以後は、この星のすべての抵抗が完全に無くなるまで、お前がその王宮の玉座に居座り続けること。


……すべての抵抗が無くなったら、俺を呼びなさい。

王宮前の広場を完璧に更地にして開けて、この俺を反重力装甲車ごと迎え入れるように。……いいですね?」


それは、これまでの「大人しく我慢しなさい、手加減しなさい」という教育とは真逆の、【制限付きの、完璧な大量虐殺(国家殲滅)の許可】だった。

 

あまりにも苛烈で、一切の慈悲を排した魔王の作戦プランに、ブリッジの中にいたドワーフも、エルフも、アリスお嬢様たちも、全員が全身の毛を逆立てて硬直した。


「……ま、魔王だ。この男、怒らせたら破壊神よりも何倍も恐ろしい、本物の『魔王』だ……っ!!」


艦橋内のあちらこちらで、太郎への戦慄と畏怖を込めた囁き声が、パチパチと火花を散らすようにして広がっていく。


「はい、太郎様! 旦那様(仮)の仰る通り、山田家の『盾』として、その生意気な猫科の獣どもを、一匹残らず完璧にお片付け(お仕置き)して参りますわ!」


 太郎から『シャルロット』と本当の名前で命令されたことで、姫様は脳のシステムを一瞬でショートさせて舞い上がりつつも、大人の女性としての自制心をその血肉に滾らせ、一糸まとわぬ『戦闘形態』へと移行するため、ハッチを蹴って宇宙空間(大気圏内)へと飛び出していったのだ。



太郎にしたら、この非情なまでの指示は、ひどく冷静な軍人の判断の結末だった。


中途半端に生かしておいて反撃の仕掛けやトラップを喰らうのも面白くないし、この獰猛な武の星系を完璧に大人しくさせるには、八時間という「終わらない絶望の行進」を見せつけ、生かされた王が話せる限界の恐怖を宇宙中に言い触れ回ってもらうのが、今後の『超古代人のデバッグデータ探し』において最も能率が良いからだ。


こうして、衣服を初手の対空砲の直撃で綺麗さっぱり消し飛ばされながらも、傷一つ負わずに自らを弾丸と化して戦艦を体当たりで粉砕し、口や手から放つ漆黒の超高熱線(狙撃熱線)で進路上を更地にしていく『新皇帝シャルロット』の、恐るべき八時間の国家降伏チェイスが、いま幕を開けるのだった。


 ――18時間後。


虎の獣人王国の首都星は、建国以来の絶対的な静寂と、言葉にならない畏怖の沈黙に包まれていた。


太郎の命令通り、宇宙港の巨大アームを精密粉砕したシャルロット姫様は、船を安全に大気圏外へ脱出させたあと、地上へと降臨。

そこから王宮へと続く中央道路を、予告通り「八時間かけて、じっくりと直進」していったのだ。

その進路上で、誇り高き虎の獣人王国の精鋭軍や、超古代の防衛兵器が必死になって放った総火力の攻撃は、ネグリジェを消失して生まれたままの姿(真の naked スペック)となった姫様の白い肌に当たった一瞬で、すべて光の静電気のように弾け飛んだ。対する姫様は、太郎の「攻撃してきた者は何者であっても生かすな、王は話せるギリギリまで痛めつけろ」という冷徹な命令を、忠実な生物兵器として完璧に実行。中央道路沿いにあったすべての軍事基地や防衛線を、ただ歩いて片手をフンと一振りするだけで、分子レベルで消滅させていった。


王宮の玉座の間で、手足の骨を綺麗に砕ける力加減(ゴジラ基準)でへし折られ、言葉を交わせる限界の恐怖で失禁しながら白旗を掲げた虎の獣人王の前に、太郎の乗る反重力装甲車が、更地となった王宮前広場を通って滑らかにランディングした。


……あはは。約束通り、首都宇宙港から王宮前広場までは完璧に一本の直線道路になってるねぇ。


流石は俺の最高の奥さんだよ


太郎は装甲車を降りると、王座に居座っていた一糸まとわぬシャルロットの元へ駆け寄り、大慌てで自分の迷彩服のタクティカルジャケットをその豊かな巨乳へと羽織らせた。姫様はおでこを真っ赤に染め上げ。


「太郎様♡ お約束通り、あやつ(王)を話せる限界までお仕置きしておきましたわ! さぁ、今夜は、このシャルロットをいつも以上にたくさん、たくさん愛してくださいましね……♡」


と、とろけるような情熱(欲求不満)の目で迫ってきたが、ハッと自分の小さな両手を握りしめ、太郎の健康(回数制限)のためにグッとブレーキを入れて自制してみせたのだ。太郎はその健気な成長に深く感激し、彼女の頭を優しく撫で回すのだった。

この壮絶な『八時間のお話し合い』の全データは、大商会ケット・シーの偵察艦や、宇宙ゴブリン王国の情報網、そして生き残った獣人たちの悲鳴によって、全宇宙へと一瞬で爆発的に拡散していった。


――【幻の決戦兵器フルスペックを完全に手綱でコントロールし、言葉一つで一つの星系国家を18時間で全面降伏(お片付け)させる、最凶の魔王・山田太郎】


太郎の存在は、もはや魔王を通り越して、全宇宙のパワーバランスを支配する絶対的な『神』として神格化され、誰も逆らえない抑止力の頂点としてその名を轟かせることとなった。


だが――その夜の『実戦(ご褒美付き)』の結果、山田太郎は

【もはやお約束の丸三日間の間、深い生死の境をさまようこととなった】


新メンバーの二人と、「専属メディック(お命のスペア)」として加入したアリスお嬢様とメイドの二人、ゴブリン治療士八名計十二名の治癒士とゴブリン製最新の医療機器による治療、ケット・シーの最高級濃縮ポーションをこれでもかと注ぎ込む、物量戦、二十四時間体制の超回復マルチキャストが不眠不休で敢行された。


三日目の朝、太郎はようやく元の四十歳の健康な肉体へと奇跡の復活を遂げた。


「……ぷはっ! はぁ、はぁ、死んだ、三途の川の向こうで自衛隊のクソ上司が手招きしてたよ……」

太郎がベッドの上でガバッと跳ね起きると、部屋の隅の薄暗い闇の中で、シャルロット姫様が、自分がまた太郎を死にかけさせた恐怖と罪悪感から、ひどく落ち込んだ様子で体育座りをしてシクシクと泣いていた。太郎に呼ばれるまで、近づくことも、顔を上げることもできずに、ぶるぶると震えていたのだ。


【こちらもお約束である】


「――おいで、シャルロット。お前は俺のために、うまく力加減を我慢してくれたんだろ? 怒ってないよ。お前は世界一の、最高の奥さん(ワイフ)だからね」

太郎が優しくその本当の名前を呼び、彼女の金髪を優しく撫で回すと、

「あ、あぁ……♡ 太郎様ぁ……!」

姫様は顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら太郎の胸元に頭をうずめ、ようやくその愛らしい顔に、世界で一番幸せな本物の乙女の微笑みを取り戻すのだった。


ああ!これもお約束のだなあ!と思いながら、同時に幸せを感じていた。


それを見たアリスお嬢様とメイド、そして新メンバーの治癒士たちは、一様に微笑んでいた。新たに加わった、ゴブリン治療士達は太郎がどれ程の犠牲を払っているか初めて知った。


そして太郎の前に深く深く平伏した。

「山田様……! 私たち、貴方のその、全宇宙の滅亡をベッドの上で防ぎ続けている『本当の勇者の覚悟』を目にして、激しく感動いたしました! 私たち、貴方のことをただの色ボケの変態だなんて内心で思ってて、本当に申し訳ありませんでした!! 山田様は、全宇宙の平和を守るための、真の英雄(ストッパー)です!!」


涙を流して、太郎を「人類の救世主」として崇め奉るクルーたち。

【こちらももはやお約束である】


太郎は、自分の隣で「太郎様、今夜も健康のために我慢を頑張りますわね♡」とピュアに微笑む最強のワイフの姿に、脳内で宇宙猫の顔をしながらも、深い溜息を吐き出すのだった。


だが、その幸福な空気の扉が、カチャリと開いた。


「山田様ぁ♡ お体が無事に蘇生(復活)されたことですし、専属のメディックとして、お体の隅々まで、より濃密な『次の夜の健康診断』を始めましょうねぇ……にゃん♡」

アリスお嬢様とお付きのメイドが、本気の婿取りを狙ったガチの恋心を燃やして、太郎のベッドのうえへと大胆に詰め寄ってきたのだ。


「……は? 太郎様の専属メディック……? 私の旦那様に、まだその不届きなお耳で近づこうとしていますの……? むきーっ! 次の遺跡へ着く前に、そのお耳ごと消し飛ばして差し上げますわ!!!」

【こちらももはやお約束である】


 一転して、ブリッジ全体が超古代のシステムをもバグらせる、恐るべき【新皇帝シャルロットVS大商会お嬢様の、超宇宙規模の泥沼三角関係修羅場】の勃発。


虎の獣人の星を完全掌握し、超古代人のさらなる手がかりを手に入れた山田太郎だったが、最強のワイフの嫉妬のプレッシャーと、グイグイ迫るケット・シーのお嬢様たちの間で、再び胃に穴が空きそうな大ピンチに直面するのだった。



四十歳の最凶の調教師・山田太郎に、果たして、明日はあるのだろうか――?

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