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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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征途への一歩

ケット・シーの星系本星を出発し、宇宙ゴブリン王国の本拠地へと向かう黒い海賊戦艦の船内は、かつてないほどの賑やかさ――いや、山田太郎(四十歳)にとっては、過去最大の【胃痛の限界領域】に達していた。


「山田様ぁ♡ 今日のお体のバイタルチェックの時間ですわ。専属のメディックとして、心音を細かく、じっくりと聴かせていただきますね……にゃん♡」 


大商会の令嬢アリスが、体にフィットした医療服の裾をはためかせ、猫耳をパタパタと揺らしながら太郎のベッドへとグイグイ詰め寄ってくる。

お付きのメイドも「お嬢様、山田様の脈拍が上がっております。

これは恋の病です」と、無表情のまま太郎をロックオンしていた。


「――っ、そこの泥棒猫どもォォォ!!! 太郎様のウブな心臓に気安く触るなぁぁぁ!!! むきーっ! 爆発(我慢中)しますわよ!

シャルロット、大爆発しますわよ!!!」 部屋の隅では、ネグリジェドレス姿のシャルロットが、お顔を真っ赤に染め上げて激しい嫉妬の炎を燃やし、拳をブルブルと震わせていた。


アリスたちの猛攻と、それに対して表面上は「若い女の子に迫られてタジタジになっている情けない中年男」を必死に演じながら、内心では(アリスたちに手を出したら本当にゴジラ熱線で船ごと消し飛ぶ……!)と冷や汗ダラダラで二人の自制心をテストしている太郎。


そんな三人(+レオと新メンバーたち)の、キャッキャウフフでありながら裏では一触即発の修羅場日常が、脆くて狭い宇宙船の中でコミカルに繰り広げられていた。 


だが、太郎の胃を痛めているのは、ラブコメの泥沼だけではなかった。


(……はぁ。終わったね。俺の最大のアドバンテージ、完全に逝っちゃったよ) 太郎は自室の作業台で、油を引いた『89式5.56mm小銃』と『9mm拳銃』を見つめ、乾いた笑いを漏らしていた。

 

地上では「神の雷」として圧倒的な優位性を誇っていた自衛隊の現代兵器。

だが、ひとたび宇宙へ出てみれば、超古代文明や宇宙ゴブリンの持つ【異界の量子魔科学技術】の前には、火薬で鉛の弾丸を飛ばすだけの鉄の筒など、もはや【原始的で化石染みた古典的なガラクタ(骨董品)】として、鼻で笑われて侮られるレベルの代物でしかなかったのだ。 


ドワーフの国に仕込んできた弾薬の複製ラインも、宇宙ゴブリン程度の科学力を持った相手には、装甲の表面に煤をつけることすらできず、掠り傷一つ負わせられないほど完全に歯が立たない現実。


唯一、中身の中身をくり抜いた『訓練用音響手榴弾』などのハッタリ用ガジェットだけが、ギリギリ心理戦のハメ技として使えるかどうかの、絶望的な技術格差(ディスアドバンテージ)。 

現代兵器という爪を完全に失った太郎が、この宇宙で生き残るためのリソースは――もはや、元の世界で培った「年上上司(今回は教皇や会長)をたらし込む要領の良さ」と、自分の横で嫉妬に狂っている「不老不死の戦闘兵器(シャルロット)」という手綱だけだった。


「ま、原始的な男なりに、知恵とハッタリだけで次の星系も要領よく泳がせてもらうけどねぇ」 太郎は拳銃を腰の後ろに仕舞い込むと、迫り来る次なる戦場――宇宙ゴブリン王国の本星へと、黒い戦艦の舵を大きく切るのだった。



ケット・シーの星系から数日。拿捕した大型戦艦は、ついに全く独自のルーツを持つ無法者たちの本拠地――『宇宙ゴブリン帝国』の母星が存在する宙域へと到達した。 だが、その宙域へ滑り込んだ瞬間、ブリッジのメインモニターを確認したドワーフのメカニックとエルフの戦士、そしてアリスお嬢様たちが、一斉に悲鳴を上げてその場にへたり込んだ。


「ひ、ひぃぃぃぃ大尉!!! で、出たァァァ!!! 超ド級の【大艦隊(本隊)】だ!!!」 前方の宇宙空間を埋め尽くしていたのは、数千、数万隻に及ぶ、プラズマ主砲を無数に滾らせた宇宙ゴブリンの真っ黒な超巨大戦艦の群れだった。

前回の決決闘場の比ではない、国家の総力を挙げた文字通りの『大出迎え』


現代兵器の通じない太郎にとっては、まさに一瞬で宇宙の塵にされる絶望の包囲網だった。


「……あちゃー。これはいよいよ大戦闘、いや、俺たちの肉体が分子レベルされる本気の終末戦かな?」 太郎がさすがに冷や汗を流し、ハッタリの笑顔を引きつらせた、その時だった。


『――全艦、主砲の火を消せッ! 動力を切れッ!! 偉大なる、全宇宙の破壊神の御前であるぞォォォ!!!』 船内スピーカーから響き渡ったのは、宇宙ゴブリン帝国の最高指導者(皇帝)の、涙目になりながらガタガタと震える、超古代文明語の絶叫だった。 


次の瞬間、目の前に展開していた数万隻の大艦隊が、一斉にすべての主砲の光を消灯し、船体の向きを反転させ――まるで、王の前に平伏する家臣のように、太郎たちの船に向かって、

【宇宙空間で、船体を深々と傾ける完璧な『全面降伏(敬意の姿勢)』】を敢行したのだ。


「……え?」 太郎は艦長席で、完全に点になった目を瞬かせた。 

そう、前回の決闘場において、生まれたままの姿(真の naked スペック)で宇宙空間を縦横無尽に駆け巡り、戦艦を体当たりで粉砕し、口や手から放つ漆黒の超高熱線(狙撃熱線)で数万の艦隊を一瞬で分子レベルまで消滅させたシャルロット姫様の『ゴジラ無双』。

あの破壊神級の圧倒的な恐怖の神話は、唯一生き残って逃げ帰ったゴブリンの偵察艇によって、本星にいた彼らの脳内に【絶対に逆らってはならない不滅の絶望】として、一瞬で上書きされていたのだ。

 

彼らは戦いに来たのではない。 

これ以上逆らえば、自分たちの星系本星ごと、あの130センチのロリ巨乳の破壊神に一瞬で『更地(一本の直線道路)』にされると本気で悟り、国家の生き残りを賭けて、最初から白旗を掲げてお迎えに来ていたのだ。 


主星、首都に到着後本来ならば許されない王城正面の広場に着陸した一行は、ズラリと並んだゴブリン近衛兵の間を通り王宮へ向う。

巨大な本星の王宮の門が、姫様が触れるまでもなく、ゴブリンの近衛兵たちの必死の手によって大慌てで内側から全開にされる。 

玉座の間へと案内された太郎たちの前に、身長二メートルを超える宇宙ゴブリンの皇帝が、自らの宝冠を両手で捧げ持ち、涙を流してシャルロット姫様の足元へと平伏した。「偉大なる……偉大なる不滅の破壊神(ゴジラ)様……! 我がゴブリン王国は、貴女様の圧倒的な武力の前に、無条件で軍門に降ります……! どうか、どうか我が国の民の命だけはお助けいただき、この国の頂点――【ゴブリン帝国皇帝】の座をお受け取りくださいましィィィ!!!」


「ええ? シャルロットが、お星様の王様(皇帝)ですの……? 太郎様、どうしましょう?」 首を傾げ、衣服を破らんばかりの巨乳を揺らしながら、太郎の左腕にギュッと抱きついてくる最強の婚約者。 


その光景を見つめながら、中年の「最凶の調教師」山田太郎は、脳内で宇宙猫の顔を通り越し、乾いた笑いを爆発させていた。


……ははは。現代兵器が原始的だって侮られて歯が立たないから、異世界の技術で強化する方法を探しに来たのにさぁ。

到着した瞬間に、俺の嫁(ゴジラ)が【宇宙ゴブリン帝国の新皇帝】に就任しちゃったよ。

……外堀が埋まるどころか、国家レベルで俺の包囲網がさらに強固に鉄筋コンクリート固めされてんじゃんか。

ウケるね、本当に。全然笑えないけどさぁ! 


現代の銃火器を完全に失いながらも、最愛の最強のワイフの『圧倒的な名声(恐怖)』によって、一歩も戦わずに宇宙の一大帝国を要領よく完全支配してしまった山田太郎。 


新メンバーやアリスお嬢様たちが(あの山田殿、ついにゴブリンの帝国すら言葉一つで我が物にしてしまった

……本物の魔王、いや神獣使いだわ……っ!)と、戦慄のさらに向こう側の神格化の泥沼にハマっていく中、新皇帝シャルロットを従えた太郎の、胃の痛すぎる『宇宙サバイバル内政日常』は、ここからさらに予想もつかない混沌の領域へと、不敵なエンジン音を響かせて加速していくのだった。

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