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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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創造主の皮算用と、魔王の抑止力計画

拿捕した巨大な宇宙ゴブリンの略奪艦を、小型船を格納したまま太郎自らが要領よく操縦し、一行はケット・シー(猫型亜人)の星系本星にある、白磁の巨塔が立ち並ぶ巨大な宇宙港へと無事ランディングを果たした。


救出された大商会の令嬢アリスの手引きにより、山田太郎(四十歳)はすぐさま、この星系の経済を裏で牛耳る大商会の会長であり、アリスの父親であるガルドと言い交わす面談の席に着いていた。


「――なるほど。山田殿、これまでの経緯と、貴殿がこの世界へ迷い込んだ事情はすべて理解した」

 豪奢な毛並みの猫耳を震わせ、高級な絹の衣服を纏ったガルド会長は、卓上の冷めたスープに目を落としながら、脳内で凄まじい速度の『皮算用』を弾いていた。


娘のアリスから密かに受け取った略奪艦での報告書。そこに記されていたのは、超古代文明において、製造方法すら失われて久しい伝説の幻の決戦兵器――【純粋戦闘兵器】の存在だった。


現代のこの宇宙において、超古代の遺伝子をほんの数パーセント発現させ、怪力を操る人間種の戦士ですら「一人で国を取れる」と畏怖されるのだ。

それが、娘の話によれば、シャルロットという少女は、傷一つ負わずに戦闘ロボットの包囲網を肉体一つでねじ伏せたという、ただそれだけなら宇宙を探せばいくらでもいるだろう、ただ問題なのは娘が見たその存在が、完全なる『フルスペック(オリジナル体)』。国どころか、本気を出せば星系そのものを消滅させかねない歩く戦略兵器であると言う、娘が言うなら本当だろ。


(この男……最凶の破壊神を特別な方法もなしに完全に飼いならしている。

山田太郎、ただの『人族』ではないな。ここで牙を剥けば我が商会はおろか、星系が塵になる。仲良くしておいて損はあるまい……!)


ガルド会長は冷や汗を拭い、人たらしの笑みを貼り付けた太郎の「願い」をすべて二つ返事で受け入れることにした。

「山田殿の望み通り、我が商会が持つできうる限りの情報を提供する。

破壊神のルーツに関わる超古代の歴史から、現在の近隣星系のパワーバランスまで、すべて大書庫の閲覧を許可しよう。

……さらに、その拿捕した宇宙ゴブリンの戦艦だな。

我が商会の最高の技術ドックを使い、変な自爆装置や仕掛けがないか徹底的に内部調査を施す。

修理が必要な箇所の確認はもちろん、貴殿からいただいた賞金とお礼の予算内で、可能な限りの『兵装のアップグレード』も約束しよう」


「いやぁ、物分かりの良いお父さん、あ、いえ、会長殿で助かりますよ、ははは」

太郎は要領よくケット・シーの技術支援をもぎ取り、心の中で完璧なガッツポーズを決めていた。

 

だが、安息の時間は長くは続かなかった。

略奪艦を奪われ、面目を完全に潰された【宇宙ゴブリン帝国】の本隊が、太郎たちに向けて、公式な『決闘状(挑戦状)』を送りつけてきたのだ。

*

 

数日後。宇宙ゴブリンたちの指定した、赤黒いデブリが浮遊する不毛の小惑星帯――『決闘場』へと、アップグレードを終えた黒い海賊戦艦が静かに滑り込んだ。


ブリッジの艦長席には太郎。そして、なぜか今回は、救出された大商会の令嬢アリスとお付きのメイドの姿もあった。アリスの目的は、自らの目で「伝説の破壊神のフルスペック」をその目でチェックし、本当に制御できているのかを見極めることだった。

 

前方には、数百キロメートルにわたって展開する、宇宙ゴブリン帝国の略奪艦隊――数十隻の黒い戦艦を含む数百隻もの大艦隊が、禍々しい主砲の銃口を一斉にこちらに向けて待ち構えている。


新メンバーのドワーフとエルフが恐怖に顔を引きつらせる中、太郎は艦長席から、隣のシャルロット姫様を振り返った。

「シャルロット。……これより作戦を開始する。

今回はね、敵の艦隊のうち、一番小さな船を『一隻だけ』残して、残りの船は、一船残さず、生存者も一人も残すことなく、出来るだけ派手になおかつ残酷に、時間をかけて始末してきておくれ」


太郎の口から放たれた、どこまでも穏やかで、しかし寸分の慈悲もない冷徹な『命令』。

それを聞いた瞬間、ブリッジの中にいたレオを除く全員――ドワーフのメカニック、エルフの戦士、そしてアリスお嬢様とメイドまでもが、背筋に強烈な悪寒を感じて硬直した。


「……ま、魔王だ」


ドワーフの口から、ポツリと本気の戦慄が漏れる。


だが、太郎の計算はひどく冷静で、合理的だった。

(これで、シャルロットの圧倒的な力を宇宙中に知らしめ、完璧な『抑止力』にする。中途半端に生かして帰せば、また別の海賊や国が舐めてかかってくるからね。

そのためにも、二度と逆らおうと思わないほどの、トラウマ級の圧倒的な力の行使が必要なんだよ。

……ただし、一隻だけ残した生き残りに、恐怖の伝道師として破壊神の神話を宇宙中に言い触れ回ってもらうけどねぇ


「はい、太郎様! 旦那様の仰る通りに、徹底的にお仕置きして参りますわ!」


 姫様は完全に目がハートマークになり、太郎から与えられた「残酷に時間をかけて」という命令すら『愛の共同作業』として脳内翻訳。宇宙船のハッチを開けると、なんと防護服も宇宙服も着ない【完全な生生身のまま】、真空の宇宙空間へと弾丸のように飛び出していった。

(後編へ続く)

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