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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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精密のゴジラと、夕暮れのご褒美

超古代文明の『宇宙船発着場(スペースポート)』の内部は、千年の静寂の奥で、未だに冷徹な殺意を孕んで稼働し続けていた。


「――カタカタ、ターンッ、と。よし、第一セクターのセキュリティ、ハッキング完了だねぇ」


 薄暗いコントロールルームの奥。山田太郎は、ヘルメットに装着した暗視ゴーグルの緑色の視界を這わせながら、自衛隊のフラッシュライトの暗視モードで超古代の半透明キーボードを照らし、軽快に指を動かしていた。


 目的は、この世界の星々の彼方――別の星系へと旅立った『超古代人の通信ログや航路データ』の完全確保。

それさえ手に入れば、入口で待っている最強のワイフ(ゴジラ)を普通の女の子へと仕様変更(デバッグ)するための、本質的な手がかりへと到達できる。


だが、太郎がメインデータバンクの回線へと要領よく潜り込もうとした、その瞬間だった。


 ――ピキィィィィィン……ッ!!!

 部屋全体の防魔石の壁に埋め込まれたスリットが、一斉に不吉な『真っ赤な警告ランプ』へと変色した。

それと同時に、コントロールルームの中央の床がズズズと開き、そこから一体の『怪物』がせり上がってきた。


 それは、これまでの遺跡で遭遇した粗末な自律人形とは次元が違う、超硬質の古代合金で全身を覆われた、全高五メートルを超える【大型防衛ゴーレム(ガーディアン)】だった。

その中心核には、(スペースポート)のシステムすら破壊しかねないほどの莫大な魔力(エネルギー)が凝縮されている。


「うわ、出た!RPGのラスボスクラスじゃん」

 太郎は現役の自衛官であり、叩き上げのプロだ。即座に『89式5.56mm小銃(ドワーフ複製弾仕様)』を構え、敵のセンサーに向けて数発の精密射撃を叩き込んだ。


 ――パァァン! パァァン!

 銃声が響き、弾丸は寸分の狂いもなくゴーレムのカメラアイへと着弾した。

しかし、超硬質合金の装甲は、現代の弾丸の貫通力をもってしても傷一つすらつかない。ゴーレムは赤く目を光らせ、その巨腕を太郎に向けて振りかぶった。当たれば、太郎の肉体など、一瞬でトマトジュースにされる。


(やばいねぇ……! ここで手榴弾を使えば、後ろにある超古代のデータ端末まで木端微塵になって、地球への、いや古代人への手がかりが永遠に失われる……! 詰んだか!?)


太郎が冷や汗を流し、一歩後退しようとした、その時だった。


「――太郎様っ! シャルロットにお任せください!!!」

 コントロールルームの重厚な自動ドアを、いつものようにバリバリと破壊することなく、驚くほど滑らかな動作で『手で開けて』突入してきた影があった。


姫騎士姿の、130センチのシャルロット姫様だ。


「シャルロット!? ダメだ、ここで暴れたらデータが消える!」


太郎が絶叫する。

しかし、姫様の瞳には、これまでの無邪気な暴走の気配は微塵もなかった。

彼女の脳裏にあったのは、昼間に太郎から叩き込まれた『山田家の第一規律(太郎優先・人間基準)』の教えだった。

(ダメ……! ここでいつものように腕を振ったら、お部屋ごと太郎様の大切な機械が全部壊れてしまう……! 太郎様のお役に立つために、私が今夜、命がけで証明してみせるのですわ! 指先一つまで、フカフカの綿毛のように……!)


 姫様は地を蹴った。

その気になれば、成層圏飛行をするほどの脚力だが、今回は違う。

彼女は床の石畳を一ミリも凹ませることなく、風を切る音すら置き去りにするほどの『超精密な高速移動(ステルス・ダッシュ)』を敢行したのだ。


大型ゴーレムが巨腕を振り下ろすよりも早く、姫様は一瞬で敵の懐へと滑り込んだ。

 衣服を破らんばかりの巨乳がプルンと揺れる。

しかし、その小さな右手は、驚くほど繊細に、まっすぐにゴーレムの胸の『装甲の繋ぎ目』へと伸ばされた。


「ハァッ!!!」

 姫様は、巨大な戦斧を素手で粉砕したあの怪力を、今回は完全に一箇所――敵の【主電源の魔力回線(コード)】の、わずか数ミリの隙間にだけ集中させた。

 それは、地球の熟練の外科医がナノ単位のメスを操るかのような、超次元の力加減だった。


 ――プチリ。

 暗黒の部屋に、信じられないほど小さな、軽い断線の音が響いた。

 次の瞬間、全高五メートルの大型防衛ゴーレムは、背後のデータ端末や壁に傷一つ、埃一つすら立てることなく、すべての光を失って、その場にズズズ……と静かに崩れ落ち、完全停止したのだ。周囲の精密機械は、すべて完全に無傷のままだった。


「……え?」

 銃を構えたまま、山田太郎は完璧に呆然と立ち尽くしていた。


 あの、歩くだけでエルフの里を更地(直線道路)にし、ドアノブを紙屑にしてきた大怪獣ゴジラ姫様が――今、太郎のデータ端末を守るために、己の力を限界まで制御し、指先一つの精密作業でラスボスを無力化してみせたのだ。


シャルロット姫様は、ふぅ、と愛らしく息を吐くと、自分の小さな両手をじっと見つめ、それから太郎を振り返って、花が咲くような満面の笑顔を浮かべた。


「太郎様……! 見てくださいまし! 私、機械も、お部屋も、何一つ壊さずに、あやつだけを眠らせることができましたわ……! シャルロット、人間種としての優しい力加減、完璧にできましたわ!」

 太郎の胸の奥に、かつてない激しい衝撃と――そして、一人の調教師(夫)としての、言葉にならないほどの『愛おしさと感動』が、津波のように押し寄せてきた。


彼女は化け物じゃない。自分の正体がフルスペックの生体兵器だと知って怯える世界の中で、ただ一人、俺の言葉を真剣に聴き、俺を壊さないために、俺に嫌われないために、これほどの驚異的な精神力で自分の力をコントロールしてみせたのだ。


一人の17歳の女の子として、必死になって努力してくれたのだ。

「……凄い。凄いよ、シャルロット。完璧だ。俺の想像を遥かに超える、最高の『奥さん』だよ、お前は」

 太郎は小銃を背中に回すと、スタスタと歩み寄り、彼女の130センチの小さな体を、今度は自分から、そっと優しく抱きしめてやった。

衣服越しに伝わる、必死に力を抜いてフカフカのクッションのようになろうとしている彼女の温かさと柔らかさ。


「た、太郎様……♡ ああ、私、太郎様に抱きしめられて、胸がはち切れそうですわ……!」

 姫様は顔を真っ赤に染め上げ、今にも嬉しさで気絶しそうな声を上げたが、今回は太郎の背骨が折れるような締め付けは、一ミリたりとも返ってこなかった。


*


その日の夕暮れ。

無事に宇宙港のデータ(古代人が旅立った星系の座標ログ)をすべてハッキング・回収し終えた一行は、遺跡の外の赤茶けた峡谷へと戻っていた。


後部座席のレオは、太郎から貰ったマルチツールで、壊れたゴーレムの部品を器用にいじりながら「なー、ねーちゃん、今日の夜ご飯はスタミナひき肉じゃないやつにしてくれよな!」と呑気に騒いでいる。


赤銅色の美しい夕日が、砂漠の地平線へと沈んでいく。

太郎は高機動車のボンネットに腰掛け、隣に並んで座るシャルロット姫様を見つめた。

今日の一日の間、彼女は文字通り『何一つ』、物を壊さなかった。

完璧な人間基準(太郎優先)の達成である。


「さてと、姫様。約束は約束だからね。……山田家の第一規律、完全達成のご褒美です」


「はい……っ!」

 姫様はドレスの裾を小さな指先でぎゅっと握りしめ、大きな瞳をこれ以上ないほどキラキラと輝かせながら、お腹の前に両手を当てて、恥ずかしそうにコクンと首を傾げて目を閉じた。

 おでこを差し出す、世界で一番可愛い最強の戦闘兵器。

 太郎は少し照れくさそうに笑いながら、四十歳の大人の男として、そっと身を乗り出した。

 そして、夕暮れの光の中で、彼女の滑らかな、白いおでこへと――優しく、ちゅ、と音を立てて『ご褒美の接吻(チュウ)』を授けた。


「――ぁ、ぁあ……♡」

 姫様は顔を耳の裏まで真っ赤に染め上げ、あまりの幸福感に脳のシステムが完全にショートしたかのように、ふにゃふにゃと太郎の胸元へと倒れ込んできた。


衣服を破らんばかりの巨乳が太郎の胸にピタリと当たり、至福の柔らかさが太郎を包み込む。


太郎は彼女の小さな背中を優しく支えながら、沈みゆく夕日を見つめて、瞳の奥に確かな『覚悟』の炎を燃え上がらせていた。


(データは手に入った。古代人たちの行く末、別の星系への航路は分かった。……待ってろよ超古代文明。俺はこの可愛い怪獣(奥さん)を連れて、宇宙の果てまでお前らの残骸をひっくり返しに行ってやる。


そして、お前を創った設計者どもの遺産を残らずハッキングして、この健気で最高なお姫様を、世界で一番幸せな『本当の女の子』に生まれ変わらてやるからな)


現代兵器のアドバンテージ(小銃や拳銃)を隠し持ち、生身の肉体スペックは最弱のまま。しかし、逃げるのを完全に諦め、最愛のワイフに人間の常識を教え込みながら『宇宙の古代人を探す旅』への一歩を踏み出した山田太郎。



 二人の完璧に噛み合った愛(調教)のロードムービーは、世界の、そして宇宙の理をひっくり返すための新たなる大冒険へ向けて、復活した高機動車のアクセルを力強く踏み込むのだった。

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