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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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20/60

ゴジラに真実の愛を教えてはいけません。

――王都ガラム。その最高警戒区域である王城の密室にて、山田太郎一等陸尉(四十歳・未婚)は、人生のすべてを賭けた『最終作戦』の火蓋を切って落とした。 


聖国の大書庫で突きつけられた、超古代文明の致命的なシステムバグ。 

安全装置(セーフティ)のパスワードも、婚姻の護符の解除コードも永久不滅。宇宙が崩壊するまでデバッグ不可能な、人類史上最もえげつない『永久の軛』。 さらに、助手席でお腹を優しく撫で回し、「生体パーツの製造期間(十ヶ月)」を純粋に信じ込んでいる最強のゴジラ姫様。


(……もう、あのお上のクソ義父どもをハメ返すなんて生ぬるいことは言ってられない。


あの姫様(ゴジラ)に、今この瞬間に『子作りの真実』の英才教育を直接ぶち込んで、脳のシステムを大混乱(エラー)させる。

……そして、お勉強のスパルタ講習に姫様が直接巻き込まれて身動きが取れなくなっているその数時間の隙に、俺は高機動車でこの国の果てまで、全力で逃げ切ってやる……!!!) 


太郎はこれまでに培った博学な知識と、地球の義務教育が誇る精密な人体解剖図、そして生殖医療の最先端データをかき集め、数十枚に及ぶ『本気の性教育スライド(手書き)』を完成させていた。 

これを王都の最高位の家庭教師や、教会の高齢の女司祭たちに預け、シャルロット姫様を完全に部屋に閉じ込めさせたのだ。

「姫様。これは、我が故郷に伝わる最高位の医学書です。人間(と超古代兵器)の命の神秘、そして『正しい愛の育み方』について、基礎から細胞レベルで網羅されています。これを完璧に履修するまでは、お腹を撫でるのも禁止ですからね!


「ま、まぁ……! 太郎様との愛の結晶を完璧にするための、神聖な試練(お勉強)なのですね!?

シャルロット、我が王家の名にかけて、一文字も漏らさずに暗記してみせますわ!」


目をらんらんと輝かせ、部屋に籠る姫様。よし、食いついた。 太郎は家庭教師たちに「何があっても、彼女がすべての真実

(ただ抱き合って寝ても子供は生まれないという現実)を

理解するまで、絶対に部屋から出すな」と厳命した。 



そして次の瞬間、太郎は王城の厩舎へと脱兎のごとく駆け出した。


 高機動車のエンジンに火を入れる。ドワーフ特製の最高級ガソリンは満タン、外部の予備タンクも全て満杯にされている。


「おさらばだ、ガラム王国! おさらばだ、ゴジラお姫様!!! 俺は地球に帰る前に、まずこの世界の未開の荒野へと失踪させてもらうからな!!!」

太郎の頭の中では、某怪盗が高らかに『あばよ!(義父!)』 っと叫んでいる姿がリフレインされていた。


爆音を響かせ、高機動車は王都の正門を強行突破した。 


城壁の上で国王や宰相が「あ、あやつ逃げおったぞ!?」「シャルロット様の講習が終わるまでに捕まえろ!」と大騒ぎしているのがバックミラーに見えたが、叩き上げの士官のドライビングテクニックを舐めてもらっては困る。 


太郎はギヤをトップに入れ、アクセルペダルを床まで踏み抜いた。 


目指すは、王都から遥か彼方、およそ【1000キロメートル離れた不毛の荒野の果て】。 そこは、超人染みた身体スペックを持つ異世界人であっても、馬を乗り潰さなければ数週間は到達できない、文字通りの地の果てだった。


 * 


――十時間後。 一分の休憩もなく、荒地を、岩場を、高機動車のサスペンションが悲鳴を上げるほどの速度で文字通り「爆走」し続けた太郎は、目的地の荒野の一端へと滑り込んでいた。 プスン、とエンジンを切る。 

太郎はよろよろと運転席のドアを開けると、乾いた土の上に、どさりと大の字になってひっくり返った。


「……はぁ、はぁ、はぁ……! 走った。


走ったぞ。五〇〇キロだぞ、五〇〇キロ……。地球の東京から京都(約500km)までを、ノンストップで駆け抜けたんだ。いくら馬の脚が早くたって、鋼鉄の馬の機動力に追いつけるわけがない……。よし、ここまで離れれば、しばらくは安心だ……」 太郎は乾いた風が吹き抜ける荒野の空を見上げ、泥をすすってきた男としての、完全なるやり遂げた達成感の笑みを浮かべていた。 


肉体スペックは最弱。チートもなし。だが、現代の機動力と参謀の知恵があれば、あの最強のゴジラ姫様からだって逃げ切れるのだと、彼は確信していた。 


だが、その安堵は、ほんの数分しか持たなかった。 


――ピキィン。 太郎の歴戦の士官としての第六感が、突然、大気そのものが『凍結』したかのような異常な静寂を捉えた。 見上げる青空の、遥か成層圏の彼方。雲を突き抜けた上空の端に、キラリと、何かが太陽の光を反射して【超高速でこちらへと落下してくる、一条の閃光】が視界に入った。(……ん? 流れ星? いや、違う。弾道ミサイル……? 違うな、あのシルエット、見覚えがあるぞ。衣服を完全に置き去りにして、空気抵抗を限界まで突き破って大気圏再突入を敢行している、あのロリ巨乳の――) その『何か』は、太郎の滞在する荒野のわずか一キロメートル前方へと、正確無比な座標で突っ込んでいった。 


――ドゴォォォォォォォォォォォン!!!!! 

地球の戦術核兵器が着弾したかのような、凄まじい大爆発の光景。 大地が激しくのたうち回り、一キロ先から押し寄せてきた『超音速の衝撃波(爆風)』が、大の字で寝ていた太郎の身体を枯れ葉のように何度も地面に転がした。凄まじい土煙が、荒野の空を真っ黒に染め上げていく。 

ガタガタと震えながら、太郎は土煙の向こうを見つめた。 


分かった。


参謀の頭脳は、一切の計算を放棄して、その『結末』を即座に理解した。


――嫁が、(嫁=太郎の心が折れた瞬間であった)迎えに来たんだ。 


土煙がゆっくりと晴れていく。 


その中心に広がっていたのは、隕石でも落下したかのような巨大なクレーターだった。 


そしてそのクレーターの底から、ゆらりと立ち上がったのは――衣服などという不穏な空気抵抗の塊は、成層圏飛行時の摩擦熱ですべて綺麗に吹き飛び、文字通り【生まれたままの姿(一糸まとわぬ真の naked スペック)】となった、17歳・130センチのシャルロット姫様だった。 だが、今の彼女の瞳には、これまでの無邪気な笑顔はなかった。


王城の部屋で、太郎が仕掛けた『正しい大人の性教育スライド』を完全に履修し、ただ抱き合って寝ても子供は生まれないという【真の教育(現実)】を突きつけられた彼女。 一糸まとわぬその姿は、真実を知った彼女にとって、むしろ『これからの本当の子作り(実戦)』を行うために、これ以上ないほど「丁度よい程度」の完全武装と化していたのだ。 


ちなみに、彼女が太郎を追いかけるために王都の中庭で『ジャンプ』した地点は、その脚力の反動によって【王城の中庭ごと半径数百メートルが消滅し、壊滅状態】に陥っていたのだが、恋する超古代生物兵器の耳には届いていなかった。


「……太郎様。お勉強、すべて理解いたしましたわ」 クレーターの底から、一歩、一歩と、大気そのものをミシミシと震わせながら歩み寄ってくる、一糸まとわぬ最強のゴジラ。その瞳には、かつてないほどの、本物の肉食獣の愛の炎が燃え盛っていた。「シャルロット、間違った知識で太郎様を困らせていた自分が、本当に恥ずかしいですわ。……ですから、今から、この場所で、医学書に書かれていた通りの『正しい手順』を、太郎様と、一から、朝まで、何度も、繰り返させて、いただきますわね……♡」



「あ、あはは……。五〇〇キロも走ったのに、脚力だけで成層圏飛んで追いつくとかさぁ……。もう無理だよね。俺、現実を見るよ……」 山田太郎は、拳銃を抜く気力すら完全に喪失し、完全に諦めの心境で、これから己の四十歳の肉体に起きるであろう『絶対的な蹂躙劇(子作り実戦)』に備えて、静かに白目を剥くのだった。


* 


三週間後。

 

ガラム王国の王都に、山田太郎が帰ってきた。 

高機動車の運転席ではなく、完全に精根を尽き果たし、肉体のすべての水分と生気を吸い尽くされ、文字通り【骸骨(ミイラ)のようになって、ぴくりとも動かない状態】で、シャルロット姫様に優しくお姫様抱っこされて戻ってきたのだ。 


王城の崩壊した中庭で、それを出迎えた国王陛下と王妃の奥方は、太郎のその凄惨すぎる姿を見るなり、すべてを察して顔面を真っ青に変えた。


「ひ、ひぃぃぃっ!? 山田殿が、守護神が、干からびて死にかけておられる!?」「シャルロット! 貴女、一体どれほど愛し合ったったのです、(営み)をあのお方に強いたのですか!?」 国王夫婦は、恐怖のあまり実の娘の前に平伏せんばかりの勢いで叫んだ。 



彼らがこれほどまでに太郎の命を心配しているのは、単なる同情ではない。 

超古代AIが告げた通り、あの最強のゴジラ姫様を辛うじてこの世界に繋ぎ止めている唯一の手綱(婚姻のバグ)は、太郎の生命活動と完全に癒着しているのだ。もし、この干からびた人間の男がここで死んでみろ。

シャルロット姫様の『安全装置(唯一の精神的ストッパー)』が完全に消滅し、愛する夫を失った悲しみと怒りで、今度こそガラム王国はおろか、この世界の人類全体が彼女の放つ超高熱線によって文字通り「絶滅」させられてしまう。


「太郎様、ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、真実を知って嬉しすぎて、加減というものが分からなくて……! 死なないで、太郎様ぁ!!!」 大粒の涙をボロボロと流し、太郎の骸骨のような体を揺さぶる姫様。その度に太郎の残された骨がミシミシと鳴り、余命が削られていく。



「全軍に告ぐ! 国内の、いや世界中のすべての高位治癒魔導師を今すぐ集めろ! 教会も、エルフの里も、ドワーフの秘薬も、すべてをここに投入しろ! あやつを、山田太郎を絶対に死なせるなァァァ!!! あやつが死ねば、本当に人類が滅びるぞ!!!」 国王の、血を吐くような絶叫が王都の空に響き渡った。 


ガラム王国の全魔導師、エルフの里の聖なる薬草師、ドワーフの最高級蘇生薬、そして聖国から慌てて駆けつけた教皇をはじめとする【ほぼ全人類による、国家と種族の垣根を超えた限界突破の『超回復施術マルチキャスト』】が、ベッドの上の太郎に向かって、二十四時間体制で嵐のように注ぎ込まれた。 全人類が、己の存亡を賭けて、一人の四十歳の日本人男の命を繋ぎ止めるために必死になって魔法を唱え続けるという、前代未聞の奇跡の光景。


「……う、うおっ」 数日後。太郎は、全身を包む凄まじい魔力の温かさと共に、奇跡的に一命を取り留め、ゆっくりと目を覚ました。 骸骨のようだった肉体は、全人類の必死の回復魔法のおかげで、元の健康な四十歳の自衛官のスペックへと完全復活を遂げていた。 太郎が視線を動かすと、ベッドの脇では、国王、王妃、老宰相が、まるで世界の終わりを回避したかのように、涙を流して抱き合って喜んでいた。「おおお! 山田殿が生き返った! 神よ、感謝いたしますぞ!!!」「山田殿! 本当に、本当によくぞ生きて戻ってくださいました……!」 


そして、その王族たちの真ん中で、新しく仕立て直された美しいドレスを身に纏い、顔を真っ赤に染めたシャルロット姫様が、今にも消え入りそうなピュアな顔で太郎の手をギュッと握りしめていた。「太郎様……! 本当に、ごめんなさい……。

私、人間(の男の人の身体)は、一度にそんなに『数(回数)』ができないものだなんて、知らなくて……。これからは、太郎様の健康のために、絶対に、命がけで我慢いたしますわ……!」 真の教育(現実)を受け、大人の限界というものを学んだ最強の婚約者。 


太郎は、自分の右腕に伝わるその温かさと、ベッドの周りでガタガタと震えながら自分に「頼むからもう二度と逃げないでくれ、人類のためにベッドの上で耐えてくれ」と目で懇願してくる国王たちの姿を見つめながら、深い、深い溜息を吐き出した。


(……ははは。逃げられないね、これ。地球の裏側に逃げても成層圏飛行で追いつかれるし、俺が死んだら人類滅亡のラスボス戦が始まっちゃうんだもんなぁ。

ウケるね、本当に。笑えないけどさぁ) 



四十歳の独身自衛官は、顔面に押し付けられる極上の柔らかさと、隣にいる『ゴジラの処女教育』という、人類の命運を背負ったあまりにも重すぎる義務のジレンマに脳内で宇宙猫の顔をして悩みながらも、ついに完璧に埋め立てられた外堀の中で、愛らしくも恐ろしい最強のワイフと共に生きる、新たな『調教師』としての本当の覚悟(諦め)を決めるのだった。

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