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自衛隊員サバイバル日記改  作者: kero


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国境の街道と、歩く殲滅兵器

「あはは、今日も我が愛車は絶好調。

ドワーフ特製のガソリンはちょっと癖があるけど、現代日本のエンジンは文句も言わずに回ってくれて助かるねぇ」

 王都を出発し、最初の目的地である『エルフの里』へと続く街道。

山田太郎は高機動車のハンドルを握りながら、おどけた調子で鼻歌を交えていた。

表向きは「超古代文明の痕跡調査」という国家プロジェクトだが、太郎の真の目的は、隣に座る最凶の婚約者・シャルロット姫様を打倒できる『天敵』と、婚姻契約の『解除呪文』を探すための、諦めの悪い逃亡サバイバルである。


後部座席では、太郎からマルチツールを譲り受けてホクホク顔のやんちゃ坊主・レオが、窓の外を流れる景色を眺めていた。


「ねぇ、太郎様。シャルロットは、こうして太郎様と寄り添って鉄の馬を走らせるだけで、胸の奥がキュンと締め付けられますわ……♡」

17歳、130センチのロリ巨乳姫様は、太郎の右腕にギッチリと抱きつき、衣服を破らんばかりの肉圧を押し付けてくる。太郎は「骨が折れる、骨が折れる」と内心で悲鳴を上げながら、愛想よく笑顔で受け流していた。


そんな緊迫した(?)新婚旅行?の道中、前方に一台の『壊れた馬車』が見えてきた。

街道の脇で、車輪が完全に外れた馬車の前で、一人の若い女性が途方に暮れたように佇んでいる。衣服の仕立ては行商人のそれだった。


「あら? 困っている人がいますわ。太郎様、助けてあげましょう!」


「おやおや、それは大変だ」

太郎は高機動車を停め、車を降りたが――その瞳は、歴戦の叩き上げ士官の冷徹な観察眼へと切り替わっていた。

(おかしいねぇ。ここは王都から目と鼻の先の、いくら治安が最高に安定しているはずの主要街道でも。

若い女性が護衛も御者も連れずに、たった一人で商売の馬車を転がして良い訳がない。……怪しさ満点、警戒度一二〇パーセントだ)


太郎はすぐに「罠」だと見抜いた。

だが、ここで無下に断れば、隣の正義感の強い超古代兵器(姫様)が不機嫌になって自分の首をハネかねない。

太郎は持ち前の朗らかな笑みを顔に貼り付け、女性に近づいた。


「お困りですか、お姉さん。私はしがない旅の者ですが、よければ次の村までお送りしましょうか?」

「あ、ありがとうございます……! 近くの村に用事があるのですが、馬車が壊れてしまって……!」

 女性はしおらしく頭を下げたが、太郎はその一瞬の「ニヤリ」とした目元の歪みを見逃さなかった。道の相手をハメようとする、底の浅い悪党の顔だ。

(やっぱりね。よし、あえて嵌められてやろうじゃないの。こっちには、どんな物理法則も通用しない『歩く戦略兵器』がついてるんだからさ)

太郎は内心で邪悪に笑いながら、女性を高機動車の後部座席へと要領よく案内した。


*


案内されたのは、街道から少し外れた、鬱蒼とした森に囲まれた小さな村だった。

車が村に入ると、村人たちがゾロゾロと集まってきた。

皆、一見すると素朴な農民のようだが、その全員の目がギラギラと濁っており、高機動車や太郎の迷彩服を「身ぐるみ剥ぐ価値のある極上品」として値踏みしているのが丸分かりだった。

「おお、旅のお方! 娘を助けてくださって感謝いたします! ぜひ今夜は、我が村の宿に泊まって、粗茶ですが一晩羽を伸ばしていってください!」

村長らしき老人が、揉み手をしながら温かい笑顔で迎える。

「いやぁ、そりゃあありがたい。お言葉に甘えさせてもらいましょうかねぇ」

太郎はおどけた調子で快諾した。


案の定、ここは迷い込んだ旅人を親切に迎え入れ、夜中に寝込みを襲って全財産と命を奪い続けてきた『野盗の村』だったのだ。何も知らない一般人ならここで終わりだが、彼らは致命的なまでに、連れ込んだ相手の『質量』を理解していなかった。

その夜。村の一角にある木造の宿舎の一室。


太郎とシャルロット姫様、そしてレオは、一つの大きな雑魚寝用のベッドに横たわっていた。当然、太郎は勧められた食事は取らず寝たふりをしながら、あらゆる神経を研ぎ澄ましていた。

丑三つ時。

ギィ……と、床板が微かに軋む音がし、部屋のドアが音もなく開いた。

闇の中に浮かび上がったのは、昼間の温厚な笑顔を消し去り、ギラギラと輝く剥き出しのナタや鉄のクワを握りしめた、数十人の村人――いや、野盗たちの姿だった。

「へっへっへ……あの鉄の馬と上質な服、高く売れそうだぜ。

ガキごと全員、一突きで――」

野盗の頭がナタを振りかぶった、まさにその瞬間。


「――はい、不法侵入罪で現行犯逮捕、おっと、この世界じゃ死刑だっけ?」

太郎が暗闇の中でパチリと目を開け、朗らかに言い放った。

「なっ……起きて――」


野盗たちが驚愕したときには、すでに太郎の隣の『防衛システム』が完全起動していた。

「太郎様との甘い夜の睡眠を邪魔する不届き者は――消え去りなさい!!!」

シャルロット姫様が、ネグリジェ姿のままベッドから飛び起きた。

そして、ただ愛らしく、小さな右腕を「フンッ」と横に一振りした。

ただそれだけだった。魔法の詠唱も、魔力の輝きもない。ただの物理的な『腕のひと振り』。

しかし、超古代の惑星間戦争用生物兵器のオリジナルスペックが放ったその一撃は、周囲の空気を一瞬で真空に変え、凄まじい衝撃波(ソニックブーム)を生み出した。


 ――ドゴォォォォォン!!!

 爆音と共に、部屋に侵入していた二十人以上の野盗たちが、まるで大砲の直撃を喰らったかのように、まとめて壁ごと外へと吹き飛んでいった。

木造の宿舎の壁が木端微塵に弾け飛び、野盗たちは骨をバキバキに砕かれながら、一瞬で全滅した。


「ひ、ひぇぇぇ……ッ!」

 ベッドの上で、太郎はあまりの風圧と破壊力に、ガタガタと歯を鳴らして戦慄していた。毎度のことながら、このロリ巨乳の婚約者は戦闘の規模がおかしい。

薬入りの食事もパクパク食べていたのに全く効いてい無い。

現にレオ(御守り)ぐっすり眠て起きる気配もない。

壁がなくなった宿舎の外には、さらに増援の野盗たちが数十人、弓矢を構えて取り囲んでいた。

「バ、バケモノめ! 射て! 射殺せ!」

 一斉に放たれる無数の矢。ヒュンヒュンと風を切る鋭い矢の雨が、ネグリジェ姿の姫様の全身へと降り注ぐ。

しかし、姫様はそれを避けることすらしなかった。

パパパパン!と、乾いた音が響く。

矢は姫様の白い肌に当たった瞬間、まるで【鉄板に当たったストローのように、ぐにゃりと折れ曲がって地面にポロポロと落ちていった】。

服は破れているようだが身体の方は皮膚に赤み一つ、擦り傷一つすらついていない。衣服を破らんばかりの巨乳も、矢を弾き返してプルンと揺れているだけだった。


「益々戦慄……! 矢が効かない! 避けない! 痛がりもしない! なんだあいつ、人間じゃない……いや古代兵器なのは知ってるけどさぁ!」

太郎は恐怖のあまり、ベッドの毛布にくるまりながら絶望しまくっていた。


月光を背に浴びて、無数の矢を弾き返しながら不敵に微笑む130センチの姫様の姿が、四十歳の太郎の脳内では、完全に【大怪獣ゴジラ】のシルエットへと書き換えられていた。

あかん、あれは個人の武力でどうこうできる相手じゃない。

実質ゴジラだ。

怪獣だ。……よし、俺は今から自衛隊の一等陸尉として、防衛省および日本国政府に対し、あの『特異災害(シャルロット)』に対する【核兵器の使用許可(特例措置)】を脳内で申請する! 承認番号、マルマルヒトヒト……よし、核の使用許可は降りた! 脳内では俺が勝ってる、脳内では俺の勝ちだぁぁぁ!!!)太郎が恐怖のあまり一周回って、必死にそんな「斜め上の脳内妄想(現実逃避)」で精神の平穏を保とうとしているうちに――外の喧騒は、すべて静寂へと戻っていた。


姫様が軽く足を踏み鳴らし、周囲の地面ごと野盗たちをまとめて陥没させ、すべての生存を終わらせていたのだ。


翌朝。

あちらこちらに人体の一部らしきものが飛び散る中、全滅した『野盗の村』の真ん中で、太郎は完全に白目を剥いて、高機動車のボンネットに突っ伏していた。

慈悲も躊躇もなく皆殺し!異世界とはいえ許されるのか?……可愛い姿とのギャップがあり過ぎる、

姫様の気分次第では……俺もああなる(王たちの何処か腰の引けた対応は納得だな、怖い、)

「さんぼう、おはよー! 朝ごはん、あの倉庫にたくさん干し肉があったぞ!」

 やんちゃ坊主のレオが、野盗たちがこれまでに剥ぎ取ってきた旅人の遺品の山(宝の山)から、呑気に飯を探して走ってくる。

「……ははは、レオ坊っちゃん、元気でいいねぇ。俺はもう、心臓が止まりそうだよ」


 太郎はヨロヨロと立ち上がると、高機動車のドアに手を伸ばした。

 ここは王都に近い。一度王都へ戻り、昨日手合わせして心服させた若手騎士団に通報して、この野盗の村の戦後処理(遺品や死体の回収)を任せるのが一番要領が良い。

「よし、姫様。ちょっと忘れ物、あ、いえ、王都の騎士団のお友達に、この村の『お掃除』を頼みに行きましょうかねぇ」

「はい、太郎様! 太郎様と一緒なら、どこへでも戻りますわ!」

 昨夜、大量の人間を砂の柱のように薙ぎ倒したとは思えない愛らしい笑顔で、姫様が太郎の左腕にギュッと抱きつく。ミシミシ、と太郎の腕の骨が悲鳴を上げる。

(やっぱり、あのゴジラ(姫様)を倒せる天敵を、世界中から探さなきゃ俺の命が足りない……! 文明の痕跡探しっていう大義名分で、絶対に世界中のヤバい奴らを探し出してぶつけてやるからな……!)

恐怖のあまり、さらに「諦めない逃亡計画」の執念を燃え上がらせた四十歳の参謀は、再び王都へと高機動車を U ターンさせるのだった。


彼らのハラハラドキドキ(太郎限定)の世界探索サバイバルは、まだ始まったばかりだった。

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