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魔法のプロトジェ バーニングマイ  作者: 衛府 恵
File 6: ザイニンデショーン事件
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第44話:ほんとは そーゆーキャラじゃないんでしょ?

「お、ど、どうなってんだこりゃ!?」


上空から紅明を叩き落とした友梨佳は、しっかりつかんでいたはずの大きなスプーンが急に消失したことに戸惑っていた。


しかしその疑問は、目の前で空間がブロックノイズに乱れ、水平に浮かんだスプーンに腰掛けた紅明が現れたことで霧散する。


『たっだいま〜!酷いじゃない?あんなことするなんて。でも、このスプーンを返してくれて助かっちゃったわぁ』


《どうやらあのスプーンが瞬間移動や空中浮遊を起こす、力の源らしいのである。あのスプーンを彼女に近付けるのは危険だという施恩の直感は正しかったといえよう。それをあまつさえ打撃に使うとは呆れたことであるな》


(ちっ、分かってるよ。つい、ってやつだ。これから挽回してやるから、見てな!)


ダニーの指摘に、友梨佳は内心で毒づいた。


「畜生め。そのワケの分かんねえスプーン、ブッ壊させてもらうからな!」


紅明はコテンと小首を傾げた。


『できるのぉ?このスプーンは悪意でできてるのよ?いっつも虚勢ばっかり張って、強そうな言葉遣いをしてるだけのあんたに、どうこうできるワケないじゃない。アハハ、あーおかしい』


「なんだとテメエ」


嘲笑する紅明に友梨佳は表情を険しくした。


『アハハ、今だって、その左手が使い物にならなくなってるの、隠してるくせに!』


友梨佳は思わず左手を身体の後ろに隠した。先ほどスプーンを握って紅明を打ち据えたその手は、ドス黒く変色していたのだ。彼女はスプーンをつかんでいた時から、その手が激しく痛み感覚を無くしていくことを無視し──確かに虚勢を張っていた。


後退して紅明から少し距離を取りながら、友梨佳は顎の先端から汗が1滴、ぽたりと落ちるのを感じた。そして、頭を振ると右手でオールをくるりと回し、それを紅明に向けて絶叫した。


「もう許さねえ!覚悟しやがれ!」


その頃地上では、舞と「もう一人の紅明」が対峙していた。だが、そのことは全く目にも入らないくらい、視野は狭まっていた。


「ラピッド・ストリーム!」


友梨佳はジェットを全開、オールを前に突き出して突進しながら、魔法でさらに自身を加速させる。


『アハハ、焦ってるぅ。おっかしいの』


紅明はスプーンに腰掛けたまま、スプーンを軸にくるりと一回転して難なくそれをかわした。


「このおっ!もう一度、ラピッド・ストリーム!」


通り過ぎた友梨佳は反転して再加速する。


『無駄よぉ。ユビキタス・マリス』


呪いのワードを吐きながら、紅明は再び難なく回避。


またしても通り過ぎた友梨佳だったが――


『私、ずっと気付いてたのよぉ?』


耳元で囁かれてその身を硬直させる。紅明がいつの間にか、友梨佳にぴったりと追従してきたのだ。


『あなたのその言葉遣い、実は相当無理してるでしょ?』


「やめろ」


友梨佳は顔を歪めた。


『本当は弱いのを隠して、みんなを騙してる』


「やめろ」


『いやよぉ。こんなに卑怯で醜いお前のことなんて、絶対に認めないんだから。徹底的に追い込んでやるから覚悟しなさいよぉ!』


顔面蒼白で辛そうな様子だった友梨佳は、その言葉に表情を一変させた。


「このクソがあっ!」


悪態をつきながら空中で身体を回転させ、オールで紅明を打った。


バシン!


『痛いわねえ!逆ギレでもしたの!?』


「うるせえ!てめーのセリフ、この間ガッコーの講話で言ってた、SNSで他人を叩くやつとそっくり同じじゃねえか!自分勝手な正義感を振りかざしやがって!」


紅明はスン、と表情を消してスプーンを右手に取ってくるりと回すと、空中に直立した。


『キモい。自分が悪いくせに』


「あたしが卑怯で小せえ人間だなんて百も承知なんだよ。でもな、施恩や他のみんなの気持ちをシャットアウトして、勝手に罪の意識に押しつぶされたテメエにそのことを言う資格なんてあるのかよ!」


『勝手に?私のことをみんなで追い込んでおいて!』


「テメエそんなふうに思ってたのかよ!?もう問答無用だ、覚悟しやがれ!」


『来なさいよ!へし折ってあげる』


ガキィン!


2人は同時に加速してオールとスプーンをぶつけ合った。


ガキィン、ガキィン……ガキィン!


声もなく打ち合う2人──


ドーン、ガラガラガラ


下から、建築中の建物に舞が叩き込まれ、内部がメチャクチャにされた音が響く。


ガキィン!


ガキィン!


(……何だ?)


その後さらに2度打ち合った直後、友梨佳は紅明の「存在感」が増したのを感じた。それでも構わず加速した友梨佳はフェイントからの変化でオールを薙ぎ払う。


(捉えた!)


だが、オールが直撃したと思った瞬間、紅明の体はブロックノイズに掻き消えた。


『ばあか』


友梨佳の背後に転移した紅明がスプーンを両手で下向きに持ち、頭上に掲げる。そして、そのまま友梨佳の翼に取り付けられたジェットエンジンの一方、そのエアインテークに突き立てた。


ガシャァン!


「うわああああっ!」


友梨佳はバランスを崩し、錐揉み状態で墜落していった。


◇


《生き残ったエンジンの出力を上げるのである。頭を下に向けて、まずはローリングを止めるのである!》


(お、おう……)


ダニーのアドバイスを受け、果敢にも頭から地面に向けて加速した友梨佳は、どうにか錐揉み回転を止めて地表スレスレで反転した。


「クッソぉ、瞬間移動は反則だろ……このまま片肺飛行じゃ悔しいが勝ち目がねえぞ?撤退するしかねえのか……」


《禁忌魔法の使用を提案するのである》


「本気か?相手はバカになっちまったとはいえ、あの紅明だぞ?殺す気か?」


《危険ではある。だが、終焉型禁忌魔法の威力調整は比較的容易である。周囲一帯の物理法則を一時的に不安定にさせ、戦闘行為そのものを成立困難にするのである》


「……ヤベエな、信じていいのかよ?」


《心外である。吾輩が貴女に嘘をついたことなど、ありはしないのである》


上昇していた友梨佳は速度を落とし、片方のエンジンだけで器用にホバリングした。


《心を燃やし、貴女の中の渦を感じるのである。そうすれば、禁忌の扉は開くのである》


「そうかよ……じゃあ、こうするしかねえな!ラピッド・ストリーム!」


生き残ったエンジンのパワーを全開にした友梨佳は、破壊された側のエンジンの推力を魔法に代行させ、紅明に向けて加速する。


紅明は空中でスプーンを構え、迎え撃つ構えを取った。


「おおおおっ」


加速する友梨佳のエンジン内で高速回転するファン。彼女は、自分自身が力強いジェットエンジンになったように錯覚する。


(回れ、回れ、あたしのエンジン……)


そして、心が命じるままに、禁忌の言葉を口にした。


「ヴォルテッカ!」

【タイトルのネタ元】

PEACH-PITの漫画「しゅごキャラ!」(2006〜2010年)

日奈森あむの独白「ほんとは そーゆーキャラじゃないんだけど…」

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