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魔法のプロトジェ バーニングマイ  作者: 衛府 恵
File 4.1: テロリストデショーン事件(その2)
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第21話:誰も…市役所に言っていないのである!!!

「お母さん、ごめんね。わたし、お母さんを否定したくなくて、逃げてた。でも……わたしに興味を無くしたみたいに政治にのめり込むなんて……酷いよ……」


黒い靄が霧散する。その場に残された愛彩の母、塔子はうっすらと目を開けて、うわ言のように口にした。


「売国勢力から……愛彩を守らないと……」


《デショーン化が解けてなお偏見に囚われているなんて、重症ね》


(でも、何とかなりそう)


《脳天気ね。羨ましいわ》


(よく言われる)


愛彩は変身を解いた。同時に紅明のヒョウ、友梨佳のラーテルの特徴も消失する。


「やれやれ。ローザ、愛彩ちゃんとは、もう大丈夫そうってことでいいのかよ?」


この捻くれたメントルの暴走に振り回された友梨佳がボヤくと、ローザはバツが悪そうに目を逸らした。


「そうね。迷惑をかけたわ」


「愛彩ちゃんも、魔法少女は続けるってことでいいんだな?」


「うーん、あまり、積極的には……」


「馬鹿なことを言わないで」


言いよどむ愛彩に、冷たく言い放ったのは紅明だった。


「デショーンは偏見が形をなしたモンスター、その発生原因は不明で対抗できるのは魔法少女だけ。あなたはその責任から逃げるつもり?」


「えい!」


紅明の詰問を受けた愛彩は、突然ローザを捕まえた。そして口を塞ごうとしたが、その試みは失敗に終わる。


「ちょっと、何するのよ!折角デショーン化を引き起こしているのがアンチ・メントルだと分かったというのに!」


「「アンチ・メントル?」」


「……言われた」


紅明と友梨佳の声が揃う。愛彩は諦めたようにローザを解放した。


「あー、絶対面倒臭いことになる……」



アンチ・メントルの情報を知った友梨佳と紅明の驚きは大きかった。これまで、人間がデショーンになる理由は全く分かっていなかったのだ。


「そのジョセフ・マッカーシーってやつが愛彩ちゃんのお母さんをそそのかしてデショーンにしたってのか……これまでのデショーンもそいつが?」


「それはどうかしら?人の目の前でデショーン化が起きたことは何度もあるけれども、その場にアンチ・メントルがいたという話は聞いたことがないわ」


友梨佳と紅明の疑問に、愛彩が仮説で答えた。


「それなら、こっそり人に黒い雫を振りかけていく別のアンチ・メントルがいるか、全然違う方法でデショーンになることもあるのかの2通り」


「そんなところでしょうね。ところで愛彩、どうしてさっき、私の口を塞ごうとしたのよ?このことが明らかになって困るのは秘密結社バイアースとかいう連中で、あなたではないでしょうに」


「……こんなの、絶対長い報告書にしないといけないし……」


ローザに問われてなんとも情けない理由を答える愛彩に、皆呆れた目を向ける。


「そりゃねえぜ、愛彩ちゃん……あたしも報告書は苦手だけど、ちょっとくらいは手伝ってやるからよ。まずは明日、加納先生に申告書を出さねえとだな」


「そうね。私も施恩さんもきっとサポートするわ」


「ありがとう。ええと、友梨佳先輩に紅明先輩」


人の名前を覚えるのが苦手な彼女だが、舞との話によく出てくる2人の名前は何とか覚えていた。


「よし、これで一見落着……って何か忘れているような……あっ、愛彩ちゃん、舞ちゃんどうした?」


「忘れてた」


友梨佳に聞かれ、慌てた愛彩はフラコンに手を当てる。


(舞ちゃん、大丈夫?)


(あ、やっと連絡が……大丈夫生きてる……さむい……)


「……やばいかも」


愛彩の呟きを拾った友梨佳は翼のエンジンを点火した。


「紅明!愛彩ちゃんのお母さん見ててくれ!あたしはこの子連れて舞ちゃん助けに行く!」


「分かったわ」


友梨佳は愛彩を抱えると全力で飛び立った。



「頑張れ!水を止める作業をしているからな!」


消防隊員が励ましの言葉をかける。増水した側溝に頭がはまった舞の救出は難航していた。水を止めない限り危険で作業ができないのだが、その、水を止めることが難しかったのだ。


「ダメです!土のうをいくら置いても脇から流れ出してしまう」

「ダメで済むわけ無いだろう!いくら魔法少女だといっても、きっと限界あるぞ」

「クソ!違法構造物だろこれ」


現場の水路は市の図面とは構造が異なっていて、水の経路がはっきりしないのが作業を阻む要因となっていた。周辺住民に聞けば、大雨のたびに水浸しになるのに長年誰も苦情を上げていなかったのだという。


誰かが言うはず……が誰も言っていなかったという「あるある」が舞をピンチに陥れていた。


「おーい!舞ちゃーん!」


上空から友梨佳の声。


「水のことなら任せろ!フロー・スタグネイション」


友梨佳が魔法で水の流入を停滞させると、ポンプによる排水量が流入量を上回る。舞の顔を浸していた水位はみるみる下がっていった。


「はあ、はあ……酷い目にあった……」


限界が近かった舞は、変身を解いて脱力した。


「友梨佳ちゃん、愛彩ちゃん……どうして……」


「ごめんね、舞ちゃん」


愛彩が謝罪したが、返事は返ってこなかった。


消防士が側溝の一部を壊して舞を救出するのにはさらに30分を要した。それまでフロー・スタグネイションを維持し続けた友梨佳も、大概消耗して帰宅した。


だがそんな苦労が舞の傷心を慰める役に立つはずもなく……それから1週間、舞は友梨佳と愛彩の2人とは口を利かなかった。

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