↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法のプロトジェ バーニングマイ  作者: 衛府 恵
File 4.1: テロリストデショーン事件(その2)
PR
20/67

第20話:愛と彩りのナース服美少女戦士、ジェネティックメア!

『イランジンハ、テロリストデショーン!』


友梨佳と、彼女に呼び出された紅明は苦戦していた。


テロリストデショーンが向かったのはアリの自宅兼店舗「テヘラン」だった。店の前にはアリとその父がデショーンに向かって叫んでいる。


「うちは真っ当に商売をしているだけだぞ!」

「そうだぞ、この差別ヤロー!」

「危ねえぞ!下がれって!」


友梨佳はそんな2人を必死に押し止めていた。


「フォトニック・レイ」

『イタイデショーン!』

「キリがないわ。まっすぐこっちに来ようとしているだけ、やりやすいけれども」


紅明も2人の前に立ちはだかりながら光線を放つ。デショーンは光線が当たれば痛がって下がるが、またすぐに近付いてくるのだ。紅明のフォトニック・レイは1発ごとのクールタイムがやや長いため、先程から押し返しては近付かれるという繰り返しとなっていた。


「ハハハハハハ!」


そんな現場に響き渡る高笑い。見れば、電柱の上に手脚がいやにガッシリとした赤いナース服が立っている。ジェノム・エディターで手脚をゴリラに変えた愛彩だった。


「愛と彩りのナース服美少女戦士、ジェネティックメア!天に代わって、お注射よ!」


「『………』」


振り付けも完璧に名乗りを上げたが、人間も、デショーンも、全員が凍り付いた。


《電柱に登るためとはいえ、ゴリラの手脚のままでやることではないわね》


いや、人間の手脚に戻していたとしても、結果は同じだったろう。愛彩もまた、盛大にスベったことを自覚してポーズをとったまま固まった。


◇


「愛彩ちゃん……だな。おーい、どうしたんだ?昼間とは格好が違うじゃねえか」


沈黙を破ったのは友梨佳だった。


「昼間のはお試し。こっちが本番」


その声は決して大きくはなかったが、夜の住宅街に反響した。


『イ、イ、イカガワシイデショーン!!』


デショーンは、真っ赤なナース服にゴリラの手脚という姿に、どういうわけか不道徳さを見出したらしい。あるいは、ナース服のスカートが短すぎると感じたのかもしれない。愛彩の方を向くと青い肌が赤みを帯びるほど怒った。


『フオオオオ……ボオッ!』

「うわっ!」


大きく息を吸い込み、炎を吐き出す青い肌のジン。愛彩は器用に素早く電柱から地上へと降りた。その口元が孤を描いていることには、誰も気付かなかった。


「ジェノム・エディター チーター・ダッシュ」


一瞬、赤い液体に包まれる愛彩。液体が弾け飛ぶとチーターの耳としっぽを生やし、素早くデショーンに迫る。


「お母さん、戻って来て!ワクチン・インジェクション」


デショーンが振り回す手脚を掻い潜って接近した愛彩は、巨大な注射器をその臀部に突き立てた。


『ワクチン、毒デショーン!』


「危ねえ!ストリーム・バリア!」


退避する愛彩に迫るデショーンの拳を、友梨佳のバリアが防ぐ。


「フォトニック・レイ」

『デショーン!許サンデショーン!』


紅明の攻撃が命中するが、デショーンは痛がるどころかますます激高した。


「まるで効いていない……」


顔を青くする紅明の隣に、愛彩が走り込んでくる。


「先輩、力、要る?」


「えっ?」


「耳やしっぽが生えて、チーターみたいになる力を先輩にもってことじゃない?」

「それならヒョウがいい」


察しの良いアリが言うと、アリの父はイランを象徴する野生動物、ヒョウの名を挙げた。


「よし、ジェノム・エディター レパード・クロー」


愛彩が注射器を紅明に向け、赤い液体を押し出す。


「何を!?」


短く悲鳴を上げた紅明はその液体に包まれ、そして飛沫が弾けた。紅明には愛彩とよく似た耳としっぽ……だが耳はより尖り、しっぽは細長かった。


「勝手に何を……でも、力が湧き上がるようだわ。話は後ね。まずはこの力、試させてもらうわよ」


紅明はしなやかな動きで飛び出すと、デショーンを翻弄しながら懐に飛び込み、その背中に取り付いた。


「フォトニック・インパルス」

『イタイデショーン!イタイデショーン!』


至近距離から時空間的に圧縮された光線を叩き込まれては、いかに興奮したデショーンといえど無視できないダメージになったようだ。


「いいなあれ!あたしにもやってくれよ!」


その様子を見た友梨佳が紅明に要求する。


「いいよ。何の動物がいい?」


「ラーテルって知ってるか?あたしはあれが好きなんだ」


「わかった。ジェノム・エディター ラーテル・スキン」


赤い液体が弾け飛ぶと、友梨佳の髪の上半分が白く染まり、腰からは黒い短いしっぽが生えた。


「よっしゃ!これは……心が燃えるぜ!いっちょやったらあ!」


友梨佳は飛行するのも忘れて一直線にデショーンに突進した。


「ラピッド・ストリーム!」


さらに、魔法で自分自身を加速し、下から突き上げるようにデショーンに体当たりする。友梨佳の皮膚はラーテルの強靭なそれとなって自分を守りながら巨大なデショーンをかち上げ、そして、魔法によって加速方向を反転させてその巨体を重力加速度を超えた勢いで落下させた。


ズシーン!『イタイデショーン!』


「もう一度!フォトニック・インパルス」


背中に取り付いたままの紅明が追加の一撃を入れる。さらに、いつの間にか愛彩もそこに近付いていて、注射器を振り上げた。


「お母さん、いい加減、ちゃんとわたしを見て!」


深々と突き刺さった注射針から、たっぷりと赤い液体が注入される。愛彩の目からはぼたぼたと涙がこぼれた。


「これは、毒じゃないよ。わたしの涙」


『デショーン……』


強力だったテロリストデショーンは、ようやく黒い靄を噴き出し始めた。

【タイトルのネタ元】

武内直子の漫画「美少女戦士セーラームーン」(1992〜1997年)を原作とするテレビアニメでの、月野うさぎの名乗り口上「愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラームーン!月に代わって、おしおきよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。