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魔法のプロトジェ バーニングマイ  作者: 衛府 恵
File 4.1: テロリストデショーン事件(その2)
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第17話:ありのままの心見せるのよ ありのままで突っ込んでみるの

愛彩の母がデショーン化する、その少し前。水泳部から帰宅した友梨佳はローザに詰め寄っていた。


「おい、戻って来ちまうとは、どういう了見だ?」


「……折角見つけたと思ったプロトジェが、戦いから逃げる腑抜けだったのよ」


「それで、ウチでイソーローを続けんのか?やっとあの大量のシリョーやらシリョーやらが片付いたと思ったのに、またあれが湧いてくんのか?ダニーは全然散らかさないのに、どうなってんだあれ?」


「試料も資料も研究に必要なものよ」


友梨佳の剣幕にたじたじとなりながらも反論するローザ。


「そ、それに、ワーヌの実験器具だって、随分多かったじゃない」


ワーヌが舞のメントルとなる前、友梨佳の家にはダニー、ワーヌ、ローザの3体のメントルが暮らしていた。それぞれが友梨佳の部屋で研究をするものだから、彼女の生活スペースはかなり圧迫されていたのだ。


「あれは量は多くとも、完璧に整理整頓されておった。そも、我々の資料の量にさほど違いはないと考えるが、貴女のものだけ占有面積が不当に大きかったのではあるまいか?」


「ぐっ……」


ダニーにまでそう言われ、黙り込むローザ。友梨佳はニヤニヤしながらローザに近付いて顔を寄せた。


「それに、施恩先輩から聞いたぜぇ?あんた、随分みっともなく喚き散らしたそうじゃねえか。あたしには、愛彩ちゃんを説得できなかった腹いせに、ワーヌとエディに当たり散らしたように聞こえたけど、違うかなあ?」


「ぐぬぬぬ……そ、そうよ。私はみっともなくて惨めな女なのよ……折角、優秀なプロトジェを手に入れたと思ったのに……これで私から奪った奴らを見返してやれると……ひぃん……」


追い詰められたローザはとうとう拳を振るわせて泣き出してしまった。


「あんたさあ、素直に愛彩ちゃんに一緒に戦ってくれって頼んだのかよ?あたしには、あの子が他人のそういう気持ちを無碍にできる子には見えなかったぜ?どうせあんた、プロトジェになれ、とか戦え、とか言って一方的に迫ったんだろ?いっぺんそういうのは置いておいて、心と心でぶつかってみろってんだ」


「分かっているでしょう?私の心は恨みつらみで真っ黒に塗りつぶされているのよ……こんな汚いもの、さらけ出せるわけがないじゃない!」


「さらけ出すもなにもバレバレじゃねえか。なあ、ダニー?」


「うむ、隠していないものをさらせないとは不合理である」


ローザはそれを聞くと、がっくりと肩を落として下を向き、黙ってしまった。


「おい、大丈夫か?……わりい、ちょっと言い過ぎちまったみてえだ……」


沈黙に耐えかねた友梨佳が様子を伺うように話しかけると、ぶわり、とローザから異様な雰囲気が広がった。


「はは、はははは、はははははは!……そうね、このどす黒い心が悪かったんだわ……だったら、愛彩にも恨みつらみを擦り込んで同じところまで堕としてやればいいのよ……そうと分かれば、善は……いえ、悪は急げだわ!」


そう言うと窓を開けて外に飛び出そうとする。


「ちょ、何でそんな」


斜め上のことを、と言おうとした友梨佳は、振り返ったローザの凶相に息を飲み、その先の句を継げなかった。その隙に、彼女は外へと飛び出していく。


「いかん、このまま愛彩君に接触してうまくいくとは思えぬ。変身して空から追うがよい」


「お、おう。マジックフロー・シーケンス・イニシャライズ」


友梨佳は変身すると自宅の窓辺で銀翼を広げ、夜空へと離陸した。



《メントルはプロトジェの居場所を感じることができるから、ローザ君は愛彩君の家に向かったはずである。場所は分かるかね?》


(いや、知らねえ。でも、舞ちゃんの小学校の時からの親友なんだから、似たような住所じゃねえかな?)


《では舞君の家に……いや、舞君を呼び出す方が良い》


そんなわけで舞の家の近くで、友梨佳と変身した舞は合流した。


「悪りぃ、舞ちゃん。ローザが愛彩ちゃんのところに向かったけど、様子がヤバかったんだ。愛彩ちゃんの家、どこだか教えてくれ!」


「う、うん。すぐ近くだよ。着いてきて。クイック・リアクション!」


舞はジャンプして家々を飛び越えた。


『テロリストデショーン!』 ガシャーン!


(愛彩ちゃんの家の方!)


滞空中に絶叫とガラスの砕ける音を聞いた舞がその方向を見ると、巨大な青い肌のジンが路地に駆け出していく。


「デショーン!?……って、何、何?」


驚く舞は、体がふわりと浮かび上がってさらに混乱した。


「イテテテ、この翼、尖ってやがる……舞ちゃん、動かないで。運んでやるから」


後ろから飛行してきた友梨佳に背中から抱えられたのだ。舞の背にある放熱翼が邪魔で、友梨佳は四苦八苦している。


「ごめん、友梨佳ちゃん。ありがとう」


舞は友梨佳が抱えやすいように体を硬直させた。


(速い……!ちょっと怖いかも?)


「待って、お母さん!」


道を走るデショーンを追い、愛彩が家から駆け出してきたのはそんな時だ。友梨佳は高度を落とし、愛彩の背後から追いすがるようにアプローチした。


「舞ちゃん、降ろすよ」


「えっ?」


舞を放し、翼とエンジンでブレーキをかけながら愛彩の後ろに着陸する友梨佳。カチコチに固まっていた舞にかかる空気抵抗は友梨佳の魔法の効果で異常に低くなっており……彼女はほぼ等速直線運動でデショーンに直撃した。


「えええーっ!」

『デショーン!』


舞に突っ込まれ、ひっくり返るデショーン。


「あちゃー。ごめーん、舞ちゃーん!」


《空気抵抗に重力。完璧に計算された軌道であるな》


(いや、そんなつもりなかったって!舞ちゃん大丈夫かな?)


《魔法で保護されておるから大丈夫だろう。恐らくだが》


ダニーは友梨佳の軌道計算を称賛したが、実際にはそれは偶然だった。友梨佳は思わぬ自体に慌てている。


「一体何が……弁地先輩、どうしてここに?さっきのは……舞ちゃん?」


母を追っていた愛彩は立ち止まり、キョロキョロと前後を見て混乱する。そこへ……


「見つけたわよ、愛彩。さあ、ありのままの私を受け入れなさい!」


どす黒いオーラを放ちながら、ローザが到着する。


事故で特攻させられるハメになった舞を助けに行くべき場面で、それどころではない事態が発生しようとしていた。

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