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第11話:筋肉魔法ビッグバンラッシュ

「追いついたわ、デショーン!観念しなさい!」


『イヤデショーン!』


オタクデショーンはかおるに花瓶を返すと、紅明に向かって咆哮し返した。顔が真っ赤なので、ものすごく怒っているように見える。


「何あれ、様子がおかしいわ」


紅明が少したじろぐ。


「うわ、顔真っ赤!酔っ払い?」


「まさか」


友梨佳と施恩が顔を見合わせる。実際、デショーンは酔っぱらっているのだが……その事実を明らかにしたのはワーヌだった。


《C₂H₅OH、微量のアルコールを検出した。舞君、どうやらデショーンは本当に酔っぱらっているらしい》


「ええっ、ワーヌ、あれは本当に酔っ払っているの?でもどうして……」


「ああ、それは……」


「アーッハッハッ!このオタクデショーンはパワーアップしたネ!」


戸惑う舞にかおるが説明しようとしたが、その声は突然の高笑いにかき消された。いつの間にかデショーンの隣にはエスパーンダ真美が立っていたのだ。


「あっ、パンダ仮面!どうやってここに?」


舞の疑問にエスパーンダ真美は声を尖らせた。


「パンダ仮面違うネ!ワタシはエスパーンダ真美ヨ!」


「地声で喋ってるぞ!怪しい中国人みたいな喋り方だ!」


「パンダは中国のものヨ!中国人で何が悪イ!」


友梨佳が突っ込むと正論が返ってきた。だが、そのセリフにはウソが含まれている。それを見抜いたのは施恩だ。


「エスパーンダマミって……ジェンさん、何をしているのですか?だいたいあなた、中国人ではなくてシンガポール人でしょうに」


エスパーンダ真美の正体は、施恩のクラスメート、ジェン(真)メイ(美)だったのだ。


「クッ、仮面をしているだけでハ、やっぱりバレるカ!」


これだけ特徴的な喋り方ではバレないはずがない。友梨佳も呆れた声を出す。


「音声アプリはもういいのかよ?」


「もう、ここにテレポートするために先生に声は聞かれタ!それに、外では音量が足りなイ!……もはや問答は無用ダ!オカマデショーン!見せしめに、そこのオカマを襲エ!」


『デ……デショーン!』


かおるの方を向いたデショーンは一瞬表情を曇らせ動きを止めたが、エスパーンダ真美がクイ、と顎でかおるを指すと、態勢を低くしてかおるに向かって突進する。それを見たかおるは花瓶を置いた。


「あんたも辛いわね……受け止めてあげるから、さっさと来いやアアアアア!!」


驚いたことに、かおるは生身の体で一瞬、デショーンの突撃を受け止めた。だが、さすがに体格差はどうにもならず、ズルズルと後退し始める。


《舞君!クイック・リアクションだ。助けなければ!》


「うん!」


舞は体内反応を加速させ、かおるの隣に滑り込む。


「助けるよ!えーと……おじさん?」


「ぬぬぬぅ……お゛ね゛え゛さ゛ん゛よ゛……」


かおるがデショーンの右手を、舞が左手を押す格好になる。それに対し、デショーンは体中の筋肉をバンプアップさせて2人を押し込もうとする。舞はさらに魔法を加速させて吠えた。


「うわあああああっ!」


『デ、ショーーーン!』


かおるを押しのけ、1人でデショーンを押す舞。舞の放熱翼の周囲は陽炎が揺らめいている。そして


パン!


舞の衣装、そのふくらはぎを包むブーツが弾けた。


《これは……筋肉の成長が加速されている!!糖質とタンパク質の摂取を増やすようにしたことが奏功したということか!?それにしても、極端だぞ!》


最近、舞はワーヌの勧めで糖質とタンパク質がたっぷりの食事を摂るようになっていた。ワーヌの話を聞いて、そんな献立を考えてくれた舞の両親のおかげといえるだろう。成長により筋力を底上げした舞は、デショーンを押し返し始めた。


舞とデショーン。したたる汗、弾ける筋肉。その様子に、他の魔法少女たちはただ驚き呆れるばかりだ。


「何なのあれは……魔法少女のイメージが台無し……」


と引き気味の紅明。


「筋肉魔法、とでもいったらよいのでしょうか」


と精一杯肯定的に表現しようとする施恩。


「……筋肉魔法ビッグバンラッシュ、って感じだな」


魔法におかしな命名をする友梨佳。


そのとき、デショーンの筋肉がさらに盛り上がり、舞の力に拮抗した。


「よシ、そのまま押し返セ!」


エスパーンダ真美の応援。そして……デショーンの


ハムストリングスが


広背筋が


大胸筋が


上腕三頭筋が


キラキラとした光を放ちはじめる。その表情は、恍惚に染まっていた。


「分かるわ。筋肉が喜んでいるのね……トレイニーの間では脳内物質だどうだとか言うけれども、理屈じゃないの。あの子の魂は、筋繊維の地平に誘われたようとしているのだわ」


「何を訳の分からないことヲ!」


かおるの悦に入った呟きに、エスパーンダ真美が反駁する。そして、デショーンは体中が光りながら透けていき……フッと実体を失って舞は前のめりにつんのめった。


ゴン!


そしてそこには、例によって糖質の枯渇でダウンした舞と、舞にぶつかられた額に赤い跡をつけて伸びている来栖先輩が残された。


「おのれ魔法少女どもメ!撤退ダ!」


通りを走り出したエスパーンダ真美は、振り向きざまにこう付け加えて消えた。


「学校にワタシの正体を言うなヨ!言ったら許さないからナ!……テレポート!」


(黒い靄を吹き出すのではなく、光りながら消えました……これは新しい現象ですね。デショーンが浄化されたとでもいうのでしょうか)


《強いスレイブを得られる機会でしたのに、残念でしたわね。ですが……それ以上に興味深い現象ですこと》


どこまでもカオスな結末であったが、施恩とエディは冷静に分析していた。



またしても病院送りになった舞は、過剰な筋負荷のためすぐには動けず2日入院した。急激な筋肉の成長、筋繊維のスクラップアンドビルド……血中に高濃度に溢れだしたミオグロビンを除去するため、人工透析に繋がれるハメになったのだ。


そして、一度成長した筋肉は元には戻らず、舞の服は何着もリサイクルショップ行きとなった。特に、まだ新しい制服の買い替えが必要になったことに、舞の両親は嘆くべきか娘の成長を喜ぶべきか、複雑な気持ちになるのであった。

今回、舞には確かに筋肉がついたわけですが、ボディビルダーのようになったというイメージではありません。せいぜい、部活を一生懸命やっている子というレベルですね。元が細かったのでサイズアウトした服が多く出てしまった感じです。

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