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Drused Race  作者: 鈴生
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79. 自棄

 目が覚めたのは、次の日の昼近くだった。室内の照明は煌々と点いたまま、分厚い黒のカーテンは閉め切られていた。カーテンの裾の隙間から、光が射し込んでいた。

 暖房も点けられたままだった。時計は短針が頂点近くを指していた。

 喉が渇いていた。ミニテーブルの天板に零したはずの水は、ほんの少しだけ跡を残して乾ききっていた。マグカップに注がれたままの白湯が、とうに冷めきってテーブルの上に置かれていた。

 何もかも、夢だと思いたかった。

 一晩で、色々ありすぎた。嫌な夢を見た。それだけだと思いたかった。

 それでも、なんとなく痛む身体を必死に起こせば、ひじ掛けのところに綺麗に畳まれた私の上着とひざ掛けがあった。ミニテーブルの横には雑誌の山が移動してある。

 両手で頭を抱えた。左手を滑らせて、唇に触れる。肺の底まで息を吐ききった。もう吸いたくもなかった。


 何も考えたくない、何もしたくない、その考えがずっと離れなかった。右手が存在を主張するようにほんの少し疼いた。キッチンカウンターの方に視線をやれば、病院で処方された鎮痛剤が置いてあるのが見えた。

 昨夜の早い時間のことを思い出す。そういえばスサミから、酒を貰ったのだった。

 のっそりと立ち上がって、マグカップの水を飲み干す。足りなかったのでそのままティーサーバーの水も注いで飲み干す。ふらつく足をなんとか操って、キッチンカウンターに向かう。

 戸棚にしまったウイスキーの瓶を取り出して栓を開ける。キュポ、と妙に可愛らしい音を立てて、コルク栓が抜ける。シンクに寄り掛かって、そのまま一口呷る。カッと喉を焼く感覚だけが残った。味なんて分かりはしなかった。香りもほとんど感じられなかった。もう一口だけ飲んでから、カウンターの方に向き直る。

 横着をしてなんとか手を伸ばすと、薬のシートが指先に届いた。そのまま爪で手繰り寄せて摘まみ上げる。ぷちぷちと三錠を手の平の上に出して、口に含む。嫌なざらつきが口の中に広がった。慌ててキッチンに栓もせずに置いたままだったウイスキーを取って飲み干した。

 そのまま左手だけシンクの縁につけて、目を閉じる。


 鎮痛剤は、痛みが強い時に、一日に二錠まで服用していい薬だった。


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