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【書籍化】破滅フラグの悪役貴族、主人公ルートを先回りしたらヒロイン達が激しく執着してくるようになった  作者: むらくも航@6シリーズ商業化


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第28話 歴代最強の役職

 「刺客側(おまえら)には責任を取ってもらおうか」


 アスラは宙から刺客側を見下ろす。

 その目には怒りが宿っていた。


 今の防御によって、この場にいる者にバレてしまったからだ。

 剣聖、賢者、武神。

 三役職の正体が、全てアスラであることを。


 その証拠に、リーゼル・セレス・ヒマナの三人は固まっていた。


「「「……っ」」」


 頭では繋(つな)がっても、感情が追いつかない様子だ。

 今まで別々に見てきた“役職”が、一人の男に重なったのだから。


 一方で、刺客側の剣士の男は声を上げた。


「アスラ・ヴァルティオ! 貴様が全ての役職を担っていたのか!」

「そうだ」

「ならば、私のことは覚えているだろう! 現剣聖!」

「……ああ」


 剣士の男は、激しく怒りを見せる。

 二人には因縁があるようだ。

 彼は剣を振り抜くと、鋭い斬撃をアスラに飛ばす。


「あの日の屈辱、忘れはしない! 私の提言を却下しやがってェ!」

「……」


 アスラはカァンッと剣で斬撃を弾きながら、冷静に返した。


「それはお前が、“戦争”を提言したからだろう」

「あぁ、そうだ! あの時の我が国は強かった!」


 剣士の男は、過去に剣聖の元に就(つ)いていた。

 そこで他国への侵略を申し出たが、アスラは即却下。


 その後、アスラは何度も説得を試みるも、最後まで折り合いがつかず。

 やがて、日々過激になっていく彼に対して、アスラはクビを宣告した。


 剣士の男はその恨みをぶつけるように、アスラへ斬撃を飛ばし続ける。

 

「貴様がその気になれば、周辺国も征服できたはずだろうが!」

「根本的に考え方が違うんだよ」

「……!」


 アスラはそれらも防ぎ切ると、強い口調で答える。

 かつて、彼に突きつけた時と同じように。


「俺の力は、人を支配するためじゃない。人を“守る”ためにある」

「まだ、そんなことを……!」


 しかし、剣士の男には響かない。

 怒りを募らせるばかりだ。

 その感情のまま、後方の刺客たちへ叫んだ。


「あの腑抜(ふぬ)けを撃ち落とせェ!」

「「「はっ!」」」


 指示と同時に、様々な攻撃が飛び交う。

 多属性の魔法に、闘気の使い手、多様な武器種など。

 やはり相当な戦力を整えてきているようだ。


 その中で、いくつかが地上に向かって飛んで行く。

 リーゼルは迫る攻撃に声を上げた。


「みんな避けて!」

「大丈夫だ」


 ──カカカァンッ!!

 

 しかし、リーゼル達に着弾することは無い。

 アスラが片手間で、否、一本の指で対応した。

 大多数の攻撃を受けながら、彼女達にも結界を付与したのだ。


 アスラは一瞬、地上へ目を向ける。


「よく生きた。グラムさんを連れて離れてろ」

「……!」


 すると、グラムの体がぽぅんっと光る。

 風属性を付与し、ポーションの効果を促進させたのだ。

 コノメが行(おこな)った治療を、さらに加速させるように。

 

 その姿に、コノメはグラムを運びながら息を呑む。


(あの攻撃を受けながら、この精度……)


 やはりケタが違う。

 ただの強さではない。

 戦場全体を把握し、同時に処理している。


 すぐにセレス達が距離を取ると、アスラはようやく自ら動いた。

 ブンッと剣を横に一振りすると、刺客側の地上に衝撃が起きる。


「そろそろ耳障(みみざわ)りだ」

「「「ぐわああああっ!」」」


 セレス達が離れるのを待っていたようだ。

 彼女達が安全を確保すると、アスラはようやく攻撃に転じる。

 剣士の男には、言葉を投げかけながら。


「お前の剣士としての力は、認めていたんだがな」

「ぐぅっ……!」


 アスラの言葉には、もう対話の意思は見えない。

 これ以上は話しても無駄だと思ったのだろう。


 そんなやり取りに、コノメは刺客の内情を察していた。


(向こうに混じる公的機関の者は、アスラ様に解雇された者でしたか)


 剣士の男以外にも、数人見覚えがあったのだ。

 汚職していた者、横(おう)領(りょう)していた者など。

 国家公務員という立場を使って、好き放題やろうとしていた連中だ。


 しかし彼らは、三役職に就いたアスラによって粛(しゅく)正(せい)された。

 行き場を失くした結果、裏世界の者達と組み、この組織に入ったのだろう。

 今の役職が憎いという、同じ恨みを共有して。


(ならば、組織のボスは──!)


 コノメには思い当たる人物がいた。

 しかし、今は戦闘に意識を戻す。

 もう決着が見える頃合いだったからだ。


 ほとんどの刺客をひれ伏(ふ)せさせ、アスラは目を細めた。


「もう満足か?」

「「「……っ!」」」


 刺客側がどれだけ攻めようと、アスラは息一つ上がっていない。

 ここまでやれば、誰でも差を実感する。

 アスラは──別格だ。


 すると、アスラは最後の恩情をかける。


「お前達を全否定するわけではない。だからせめて、役職の業(わざ)で葬(ほうむ)ってやるよ」


 アスラが手を前にかざすと、足元に巨大な魔法陣が浮かぶ。


「顕現(けんげん)──“三種の神器”」

「「「……!」」」


 大気が震えた。

 誰もがただならぬ雰囲気を感じ取る中、魔法陣からは三つの装備が姿を現す。


「【天聖剣(てんせいけん)】、【天聖(てんせい)杖(じょう)】、【天聖帯(てんせいたい)】」


 大地をも斬り裂く、剣聖の剣──【天聖剣】。

 全属性の魔力を底上げする、賢者の杖──【天聖杖】。

 闘気を限界を超えて増幅させる、武神の帯──【天聖帯】。


 三つは眩(まばゆ)く光り輝き、持ち主を神々しく照らす。

 国伝わる秘宝──“三種の神器”だ。

 

「久しぶりにぶっ放(ぱな)そうか」


 その名を知らない者はいない。

 代々、役職に就いた者のみに継承される、国の秘宝なのだから。

 だが、それが三つ揃(そろ)うところなど、誰も見たことがない。


 アスラは全てを掲げると、その一つ【天聖剣】を手にした。


「剣聖の名の元に、力を授けよ」

「「「……!」」」


 光に包まれた刀身が、上へと高く伸びていく。

 天をも突き破る勢いだ。

 

 その光景に、地上のリーゼルは息を呑んだ。


「あの業は……!」


 いつかの訓練場で見た、剣聖の業だ。

 だが、あの時持っていたのは、ただの木剣。

 それが今は、剣聖に受け継がれし“聖なる剣”で行われようとしている。


 しかし、これだけでは終わらない。

 アスラはさらに二つの力を重ね合わせた。


「賢者・武神の元にも」

「「……!」」


 少し省略したが、セレスとヒマナは感じ取ることが出来る。

 【天聖杖】は七色の属性を、【天聖帯】は闘気を爆発的に放出した。

 その二つの力が、【天聖剣】の刀身に絡み合う。


 やがて完成したのは──三役職の結晶。

 全属性と闘気を纏(まと)った、天へと昇る巨剣だ。


「みんなに危害を加えたことを後悔しな」

「「「……っ」」」


 アスラが告げる頃には、刺客側はすでに膝をついていた。

 猛攻の疲労に加えて、何も通用しなかった絶望によって。

 あるいは、アスラに神々しさすら感じ取って。


 それは、組織のNO.4という剣士の男ですら同じだ。


(本当に三役職なんて存在が、いるのだな……)


 今回の任務は、役職の正体を持ち帰ること。

 一つの役職に遭遇(そうぐう)しても、一人は逃げられる程度の戦力は整えてきたはずだった。

 しかし、相手が三役職全てともなれば、話は別。


 同時に、彼は過去を悔いていた。


(役職が弱くなったなど、とんでもない……)


 現剣聖は弱気な奴だと思っていた。

 話を聞く限り、賢者も武神も同様らしい。

 だからこそ彼は、この国は弱くなったのだと勝手に憂(うれ)い、嘆(なげ)いていた。


 だが、目の前にあるのは、圧倒的な力。

 歴代でも類を見ないほど、“最強の役職”だ。


(我々は“化け物”を相手にしてしまったのかもしれません、ケイン様(・・・・))


 思い浮かべるのは、“あの方”と呼ばれるボスの名前だ。


 しかし、祈ってももう遅い。

 彼はすでに全てを諦め、ゆっくりと時が流れるような感覚に陥(おちい)っていた。


 その目の前で、アスラは輝く巨剣を振り下ろす。



「【三役職の裁き《トゥリア・ジャッジメント》】」

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