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第44話 帰り道

「ん……まぁ、こんなものかしらね」


「うん、これで全部だと思うよ」


 レンくんとランちゃんが周囲を見回して小さく頷く。

 どうやら核を回収し終えたみたいですね。


「よし、じゃあ俺は行くから。またな」


「あ、はい、ありがとうコウガさん」


「あははっ、いいっていいって」


「……まぁ、一応例は行っとくわ、ありがと」


 コウガ君が離れて行く。

 中々上手くやりましたね。

 彼ったら、あることないこと口から出まかせをポンポンと出して……あっさりと二人の作業を手伝う流れにして。

 これも才能でしょうかね?

 

「コウガさん、行っちゃった……ね。今度会ったら何かお礼しないと」


「そう?いいんじゃないの?別に。あっちが勝手にやったことじゃない。お礼ならさっき言ったし、それで充分でしょ?」


「ランは……基本的にそのあたり薄情だよね。面倒くさいからって都合のいい解釈やめようよ……」


「そう?別に要求してこなかったんだから、どう思おうと自由じゃない? まぁ……借りがあるままじゃ落ち着かないから、何かした方がいいかもってのはそうだけど」


「あ、はは、ランってば本当に自分本位なんだから」


「うっさいわね」


 ランちゃんが不機嫌そうにそっぽを向く。

 いつもの光景ですね。

 どうやら不自然さは感じていない様子。 

 これはレンくんとランちゃんの警戒心が薄いのか、コウガ君が上手いのか……

 まぁ、これはコウガ君が上手いということにしておきますか。

 人に警戒されずに話しかけるその術は私も見事だとは思いますからね。

 

「ん~、随分あるなぁ。これいっぱいあるけどさ……いくらくらいになるかな?」


「さぁ?そんなのギルドに行って勘定してもらえば分かるでしょ」


「うん、それはそうだけど……」


「ん、そうね。まぁ、良い感じの記念品を二人買える感じの報酬ならいいわね。粗悪なものよりも良質なものが欲しいもの」


 ふむふむ、すっかり終わった雰囲気ですね。

 おしゃべりに興じながら帰っています。

 まぁ、後ろ姿を見る感じ、警戒を緩めているわけではないようですがね。

 いつでも反応できるように適度の身体を緊張させながら歩いています。

 現に、たまに襲ってくる魔物に魔法を放ち退散させて、未だに散発的に襲ってくるスライムも軽く蹴散らして核を回収していく。

 手慣れてきたものですね。

 二人とも冒険者の姿が板についてきたようです。

 うんうん、これならば安心して付いていけるというものです。

 先程の、カニバルズスライムのような特殊個体は流石にもう出ないはずですし、出たとしても……流石にそれは私が接触前にどうにかしてしまうとしましょう。

 二人とも疲れているでしょうしね。

 今、私はいつもの魔法を使って二人のほぼ真後ろに居ます。

 コウガ君が居る時は彼の訓練に合わせて、この魔法は切っていたのですけどね。

 今は二人が最優先。

 コウガ君は今、可笑しく思われないように大きく迂回して移動をしている最中ですからね。

 しばらく合流できないでしょう。

 スライムとの戦闘にも少しばかり巻き込まれてもいましたし……今日の訓練はこれくらいでよいのではないですかね?

 コウガ君も疲れているでしょうし、ね。

 頭の中で色々な算段を付けて、後ろを歩いていく。

 あとはレンくんとランちゃんに集中するだけ。

 それが私としても一番好ましい状況でした。

 しかし、他にも困ったことが幾つかあるのです。

 それはもちろん……


「……ふぅ」


「あれ?今、誰かの声がした?」


「?さあ、気のせいじゃない?」


「あっれ~?おかしいなぁ」


 思わず声が洩れ出てしまいましたが、構っていられません。

 これはそれほど大きな問題ですから。

 今の術式を保持しながら、念話の魔法を構築していく。

 対象はもちろん、ライちゃん。

 念話を繋げるとすぐに出てくれました。


『ん、あぁ、何だお前か』


『はい、私です。それであれから首尾はどのような感じで?』


『どうもこうもない。まだ詳しい調査が必要だ。だから報告をしていなかった』


『そうですね。昔からライちゃんは完璧主義というか、成果主義というか……そういうところがありましたからね』


『はぁ、あのな……我は今休息中だったのだ。そんなことを言いに念話を繋げてきたのか?迷惑だから止めてくれ』


 うんざりした声が聞こえてくる……疲れたような顔のライちゃんが浮かんでくるかのようでした。

 成程、休息中……ならば私が話しかけても大丈夫な手すき時間だったということですね。

 丁度よかったと言えましょう。

 私が連絡をした理由などただ一つです。

 ライちゃんの性格などとっくの昔に分かっていたことですからね。

 だからこそ連絡を取ったのです。


『それで、曖昧な部分はあっても調査はある程度進んでいるのでしょう?進捗の方は?』


『……そうだな。一応、黒曜石を多く集めているところは調べを付けた。だが、な。それが二ヶ所あってな、お前の言う条件と合致してるか精査をしているところなのだ』


『ほう、つまり?』


『もう少し待て。もしくは調べろ、一つはお前の方が近いはずだぞレイフォルト』


『それは、どちらで?』


『ギルドだ。調べるならそっちの方が早いかもしれんぞ』


 それだけ言って念話が切れる。

 こちらの答えを聞く気はないようですね。

 しかし、成程、ギルドですか。

 

「あ、街が見えてきた。ねぇラン?帰ったら何しよっか?」


「まずギルドに報告でしょ。それからのことはそれから考えましょ、面倒くさい」


「面倒くさがり……なんでもそう言うの、僕やめた方がいいと思うよ?」


「うっさいわね。あんたはその能天気な頭をどうにかしなさいよ」


「僕のどこが能天気だって言うのさ……ひどいなぁ」


「……酷くないわよ。事実でしょ」


 考えようによってはちょうどいいかもしれませんね。

 レンくんとランちゃんの達成報告に付いて行きがてらちょっとみてくることとしましょう。

 街はもうすぐそこでした。

 さっきまで鬱蒼とした森林地帯に居たせいか、こういった居住地帯がやけに安心できるのですよね。

 人々の喧騒。

 街の営み……漂ってくる食べ物匂い……どれもこれもさっきまではなかったものですからね。


「……わぁ、いい匂い。ねぇラン?ちょっとあそこの屋台寄ってかない? おいしそうだよ」


「駄目に決まってるでしょ。まず報告よ、ご飯はその後」


「えぇ~、でもな~……何かすごくおいしそうなんだけど」


「はぁ……だから能天気だって言うのよ……まったく、ほら?お金を手に入れた後の方が安心して飲み食いできるでしょ?そっちの方がいいわよ、絶対」


「あぁ、それは……そうかも。それ、かさばるしね」


「ええ、いい加減邪魔だもの。さっさと行きましょ」


 二人がギルドに向かって歩いていきます。

 その姿は衆目を惹くものでした。

 何故なら、その手にスライムの核の詰まった大きな袋を抱えているわけですからね。

 これは目立ちます。

 二人はこのような視線はまるで気にせずに歩いてい行けているようですが


「えっと……お金、今どれくらいあったっけ?」


「さぁ、わたしの方は確かもう残り少しだったと思うけど。あんたの方は?」


「あ~、僕はほとんど使っちゃった。すっからかんだよ、美味しい屋台が一杯あったから」


「はぁ……もっと計画的にお金使いなさいよ」


 ふふ、レンくんったら相変わらず食いしん坊ですね。

 これはまた、私がお財布にお金を仕込んでおかないと駄目でしょうかね?

 ギルド……そこに何があるのか?

 まぁ、あまり楽しいものではないのは確かですが、ね。

 このまま放っておくわけにもいかない。

 厄介なものでした。


「お金……屋台で食べられるくらいの余裕があるだけ貰えるかな?」


「はぁ……どんだけそこにお金費やすのよ……少しは自制しなさいよ」


 こういうやりとりだけを聞いていられたら……良かったのですけどね。

 そうもいかないのが苦しいところでした。

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