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保護者同伴の勇者の旅路 先生いつまで付いてくるんですか?  作者: 樹里 灯
初めての街 その頃の先生
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第35話 解決と新たな困りごと

 街中。

 街道の片隅で私はライちゃんと連絡を取っていました。


「というわけで、あるものの流通を調べて欲しいのです。ライちゃんなら出来るでしょう?」


『ふむ、それは出来るが……何のためにそんなものを我が調べなければならんのだ?』


 何やら忙しそうな声が聞こえてきました。

 ふぅむ、不機嫌ですね……

 声の感じからすると寝不足でもあるようですが……

 うぅむ、少しばかり心配にはなりますけど、これは放置するわけにはいかない案件ですからね……頼むことに変わりはないのですよね。


「あぁ、申し訳ないのですが実物についてはあまり公には言いたくないので今度、会ったときにでもじっくりお話しましょう。ライちゃんの好物のお菓子も用意しておきますから」


『要らん。菓子も、会うのも、だ。時間が惜しい。やってはやるからこちらの事情にも少しは配慮をしてくれ』


「ええ、善処します」

 

 厄介ごとだと、私の言葉を聞いて判断したようですね。

 ライちゃんは関わらないことを選択したみたいです。

 知らなければ深入りすることもありませんからね。

 正しい判断でしょう。

 この件は、非常に危険度が高く……容易には解決できないものになりますからね。

 正直に言えば、あまり手を広げずに私だけで対処したいのが本音といったところですが……可及的速やかな解決が望まれるような案件でもありますからね……ままならないものです。


『それで、流通について調べれば良いのだったな? ふむ、黒曜石を、どれくらいだ?頼まれた以上はこちらも全力を持って当たるが』


「ありがとうございます。量についてはそうですね……黒曜石なんてこの頃は使う人も少ないですからね。そこまで厳密に調べなくても構いませんよ。明らかに普通では使わない量を仕入れているところがあれば教えてください」


『そうか。では分かったら連絡する……レイフォルト、本当に、くれぐれも、これ以上は我に厄介ごとを頼むなよ?』


「ええ、善処します。ではお願いしますよ、ライちゃん」


『ああ……まったく、いつまでも人使いの荒い奴だ』


 強引に切断するように念話が切れてしまいました。

 まぁ、無理もありませんね。

 本当に困りごとですから。

 正直、私もこの方が助かります。

 こればかりは、ね。

 死の黒杖……厄介なその魔道具を頭の中に思い浮かべて、そっと息を吐く。

 山賊さんが持っていたのは一つだけでしたからね。

 どこかに大元があると私は睨んでいるのですよ。

 黒曜石……これは死の黒杖を構成する材料としては最も基本的なものになりますから、ね。

 量産体制が整っていれば目立ちます。

 今は工芸品くらいにしか使われないものでもありますから、それはそれは、ね。

 他にも当然、死の黒杖を作るうえで必要になる材料は幾つもありますが……これが一番分かりやすい。

 

 頼りにしてますよ、ライちゃん。


 心の中で語り掛けて前を向く。

 ライちゃんはどれほど忙しかったとしても私が頼んだことはきっちりとやってくれますからね。

 この件はこれで大丈夫でしょう。

 街中でお喋りに興じるレンくんとランちゃんを見守る。

 すると、私の後ろに居るコウガ君が控えめに声を掛けてきました。


「……なぁ、師匠」


「何ですか?コウガ君。何か私の出した課題で分からないことでもありましたか?」


「いや、それは無いんだけど……」


 言い淀み、言葉を濁す。

 コウガ君は私を見たまま動いてくれませんでした。

 もう訓練の内容も課題も全て指示はしたのですが……

 あれから、コウガ君は正式に私の元で技術を学ぶことになりました。

 師匠と呼ぶのもそういった理由です。

 先生ではないのは……彼の先生は今は亡きお父様ですからね。

 私からそう言いました。

 そのあたりに違いを持たせることが精神的な余裕を作ることにも繋がるでしょうからね。

 私はあくまでも仮の指導者……コウガ君にとってそういう認識でよいのです。 

 まぁ、事情としてはこんなところなわけですが……ふむ。

 それはそれでいいとして、レンくんとランちゃんを見守ることに集中していくとしましょう。

 ふむ、成程、ライちゃんから二人にお友達が出来たとは聞きましたが……あれがそうですか。

 

「ねぇねぇ、レンくん、ランちゃん、また手伝ってよっ!ダリルの奴ひどいんだよぉ、返してって乗り込んでいったのに迷惑だからって自警団なんか呼んじゃってさ~。あたし、捕まって小一時間説教されちゃったんだから」


「あ、うん、そうなんだ……あ、はは、それは、自警団の人も大変だなぁ」


「むぅっ!あたしに同情してよ~、もう一回協力して!剣を取り返そうよ~!」


「嫌よ、面倒くさい。自分で何とかするようにって言ったじゃないの……はぁ、こんなのと友達になってしまったのがわたしとレンの最大の失敗よね」


「ひどっ!冷たいよぉ、ランちゃん」


「うっさい、黙んなさい」


 うぅん、何やら奇妙な会話をしてますね。

 仲睦まじく見えなくもないお話ではありますが。

 レンくんとランちゃんと彼女‐ユリィというらしいですね、その子が友達になった経緯をまとめた用紙を、レンくんとランちゃんを見ながら目を通す。

 ふむ、人助けの一環で、ですか。

 仲良くなって自然と友達になったのではなく、最初に友達であると宣言した、と。

 その時のレンくんの対応、関係ないからと消極的だったランちゃんの行動……思わず苦笑いをしてしまいますね。

 どうやらレンくんは私の言ったことを忠実に実行しようとしていたみたいですね。

 困ってる人はなるべく助けるように。

 ええ、確かに私はそう言いました。

 微笑ましいですが、少々気恥ずかしいところですね。

 そうですか……私の教えを守ってですか。

 中々に悩ましいところですね。

 不用意に関わった、それはライちゃんの言う通りもう少し警戒心を持った方が良かったことかもしれません。

 しかし、私の教えを守ろうと人助けを積極的に行おうとした結果である、と……

 ううむ、こっそりと見守っている身の上な関係上、会うことは出来ませんが……仮に会えたとしたら私はどう声をかけてあげるべきでしょうかね?


「……あの、だからさ師匠?」


 悩んでいるとまたコウガ君が声を掛けてきました。

 今度は何でしょうね?


「どうしたんですか?コウガ君。私は忙しいのですが……訓練はもう開始して構いませんよ?」


「いや、それは分かってるけど……」


 ふむ、何なのでしょうね?

 私を見ながら言い淀む。

 分かっているのであれば早く訓練を開始して欲しいのですが……

 コウガ君は何かを言いたげな雰囲気のまま離れて行きませんでした。


「……ねぇ、師匠?あのさ、話してるときくらいこっちを見ない?そういうのどうかと思うんだけど」


「ん?何を言ってるのですか?駄目に決まっているではないですか? その間にレンくんとランちゃんの身に何かがあったらどうするのですか? 二人を見守りながらになるので片手間になりますと最初に言ったはずですよ?」


「うん、それは聞いたし、そう言っている間もこっちに視線すらくれないからもう色々と悟ったけど……」


 溜息。

 こちらにもはっきりと伝えるような大きく、呆れるような……

 それから、コウガ君は私の隣にゆっくりと移動してきて、私と同じ目線でレンくんとランちゃんの方を見る。

 それからまた諦めたように溜息を吐きました。


「過保護過ぎない?」


「そうですか?これでも分別はつけている方ですよ?」


「そんなこと言われても、なぁ……本当に片手間なんだもんな」


「はは、何を今さら」


 それに関しては最初に言ったことです。

 私は二人を見守るためにここに来ているのですから。

 それ以上に優先することなど私にはありません。

 それなのに、こんなことを言うとは……ふふ、困ったものですね。

 片手間になるのは事前に言いましたし、過保護でもありません。

 明確に線引きがあります。

 私は陰ながら見守るだけ。

 それのどこが過保護だというのでしょう?

 保護者が子供のことを心配するのは当然の権利ではありませんか。


「……師匠、流石にもう少し信頼してやれよ。弟子たちが可哀想だぞ」


「可哀想とは何ですか。信頼もしています。だからこそ見守っているのです」


「だからって……それってどういう?」


「どういうも何も……決まりきったことを聞きますね」


 レンくんとランちゃん……それから楽しげに話しかけているユリィ、その三人を見ながらコウガ君に言う。

 それは私にとっては説明するまでもない当然のこと。


「それはもちろん、レンくんとランちゃんは信頼しています。強さも私としては卒業を与えるほどに腕前を上げたのです。大抵のことはどうにかなると断言できます」


「だったらさぁ……」


「だからこそ、ですよ」

 


 レンくんとランちゃんで対処できない何かが起きた時のために私が見ていなければならないのではないですか。

 そう、これが説明するまでもない当然のこと。

 しかし、それを聞いたコウガ君は困ったように眉を顰めました。


「それが過保護なんだよ」


「そうですか」


 会話もなくなる。

 もう言いたいことはなくなったみたいでコウガ君はゆっくりと私から離れて訓練を開始しました。

 レンくんとランちゃんに気付かれずに尾行。

 それがコウガ君に指示した訓練の内容です。

 そして、大丈夫そうなら距離を詰めて徐々に難度を上げる、と。

 レンくんとランちゃんは私が鍛えたのである程度の隠行ならば軽く見破れるので良い修行になるはずです。

 コウガ君の技術であればそこまで難しいということでもありませんからね。

 レンくんとランちゃんにも良い経験になるはずです。

 

「……ふむ」


 レンくんとランちゃん、それにコウガ君。

 私が教え、見守る子供たち……これでめでたしめでたしと。

 そんなふうに平穏無事に過ごしてくれれば、というのが私の理想の一つではあるのですけど、ね。

 問題が一つ、目の前にありました。


「ねぇねぇっ!今度ダリルの奴を襲いに行こうよっ!大丈夫っ!二人とも強いからっ!あんな奴、もう……コテンパンのギッタギッタにして完全勝利出来ちゃうからっ!ねっ?」


「はぁ、もうその物騒な思考にはいい加減慣れたけど。あんた、自分でどうにかしようって気はないわけ?」


「うんっ!だって、人にやってもらうのも自分でやるのも結局目標が達成できれば一緒だよねっ?」


「あ、はは、僕はそうは思わないけど」


 三人が談笑をする姿をジッと見守る。

 見慣れない魔道具を付けている、そうライちゃんが言っていました。

 あの、首に付いている一見アクセサリーに見える黒のチョーカー。

 あれから微弱な魔力が放たれているのを感じたと。

 ライちゃんはそう言っていました。

 ですが、しかし、あれは……厳密には魔力ではない。


「……二人にとってつらいことが起きなければいいのですが」


 レンくんとランちゃんと仲良くなった女の子ユリィ、彼女が首に付けているチョーカーから放たれている魔力は……瘴気。

 ライちゃんは大丈夫そうなことなら見逃すようなタイプではありますが、ね。

 大きな置き土産をしてくれたものです。

 妙なことにならなければよいのですが。

少しばかり修正を施しました。

話しの筋は変わらないのでそのままお読みください。

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