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保護者同伴の勇者の旅路 先生いつまで付いてくるんですか?  作者: 樹里 灯
初めての街 レンくんの人助け
27/53

第27話 人助けって難しいね?


「はっはっは~っ!てやぁっ、どうだっ、このゴブリンめっ!あたしに勝てると思ったかぁっ!」


 ゴブッ!? ゴブゥッ……


 投げた石がゴブリンの頭に命中する。

 その隙に投げた砂が目に入り、動きが一瞬鈍る。


「そこおっ!」


 突撃。 

 隙を逃さずにユリィがゴブリンに剣を突き立て倒していく。

 力なく声を洩らして、ゴブリンが地面へとくずおれていく。

 それを思い切り踏みつけて、ユリィは勝ち鬨を上げた。


「わ~いっ!勝った勝った~!あたしってば強いっ!世界一っ!最強っ!あたしに勝てる奴はどこにもいないんだ~!あ~はっはっはっはっ!」


 ……大げさ過ぎじゃないかな。

 渋い顔をしてしまうけど、何とかそれだけにとどめた。

 あの子本当に調子に乗りやすいわね、とそんな様子でランも肩を竦めている。

 腕前自体はそんな大したものじゃないのは僕もランもとっくに知ってるから、そんな感想しか抱かなかった。

 だって、純粋に剣の腕前だけでゴブリンを倒したわけじゃないもんね。

 相手はゴブリンが三匹だった。

 けど、それだけではなくて、一撃を当ててはむやみやたらに逃げ回るもんだから他の魔物とも遭遇して……それに襲われそうになったのは僕とランがどうにかしてた。

 その時点でまぁ、あれほど勝ち誇れるのが不思議でしかない状況ではあるんだけども。


「ふっふ~んっ!ねぇねぇっ!見てたっ?レンくん、ランちゃん!あたし、二人のおかげでこんなに強くなったんだよっ!ゴブリン三匹に囲まれても自分で倒せるようになったんだ~!ありがとっ」


「……あぁ、うん、まぁユリィがいいならそれでいいんじゃない、かな」


「ひとまず祝ってはおくわ。おめでと、でもわたしのことをあんまり馴れ馴れしく呼ばないでよね。ユリィ」


「ええ~、ランちゃんはあたしのことユリィって呼んでる癖に~、ねぇねぇ、もういいんじゃないかなっ?あたしたち、もっと仲良しになろうよっ」


「うっさい、肘でつつくな」


 このこの、と肘でせっついてくるのをランが鬱陶しそうに払う。

 現実を分からせてあげた方がいいんじゃないの?

 なんてランは言ってたけど、それは叶わなかった。

 っていうか、ますます自信を持っちゃった。

 

 どうしよっかなぁ……


 思わず遠い目をしてしまう。

 ユリィの戦い方は、純粋に剣によるものではなかった。

 石を投げて、砂を投げて……時には地形を利用して不意打ちをして、よく言えば勝つためには何でもやるっていう柔軟な戦い方だ。

 見た感じだと、ユリィってこういう戦い方が一番生き生きしてるからこのままこれを極めていけばいいんじゃないかな、って思う。

 それで戦えて、ついでに強くなれるんだから僕はそれでいいと思うんだ。

 戦い方に貴賤はないって先生も言ってたもんね……ユリィが何とも思わないなら別にいいと思うんだ。

 でも、うぅん……


「んぅ?どうしたのぉ?レンくん、むずかしい顔してぇ?」


「うん、その、ね……ちょっと、さ」



「ふん、どうやら少しはマシな腕前にはなったようだな」



「っ!あんたは、ダリルっ!」


 その声にユリィが勢いよく顔を振り向かせた。

 僕のちょっとした疑問を口にしようとしたところでちょうど、ダリルさんが僕たちのところにやってきてしまっていた。

 ちょうどいい時に来たけど……これって。


「この感じだと見てたわね、まぁ、わたしはそんな気がしたけど」


「あ、ランもそう思う?」


 実は途中から微かに気配がしてた。

 誰かが見てるだろうなってのはぼんやりとは分かってたんだ。

 ダリルさんもユリィのことが気になってたのかな?

 鼻息も荒くユリィがダリルさんに詰め寄っていく。

 勢いのまま行くのにもダリルさんは引かずに真っ向から見据えて、至近距離で睨み合った。


「んっふっふっふっふっふ~、ダリル~?自分の言ったこと覚えてるでしょ~?ゴブリンの巣はさっさと潰してきたんだよ?剣を返してよねっ!」


「はっ、あんな技量でよくもまあそこまで鼻息荒く出来るもんだな。調子に乗るんじゃねぇぞ、駆け出し小娘が」


「ふっふっふ~ん、あたしの腕に嫉妬してひがんでるの? 見たんだよねっ、ダリルも?土下座してあたしのことを崇めるなら今の内だよ?敬って、悪いことをしたって涙ながらに謝って、あたしに許してって懇願して跪くなら特別に許してあげてもいいんだよっ?」


「……阿保」


 それはとても小さな声だったけど、酷く冷たい響きだった。

 疲れたような顔が全てを物語ってる。

 気持ちは分かるけどね……ユリィが、こんなに調子に乗りやすかったなんて。

 知ってたら、もっと教え方とか考えたんだけど……

 知らなかったことを悔やんでもどうしようもないことは分かるには分かるんだけど、口惜しい。

 僕がもっとちゃんとしっかりしてればこんなことには……には……

 そこで、ポンと肩に手を置かれた。


「御愁傷様ね、人助けの結果がこれよ。でもま、誰がやってもこんな結果だったんじゃない?助ける人の性格まではこっちには分からないものね」


「…………」


 曖昧に笑うしか出来なかった。

 そうなんだよね。

 誰が教えても、結局はこんな結果になった気がするんだよ。

 ユリィってああいう人だから……

 先生が教えてたら、また違ったのかな?


「ったく、おい、駆け出し小娘。返せというんなら、俺が何て言ってたか一言一句まで思い返してみろ。俺は相応しい技量になったらと最初にそういっただろうが」


「?それが?そのあとに、ゴブリンの巣を潰したら返すって言ったよ?」


「言ったがな……」


「あ~あ、自分の発言も覚えてないのはどっちなのかなぁ?ダリルめぇ、痴呆症ってやつぅ?都合よく発言を忘れるんだから、もう余生を隠居して過ごした方がいいよぉ?」


「あのな……」


 よくもまぁ、あんな煽り文句を思いつくわね。

 なんて声は隣のランからのものだった。

 素直にひどい、と僕は思う。

 ランじゃなくて、ユリィがだ。

 おかしいな……僕は困ってた人を助けてたはずなのに、ユリィ……これじゃすっかり悪役だよ?

 加勢する気にもならなくて、ただ見守ってしまっていた。

 最初にユリィの味方に付いた以上、ダリルさんに味方するのもどうかと思って成り行きを見てしまう。

 ここからはもう、二人の問題、なのかな?

 そうとも思えなくて首を傾げてると、ダリルさんが大げさに肩を落とした後にユリィに向かって剣を差し出していた。

 もう疲れ切っていて、考えたくないって顔で。


「ま、言ったもんは仕方ねぇからな。約束は約束だ、返してやる。受け取りな」


「やたっ!レンくんっ!ランちゃ~ん!やったよぉ~!あたしの剣、返ってきたよぉ!」


 喜色満面、そういった様子のユリィをランと二人で複雑な気持ちで見守る。

 あぁ……これでまた調子に乗っちゃうんじゃ……

 これでいいのかな?

 正直不安だった。

 今のユリィはゴブリンを倒せたことでとても気が大きくなってる。

 こんな時に返ってきたら、調子に乗ってとんでもないことをしてしまう気がするんだ。

 身の丈に合わない強い魔物に無謀にも挑んでいったりしないよね?

 そう思って、何とも言えないままこちらに駆け寄ろうとしてくるユリィを見つめていると……その手に持つ剣が、またダリルさんによって取り上げられた。


「ひゃわっ……むうぅ~!何するのぉっ、ダリルぅっ!返してよ~!」


「はんっ!やなこった!一回は返したんだからこれでさっきの条件はおしまいだっ!また返してほしかったら今度は……この剣に相応しいほどに剣の技量を上げるんだなっ!」


 あ、上手い。

 ダリルさんは巧みだった。

 上級冒険者というのも分かる身のこなしで、ユリィから瞬時に距離を取っていた。

 そのまま街まで駆けていく。

 全身に魔力が行き渡ってる。

 身体強化を最大限に活用してるんだろう。

 その足の速さは瞬く間にその姿が小さく見えるほどで……身体強化もろくに使えないユリィが追い付くのは不可能なのは見るだけで明らかだった。


「いやぁ~!返して……返してよぅ!あたしの剣なのに……大切な、大事なあたしの努力の結晶なのにぃ、うぅ」


 涙ぐんで膝を折るユリィ。

 その姿は僕が最初に見たのにとても似通っていた。

 最初に、近寄っていったときの気持ちと会話を思い出して、思わず苦笑をしてしまう。

 

「ユリィ、元気出してよ」


「ぅ、レン……くん」


 目の端に涙を溜めて上目遣いで僕を見てくるユリィに僕は小さく頷いて見せる。

 その目は……何かを期待しているのが明らかだった。

 何を言って欲しいのか、僕には分かる気がした。

 うん……先生、僕、今なら分かる気がするよ。

 昔の思い出、先生の言葉を思い出しながら心の中で語り掛けて、僕はユリィに笑顔を向けた。


「頑張ってね、技量を上げたら返してくれるってさ。特訓にならいつでも付き合うから」


「そういうわけよ、あとは自分で頑張んなさい。応援はしてるわ、あなたなら出来るわよユリィ」


 ランと共に街へ向かって歩いていく。


 ただ助けるだけが、その人を本当に助けることには繋がらないこともあるのですよ。


 昔に聞いた先生の言葉は今のこの状況にピッタリと嵌ってる気がした。

 

「うぅ、そんなぁ、レンくんっ!ランちゃんっ!あたしたち……友達だよねっ!」


「友達だからこそ、よ」


 縋るようなユリィの声に振り返らずに街まで歩いていく。

 友達だから、そういうランの顔は……最初、ユリィのことを邪険にしてた割にはまんざらでもない顔をしてて。

 うん、悪いことばかりじゃなかった、よね?

 これから頼まれたらユリィには真っ当な方法で取り返せるように助けてあげよう。

 先生……人助けって、難しいね?


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