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保護者同伴の勇者の旅路 先生いつまで付いてくるんですか?  作者: 樹里 灯
初めての街 レンくんの人助け
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第21話 ユリィはとんでもない人だった

 ユリィの思考はとても物騒だった。

 いや、正直それだけで片付けられるような衝撃じゃなかったんだけど、ね。

 まず一番に出てくるのが闇討ちって……

 ほんのりと引き気味になった僕を責められる人は居ないと思うんだ、うん。


「え~っと……じゃあ、闇討ちは置いといてどうするか考えようか」


「あ、あの~、もしかして……そんなに駄目なんですか?闇討ちをするって?」


 遠慮気味に手を上げて言ってくるけど、内容は物騒だった。

 こっちの方が数が多いんだからこれが一番楽ですよね?とか、あたしから奪っていったんだからこっちも命を奪ったとしても問題ないですよね?おあいこですよ?とか。


「ん、と、そう思わない?えっと、ランちゃん?」


「ランフィールド、よ。馴れ馴れしく呼びかけないでくれる?」


「あぅ、ごめんなさい。ランフィールドちゃん」


「ふんっ」


 申し訳なさそうに言い直したユリィにランが荒々しく息を洩らして顔を背けた。

 ユリィが言ってることに僕がちょっとそれは……って思ってるのに顔を見て分かったんだろうね。それで控えめにランに呼びかけたんだろうけど。

 僕としては苦笑せざるを得ない。

 ランもランでちょっとどうかと思う対応だけど、ね。

 これじゃまるっきり嫌な奴じゃん……でもまぁ、うん、僕には協力するけどユリィを信用しないってそういうことなんだろうね、多分。


「ユリィ、流石に……そういうのはちょっとどうかと思うんだよ、僕。だって、そんな剣を取られたから闇討ちだとか命を奪われても仕方ないだなんてちょっと」


「えぇ!?だって、確実に勝てるんですよ? 見た感じ、レンくんもランフィールドちゃんも強いしっ!あたしがいくらへっぴり腰で剣もまともに使えないとしてもあんな泥棒に負けたりしませんって!」


「……まぁ、そりゃ負けないでしょうけど、ね」


「ですよねっ!ランフィールドちゃんっ!」


「うっさいっ!馴れ馴れしく『ちゃん』付けで呼ぶんじゃないってのっ!」


「ええぇ! ちゅ、注文が多いよぅ……これが駄目だったらなんて呼べばいいのぉ?」


「ふんっ」


 呼び方ひとつでそんな目くじら立てなくても……

 なんか、いちいち喧嘩するからまるで話が進まないよ……

 まぁ、ランの気持ちも分かるけど、さ。

 親しい人には親しく呼ばれたい、そうでない人には弁えて欲しい……そのあたり、ランはきっと強くあるんだろうね、多分。

 僕はそんなに気にならないからどうでもいいんだけど……だって、僕今までずっと『レンくん』って先生に呼ばれてきたからね。レインディスって普通に呼ばれた方が反応できないかも。


「じゃあ、ええっと……ランフィールド、さん?」


「ん……まぁ、そのくらいでいいんじゃないの?」


「うぅ、言いにくい……せめて『ちゃん』付けでないと可愛くないのに……あたしたち、友達なのにぃ」


「あんたとレンは、ね。わたしはなった覚えはないわ。というか、友達になるんだったらまずその物騒な思考回路を直してから出直してきなさいよ」


「ええ?物騒?」


「ええ、物騒。そうよね?レン」


「…………まぁ、そうだよね。うん、物騒」


「そんなっ」


 僕までも同意したことで分かりやすくショックを受けたような顔をするユリィだった。

 正直……こういう悪口みたいなことを聞かれて同意するのって悪いことしたみたいで気が引けるんだけど……でも、これはユリィのためにもやっておいた方がいいとも思うから。

 こういうとこ、直した方がいいと思うんだ。多分。

 友達として、ね。そう思うんだ。

 まぁ、今日が初対面なわけなんだけど。

 とりあえずユリィの意見は放置することにして、こっちでどうするか考えることにした。

 何事もまずは話し合いで解決……平和的な解決が一番、だと思うんだ。


「ユリィはその……剣を奪った人のことは知ってるの?名前、とか、どこに住んでるか、とか」


「はいっ!名前はダリル、この街でずっとやってきた上級冒険者で賃貸の家に一人で住んでるんです!場所だってきっちり調べがついてますよっ!」


「……なんでそんなことまで」


「だって、あの人、あたしが駆け出しで登録し始めてちょっと依頼をこなし始めた辺りから絡んでくるようになって……嫌な感じだから、あたしが強くなったら恨みを晴らそうかなって思って」


「……ねぇ、レン。この子、本当に見捨てない?」


 ランがとても心配そうに僕を見つめてくるけど、僕はそれに首を振る。

 駄目、見捨てない。

 助けるって決めたんだから。

 でも、ひどいことを考えてるなって思うのは僕も同意だった。

 恨みを晴らすって……具体的に何をする気だったのかな?

 剣を取ったんだから命を奪われても文句言えないですよね?なんて今さっき言ってただけに、想像するのも怖い。

 うん、これは聞かないでおこう。


「じゃあ、とりあえずダリルさんと話をして返してくれそうなら返してもらおうよ。事情を話せば分かってくれるかもしれないし、向こうにも何か事情があるのかもしれないし」


「えっと……その事情っていうのが仮にあったとして、あたしが考えてあげる必要あります? 剣を取っていったんだから、それだけで悪人で決まりだと思うんですけど……あたしには関係ないですよね?」


「駄目。これは決定だから、ほら行こう」


「うぅ、どうして困難な道を選ぶんですかぁ?皆で闇討ちにした方が早いですってぇ、絶対ぃ」


「やっていいことと悪いことがあるでしょうに……ほら、文句を言わないでさっさと行きなさい。駄目ならそれでまた考えればいいんだから」


「えぇ……向こうが先に悪いことをしてきたんだから、やり返してもいいじゃないですかぁ」


「駄目よ。酷いことをされたからって、それでこっちが向こうに酷いことをしてもいい理由にはならないわ。そんなことしたら、酷いことをしてきた嫌な奴と同じところまでこっちが堕ちるじゃないの。悪人と同列にまで堕ちるなんてごめんよ」


 渋るユリィを引き連れて、ダリルさんのところへ。

 場所を知ってるのはユリィだから先頭はユリィなんだけど、ね。

 その間も口々に物騒な解決法ばっかり言ってきてた。

 こっちの方がいいって信じて疑わないような表情と声で、むしろ僕たちの方が可笑しいといわんばかりで。

 正直、ちょっと不安になってきちゃった。

 もしかして……街だとユリィの方が普通なのかな?

 僕もランもずっと先生のところに居たからさ……僕たちの方が可笑しいってことないよね?

 人に酷いことをしてはいけませんよ?って先生も言ってたし。

 うん……そうだ。

 仮に僕たちの方が可笑しかったとしても闇討ちなんかしないけどね。

 だって、そんなことしたら……僕はずっと気にするからね。

 歩きながら悩みに決着も着けて、晴れ晴れとした気分になったところでそこに着いた。

 木造の、ちょっと安そうな一軒家。

 でも、一人で借りるとしたらとてもお金がかかりそうなくらいにはちゃんとしてる家には、既にしっかりと人の気配があった。

 これは、帰ってきてるね。


「ここだよ、ダリルは冒険者として依頼をこなす以外は家に居るらしいの。だから、こっそり侵入して家を荒らすなら時期が重要になりますねっ」


「しないから」


 もう苦笑も出なくなったよ。

 軽く手で制して、扉を叩く。

 話は僕がした方がいいよね。

 ランは僕が巻き込んだだけだし、ユリィは……あれだから。

 扉を叩くとすぐに反応があった。

 足音がして、すぐに扉が開かれる。

 そこにはちょっと前に居たユリィから剣を奪った男の冒険者‐ダリルさんの姿があった。


「お前ら……一人以外は知らねぇな、誰」


「あたしの剣を返せ~~~!泥棒~!人でなし~~! 人が集まってきてご近所に噂になって住みづらくなるまで叫んでっ」


「はい、黙って」


 ダリルさんの言葉を遮っていきなり叫び出したユリィの口を横からランがさっと塞いだ。

 いきなり口を塞がれて「んぐっ!んぐぐぐぐっ」なんて呻いているけど、これは仕方ない。

 ユリィは話せないようにして、ダリルさんと話をしよう……うん。

 ランに目配せして、ちょっと口を塞いだまま引っ張ってもらって、十分に距離が離れたのを確認してからダリルさんと向き直る。

 ダリルさんは、呆れたような目で僕たちを見ていた。


「……今ので、なんとなくは察せてしまったけどよ。苦労してんなぁ、お前ら。あいつの友達か?」


「……まぁ、そんなとこかな」


「そうかい、それは麗しい友情なこって」


 わたしは違うわよ、なんて声が後ろから聞こえてきたけどもそれは無視してしんみりとダリルさんと話し込む。

 なんていうか……男の人と話してる時の方が理性的に話が出来る気がするよね。

 何でだろ?

 そのことにほっとしつつもちょっとした疑問にも思いながら話を切り出そうとしたところで、玄関の方を指差された。


「まぁ、とりあえず上がんな。茶なんぞ出んがな、話をするには十分だろう」

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