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保護者同伴の勇者の旅路 先生いつまで付いてくるんですか?  作者: 樹里 灯
初めての街 レンくんの人助け
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第19話 レンくんは人助けがしたい

 大きな街ってのに僕は来たことがなかった。

 ずっと先生のところで暮らしてたから。

 たまに『外でも勉強をすることはありますよ』なんて言われて近くの村に連れていかれたことくらいはあったんだけど……まぁ、うん、それはあの壊滅しちゃった村なんだけどね……

 ちょっと暗い気分になる。

 村長さんに子供たち、元気かなぁ……ちょっと心配になる。

 まぁ、これに関してはもう村を後にしてしまった僕たちに出来ることは何も無いからどうしようもないんだけど……

 心の中で疑問を呑み込んで、奥へ片付ける。

 村長さんとあの子たちならきっと何とかなると思うから。

 気になるけど、それはそれとして、だ。

 昔から、街ってのはどんなところだろうなんてずっと思ってたんだ。


 村より大きい?


 人はたくさん居る?


 お店もいっぱい?


 なんて、考えて、色々と想像して……でも、思い浮かばなかった。

 だって、お店なんて各種で一つずつあれば十分だと思うからさ。

 それで十分に人たちの生活は回っていくし、そんなのって本当にあるのかな?

 なんてちょっとばかり疑問に思って、存在を疑問視して……でも、見て圧倒された。

 すごいって思った。

 感動した。

 人が沢山いるってこんなにも楽しい気持ちになるものなんだなって思ってワクワクした。

 したんだけど……うん。

 どうもそればっかりってわけにはいかないみたいだね。


「お願い、です!あたしを助けてくださいっ!剣を、取り返したいんです!」


 ユリィが泣きはらした目で僕を見上げてきてた。

 うぅん、まさかあんなあからさまな泥棒の現場に出会うなんて……やっぱり人が多いとそれだけ困ることも起きるもんなんだね。

 思わず声を掛けちゃったけど……うぅ、どうしよっか?

 一緒に話を聞いていたランが僕をジトッとした目で睨んできてた。


「で、どうするのよ?助けるわけ? わたしたちが関わるようなことじゃないと思うんだけど」


「……うぅん、まぁそれはそうだよね」


「そんなっ!?助けて、くれないのぉ?」


 でも、と続けようとしたのも遮るような形でユリィが嘆きを被せてくる。

 何だかちょっと罪悪感……助けないとはまだ言うつもりじゃなかったんだけど。

 でも、そこまでして助けたいかというと『どうしても』って程でもないのも事実ではあった。

 僕たち、初対面だから、ね。

 あの剣はユリィにとってとても大切なものらしかった。

 駆け出しだけど、日々を一生懸命過ごして危険な森の奥地にも果敢に挑戦していって本当に大変な思いをして手に入れた……ただの剣以上の価値がある宝物ってそう言ってた。

 出来れば何とかしてあげたいと思う。

 可哀想だとも思うんだよ。

 でも、うぅん。

 思わずランの方を見てしまう。

 すると、それが分かっていたかのようにランは溜息を吐いた。


「そうよ、わたしたちにはまるで関係のない出来事よ。助けてあげたら善意の施しをしたって満足感でも得られるでしょうね。でも、だから何だっていうのよ」


「あ、はは、いやちょっとラン……それは流石に乱暴すぎるよ」


「でも事実そうじゃない、関係ないんだから気にしないでさっさと宿屋の確保にでも行きましょ」


 ひどい言い草だった。

 でも、ランの言うことも確かだった。

 僕は、ランほどに割り切れはしないけど……そこまで踏み込んでもいいのかなって思う。

 踏ん切りがつかないでいる。

 先生もみだりに他人の事情に踏み入ってはいけませんって言ってたし……ユリィ自体が何とかすることだって思いもするし。

 だって、僕たちにそこまでする理由なんて何もないから。

 初対面で、まるで知らなくって……

 そこまで踏み込む理由は……踏み込んでいい理由はどこにも……


「……あ、そうか」


 そこでふと気が付いた。

 さっきから僕、関わるための理由ばかりを探してる。


「………何よ、その呟きは? レン、わたしあまりいい予感がしないんだけど……何するつもりよ?」


「うん、ちょっとね……ねぇ、えっと、ユリィでいいんだよね?」


「あ、はいっ!えと、助けて、くれる、の?」


「あぁ、いや、その前にちょっと、さ」


 地面に蹲っているユリィを助け起こす。

 それから、ランの近くにまで行って、僕は屋台で買った食べ物を彼女に差し出した。


「ふぇ?あの、これ、は?」


「お近づきのしるしにどうぞ。僕はレインディス、ランや先生にはレンって呼ばれてる。で、こっちがラン」


「……はぁ、ランフィールドよ。レンとはまぁ……そうね、世間的にいうと幼馴染って奴かしら? どっちかというと家族の方が近いと思うんだけど」


「あ、はぁ。かぞ、く?」


 それが何?とでも言いたそうなユリィだったけど、僕が差し出した食べ物はその手にもう持っていた。

 どうすればいいか分からないような顔で、困ったように持っているけれど。

 うん、これでいいんじゃないかな?


「それじゃこれから僕たちは友達ってことで」


「……え?あの、友達、ですか?」


「うん、そう。だからさ、ラン?」


 何だかユリィは困惑してるような感じだったけど、僕にとってはそれはもうどうでもいいことだった。

 僕の目的はこれでもう遂げられたから。

 何だか呆れたような疲れたような目をしたランの方に向き直る。

 あはは……流石に、長い付き合いだからランには僕が言いたいことはもう分かっちゃっているみたいだね。


「何よ?大体は予想が付くけれど、聞いてあげる」


「うんっ、これで友達だから無関係じゃないよ! ユリィを助けてあげよう!」


「ふぇ!?助けて、くれるんですか?」


「……はぁ、面倒くさいわね。それならそれで最初から助けてあげたいから助けようでいいじゃないのよ」


 呆れたようにランが言うけれど、そんなわけない。

 僕にはこれが大事だったんだから。

 ユリィが瞳を潤ませて僕を見る。 


「あ、ありがとうっ!ありがとう!本当に、ありがとう!あたし、どうしてもあの剣を取り返したくって」


「あぁ、気にしないでよ。見捨てたらなんか気持ち悪いし、さ」


「うぅ、いい人っ!なんていい人なんですかっ!あたし、こんな人にずっと出会いたかったんですぅっ!」


 もう泣きそうな勢いのユリィに「いいから食べてよ、話はその後にしよう」と軽く言って、僕も残っていた食べ物を口に仕舞う。

 僕は晴れやかな気分だったけど、ランは憮然とした顔で黙々と食べていた。

 うぅ、恐いな……


「ねぇ、レン? 一応聞くけど、何で助けるの?」


「いや、だってさ……あのまま見捨てたらきっと嫌な気分になっただろうし」


「……それだけ?」


「それに……先生も困っている人が居たら助けてあげなさいって言ってたから」


「…………まぁ、そうね」


 そこでようやく納得をするような息。

 どっちかというと渋々認めるような、そんな感じのアレだったわけだけど。

 ランは仕方なさそうな目で僕を見て、こう言った。


「あんた、そうやって思い悩む性格だものね。相変わらず損な性格してるわよね」


「ランは……ちょっと淡白すぎるよ」


「そう?別に仲良くもない知らない他人だったのよ? なんとも思わなくて当然じゃない」


 どうでもよさげに言って、言葉を切る。

 その目は、泣きながら僕が上げた食べ物を食べているユリィへと向けられていて……それから、ゆるく首を振る。


「まぁ、あんたがやりたいっていうんなら止めないけどね。わたしも協力してあげるわ」


「うん……ありがと」


「…………うっさい」


 そう言って照れ臭そうにそっぽを向くランに、僕はちょっとばかり笑ってしまった。

 なんだかんだと言って手伝ってくれるんだから、やっぱりランも損な性格だよね。


ストックが出来たので投稿していこうと思います。

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